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4:忍び寄る影
「月姫…」
妖魔は少しずつ、瑠奈に近づいて来た。
あの日を思い出す…
夕暮れの中助けてくれた、あの少年を…
―――恐い……
でもあの時とは違う…
私には力がある!!
瑠奈は震える手で、月華を握りしめた。
少しずつ近づく妖魔。
だが、一瞬妖魔の姿が見えなくなった。
「っ!!」
それは一瞬だった。
突然妖魔の姿が見えなくなったと思ったら、急に目の前に妖魔が現れたのだ。
―――ドンッ!!!
勢いよく壁に叩きつけられ瑠奈は、突然襲った背中の痛みに顔を歪めた。
ズルズルと床に倒れ込むが、完全に床に座り込む前に、首を妖魔に絞められ、背中を壁に押し付けられる形になった。
少し地面から浮かぶ足。
妖魔は片手で瑠奈の首を締め上げ、瑠奈はそれに抵抗するために、両手で妖魔の手をおさえていた。
たが瑠奈と妖魔の力の差は歴然。
瑠奈の抵抗は全く意味がなかった。
月華もさっき妖魔に飛ばされたときに、部屋の隅に飛んでしまい、結界をはり、自分の身を守ることもできない。