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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒロイン達の物語

ワイルド系ヒロインの悩みはつきない

作者: 白湯

設定が甘いかもしれませんが、ご了承ください。

「うぬぬぬ……」


ある学園の図書室にて。

淑女としてあるまじき声を上げる私。

つま先立ちをしながら、プルプルと震える手を目当ての本に向かって伸ばす。

…あとちょっと。あとほんの数センチなのに…。

くっそ、はしごかなんか置いておけよ。

低身長にも優しい設計にしろや。

しかし、心の中でいくら毒づいたところで現実は変わらない。

あぁ、もう限界だわ。特に肩と指先が。


そう思ったとき、取ろうとしていた本が横からヒョイと伸びてきた手に収まった。

そのキンキラキンの笑顔を携える人物。

それは頭良し、剣の腕よし、家柄よし、更には顔もイケメンという天が二物も三物も与えまくったアルバート・バーデンだった。


「お嬢さん。君が取ろうとしていた本はこれでいいかな?」


学園の王子様にいきなり話しかけられ、一瞬呆けてしまった私だったが、いつまでも間抜け面ではいけないので、すぐさま淑女の笑みを浮かべる。


「あらまぁ、わざわざありがとうございます。バーデン様」


だから、さっさとどっかいってくれよー、なんて。


「いや、これくらいのことは構わないさ。レディに対して何かあれば助けるくらいはしないとね」


うっわ。こんな歯の浮くような台詞、よく言えんな。

鳥肌立ちそ。


「ふふふ。それは頼もしい限りですね。では私はこれで、失礼いたします」


そう言って早々彼の隣から退出する。

こんなヤツの隣にいては身が持たない。身というか精神?とか理性が。

なんてったって…。


「ほら、あの女よ。バーデン様に近づいて。身分をわきまえてほしいわ。」

「本当よね。あんなあざとい演技なんてして」


離れていく道中で、他の令嬢のこそこそとした声が聞こえてくる。

本当にうるせぇな、ハエどもが。

こそこそ話で陰口を叩くなら、もうちょっと声を潜めろ。全部丸聞こえだわ。

というか、お前ら、目、ついてんの?

私から近づいたんじゃないの丸わかりじゃねぇか。嫉妬ですか?

いやもう、マジでイライラしてくるわ。

殴っていい?殴っちゃっていいかな?正当防衛だよねぇ、精神的攻撃に対する。


何よりさ…。

お前らに低身長の苦しみがわかるか!




さて、自己紹介が遅れたが、私の名前はルーラ・テレトリア。

この国の端っこも端っこの男爵家の娘だ。一応。

一応というのは、今までの粗暴な口調からもわかる通りに私はテレトリア男爵家の実の子ではないからである。

元々、テレトリア家には私と同じ歳の娘がいた。

しかし、その娘が九つになるかならないかのときに、娘は流行り病で死んでしまった。

そこで、娘の死に嘆いていたテレトリア夫妻が当時貧民街にて意地汚、コホン、強かに生きていた私を見て娘を思い出し、私を引き取った、というのが私が男爵家にいる経緯である。

もちろん、貧民街にいた小娘がいきなり貴族なんかになれるはずもなく、十六の今に至るまで男爵家にて淑女教育を受けていた。

およそ七年。マジで長かった…。お義母様、めちゃくちゃ厳しかったし。

普段は色々と優しいお義母様だったけど。

7年間の猛特訓のおかげで、一端の貴族令嬢の出来上がりだ。

まぁ、私としても悪い話ばかりではなかったし。

あの貧民街にいたまんまじゃ、今頃生きているかも怪しいし。

テレトリア夫妻は義理ではあるものの、娘ができて嬉しい、私も食いっぱぐれることなく嬉しい。

これぞ本当のWIN-WINの関係と言えよう。


現実逃避はこれくらいにして、現実を見よう。

十六歳になり、一応とは言え貴族令嬢になったものの、私は社交界デビューもまだだった。

そこでテレトリア夫妻は私にこの国のお貴族様のお子様方が集まる学園へと入れてくれた。

ここまではいい。ここまでは。

だって、そうじゃん?

宿無し子を拾ってくれて、その子に淑女教育をして、将来のために学園まで入れてくれて。

これで文句言ったらいくらなんでも罰が当たるわ。

私だったら間違いなく当てる。

でもねー。こっからが問題。

私は自分で言うのもなんだけど、結構可愛い容姿をしてる。

庇護欲を湧かせるというか、妹ポジション?みたいな。

さらに言えば、私は学園での成績もいい。

ね、モテ女子じゃない?

男の子だって頭が良くて、めちゃくちゃ可愛い女の子がいたら優良物件だって思うよね?

