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吾輩はポメである。  作者: 美緒
1/7

1ぽめ

 吾輩はポメである。名前はテンだ。


 前世はハスキーであった。今世も大きくかっこよく生きてやろうと思っていたのだが、食べても食べても大きくならず、いつまでも小さいままだった。


 なんだ、この長い毛は。


 体の太さ以上の長さの毛が生えている。お風呂に入れられた時の吾輩は、三分の一程度の大きさになってしまう。

 ただでさえ小さいのにもっと小さく見えるではないか。

 納得できぬ。


 吾輩は、前世、前前世とこの家で生涯を終えた。お嬢さんを守り育てた立派な子守り犬だった。


 それなのに。なぜだ。なぜポメなのだ。


 これでは、お嬢さんが泣いているときに安心感を与えることができぬではないか。

 悪辣な小僧を撃退することもできぬ。

 今の吾輩が吠えたとて、可愛いと言われて終わりだ。


 この矮小な体では、お嬢さんの枕になることなどできぬ。お嬢さんは吾輩の腹の毛を触りながらくつろぐのが好きだったのだぞ。


 なんだと?この薄い体でも枕にするだと!?

 さすが横暴。ジャイアニズムにあふれたお嬢さんらしき所業だ。

 さあ、日々の訓練で鍛え上げた吾輩の体を枕としておつかいあれ。


 しかし、こんな体では添い寝をしてもお嬢さんを温めることができぬではないか。前前世の頃から毎夜毎夜お嬢さんに寄り添い一緒に寝たものだ。


 なに?この卑小なる我が身でも一緒に寝たいと?ご期待に添えるかはわからぬが精一杯温めてしんぜよう。

 ぐふ。お嬢さん寝相の悪さはお変わりがないようで。さすが我が主…



 食えども食えども増えない体重。大きくならない体。

 それでも吾輩は諦めない。いつかサモエドになれると信じて。


 吾輩はポメである。名前はテンだ。

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