ついでになんでか知らないけど、学園のイケメン君たちに結構な頻度で出くわす。

言うまでもなく偶然です。

うん、ここまで来たら言わなくてもわかると思う。

誰だって、ぱっとでのよくわかんないヤツがいい成績取って、イケメン男子と接点持ってたら、腹立つよね。

要は、私は学園の女の子達から嫌がらせ?までは受けてないけど、よく思われてないのでした。


学園に入って、早半年。

学園生活も軌道に乗ってきた社会見学が開催されることとなった。

社会見学と言っても簡単。

何人かで班を組み、大人達の仕事を見学する。ただそれだけ。

だけどまぁ、それを見て将来の仕事を決める人たちもいるみたいだし、来年からは決めた仕事に向けて、専門的な事を習う。

それに向けての予習みたいなものだ。


しかし、班決めかぁ。適当な所に入っときたいなぁ。

なーんて、思っていた時期もありました。

あはは。もう笑うしかねぇな。

そうです。

な、な、な、なーんと。

あの麗しの学園の王子様達と一緒の班になっちゃいましたぁ。

ぱちぱちぱちー。

………。

…全然嬉しくねぇ。

いや、なんで!なんでこんなにも鉢合わせするんだよ!

神様、ラッキー何とかするにしても、もうちょっと私の気持ちを考えてください。

いや、むしろ嫌がらせか?もうそういうレベルだよな?

もうやだー。(涙)


しかし、決まったものは仕方がない。というかどうしようもない。

私はしがない男爵家の娘。今更変更してください、なんて言えない。

うっ、うっ。

…もうやめだ、やめ。このくだらない愚痴は。

なんかだんだん惨めになってきた。


さてさて、お楽しみの社会見学の日がやって来ました。

私の班は全員で5人。

一人目は今回の班長様であるアルバート・バーデン。

この前図書室で会った二人目は二人目は彼の婚約者であるエリザベス・レイユ。

ちなみに私のことをよく思ってない人筆頭でもある。

そりゃそうだ。

自分の婚約者に近づく(故意じゃないけど)不埒な輩を許しておける方がおかしい。

四人目は宰相様の息子様。

名前はちょっと覚えてないけど、イケメン君。

五人目は今現在の騎士団長の息子様。

こちらも同じく名前が…。

別に呼ぶ機会もなさそうだし、いっか。

そして、しがない男爵家の娘の私。

……。

…場違い過ぎないか、私。

ふざけんなよ、マジで。

誰だよ、この班決めたヤツ。

ちょっと出てこい。

……それにしても、本当に周りから突き刺さる視線が痛い。


私の思いも虚しく、社会見学は滞りなく進んでいた。

滞りなく、というのはちょっと語弊があるかもしれない。

今回の社会見学って、一応班で回ることになってんだけど。

何故だか、他の班の人も私たちの班にくっついてきている。

特に女子の力が強い班。

言うまでもなく、目当てはもちろんキラキラ学園の王子様方。

令嬢様方は王子様に溢れんばかりの笑顔を向けるついでに、私に向かって溢れんばかりの殺意のこもった目を向ける。

……もうよそでやってくれ。



そんなこんなで一通り職場を回り終わった私たち。

やっとのことで最後の職場についたとき―


「動くなっ」


鋭い声とともにナイフが突きつけられる。

そこらの一般人A、Bにばけていたらしい賊どもに捕まってしまった。

護衛の人も反応できなかったのかね。


「キャ――!!」


王子様達を取り囲んでいた令嬢達の悲鳴が上がる。

見受けられる賊は3人。

どっかに隠れていたらわかんないけど。

全員凶器を所持しており、内二人は私とレイユ様を人質に取っている状態。

レイユ様は青白い顔をして息を詰めてるみたい。

まぁ、そうだよな。

誰だって刃物突きつけられて平気でいられるはずがない。

ついでにバーデン様筆頭の男子達も顔色が悪い。

当然か。


「彼女たちを離せっ」


そう叫ぶのは騎士団長の息子君。


「そうだ!何が目的か知らないが、こんな事をしてもなんの解決にもならないぞ!」


これは宰相様の息子君ですね。

こんな安い言葉でどうにかなるとでも思ってんのか?


「近づくなっ。こいつらが見えねぇのか!」


あらら~。

やっぱり、逆効果だったみたい。

下手な刺激を与えるから…。


とはいえ、この状況は私としてもさすがに悪い。

私たちという人質がいる以上、バーデン様を始めとする方々は動けないし、それは護衛の人たちも一緒。

すぐに救助は望めないだろう。


さっと目だけで賊の位置を確認する。

レイユ様を捕らえている賊Aは私を捕らえている賊Bのすぐ横。

賊Cも生徒達とは離れたところにいる。


「ハァ…。」


思わず落ちたため息は、緊張で静かになっていたこの場所に響く。

この場にいる人の意識が一瞬それた瞬間――


ガンッッ


私を捕らえていた賊Bの腕を、ガシッと掴むと有無を言わさずに背負い投げをし、間をあけずに顔を掴んで床に打ち付け意識を刈り取る。


いきなりの出来事に一瞬呆けた賊Aからレイユ様を解放し、そのまま賊Aの腹に膝を入れる。

意識が少し残っていたみたいだけど、とりあえず後回し。

先に賊Cを制服に仕込んでおいた投げナイフで制圧する。


これでも私、小さいときは貧民街にいたんだよ?

暴力の絶えないあの場所に。

そこで生き残るためにはそれなりの腕がいる。

せめて、身を守るだけでも。

テレトリア家に引き取られて、もう必要ないかなって思ったけど、ずっと持っていたせいか、そばにないと落ち着かなかった。

それが、こんな形で役に立つ日が来るとは。 


賊Cさんの意識を奪った後、まだかろうじて意識のある賊Aに近づく。

こんな小娘に負けるなんて、ちゃんと訓練を受けた兵士とかではなさそうだ。

だから、反撃したんだけど。

大方、誰かに雇われたチンピラの上位互換みたいなもんか?

そんなことを考えながら、おもむろに―


ボキッ、バキッ


「ギャァァァーーッッ!!」


護衛の皆さんも含め誰一人動かない(動けない?)中、賊Aの腕やら足やらの骨を丹念に折っておく。

賊Aさんがすごい悲鳴を上げているけど、無視無視。

皆の向ける視線が今までのとはまた違った意味で痛いが、だって仕方ないよね。

下手に手を抜くとこっちに被害が及ぶし。

手加減して怪我するなんて言語道断。

噛みつかれたりすると面倒なので、賊Aの衣服を破り、そのまま賊Aの口につっこむ。

たかだか歯だなんて侮っちゃダメだよ。

結構笑えないから。


さて、諸々の事は終わった。

私は賊Aに顔を近づけると、


「すみません。まだ意識ありますよね」


賊Aが涙目になりながら、すごい勢いで顔を縦に振る。

…なんだろう。

なんだか私が悪者みたいに見えるじゃないか。


「あの、誰が黒幕とかは後でゲロってもらえばいいんで、とりあえず先に教えて欲しいことがあるんですけど」


またしても、賊Aが首をぶんぶん振る。


「もう他に仲間はいませんよね。いたら、さっさと教えてください。

あと、何か仕掛けてるとかありませんか?」


この質問に賊Aは首を横に振った。

しかし、この答えが正しいとは限らない。

我が身可愛さに嘘つく奴らなんてどこにでもいるし。

もうちょっと信憑性が欲しいな。

あと少し、脅しとくか。


「本当ですか?」


先ほど骨を折った箇所をそれなりに力を込めて押しながら、さらには仕込みナイフをちらちら見せながらもう一度聞く。

それに対して、賊Aは声にならない悲鳴を上げながら、必死に首を縦に振った。


…ふむ。

まぁいっか。

この程度の奴らなら私でも何とかなりそうだし。

それに護衛の人もいるし、もう少しすれば、救援も来るだろう。


「ありがとうございました。もういいです」


そう判断してようやく賊Aから離れると、安堵からなのか、賊Aはフッと意識を失った。

うわー。

弱すぎないか?

思わず口が開いてしまう。


「―殺り返される覚悟もなく殺りに来てんじゃねぇよ、根性無しが」


……あ、やべ。

口が勝手に。


そっと周りを見渡すが、後悔先にたたず。

普段はおしとやかに笑っているだけの私が、賊を一人で制圧しただけでなく、こんな荒っぽい口をきいたことに皆さん、ぽかーんとしてらっしゃいます。

なんかカオス。


誰も何もしゃべらないので変な空気がこの場に漂う。

このカオスな雰囲気をどうにかして欲しい。

いたたまれなくなった私は、いつもの笑顔をつけて、その場にへたり込んでいたレイユ様に手をさしのべる。


「あの~、お怪我はありませんか?」


不安がらせないようにそっと聞くが。

そんな私にレイユ様は何故か体をぷるぷる震わしている。

え、ねぇ、私、何かした?

結構丁寧に聞いたつもりだったんだけど。

どっか悪いところあった?

ねぇ、誰か教えてください!


「…お……まと…ば…………さい」


レイユ様が何か言った。


「え?すみません、もう一度お願いできませんか?」


聞こえなかったので、もう一度聞く。

すると、レイユ様はバッと顔を上げて―


「―お姉様と呼ばせてくださいっ!!」


………さらにカオスとなった。




あの事件から約一ヶ月。

事件の黒幕も捕まり、その他諸々も片付いた頃。


かなり衝撃的な出来事だったが、私の生活はさして変わらない。多分。

その「さして」はどれぐらいのものなのかは議論の余地があるが―


廊下を歩いていた私に前から来た令嬢がぶつかり、その令嬢がつんのめって、転びそうになる。

とっさに令嬢を受け止めるが、


「っ、大丈夫ですか、お嬢様」


名前がわからなかったので、思わず「お嬢様」と声をかける。

しかし―


その令嬢は何故だか頬を染めて、


「だ、大丈夫ですっ。お姉様!」


―自分より背の低い私に向かってそう言った。


「……そ、そうですか。ならいいのですが…」


そう。

あの事件以来、令嬢達の陰口はめっきりなくなった。

しかし。

あの事件から、私を「お姉様」と呼び慕う令嬢が一気に増えた。

………。

……何故だ。

低身長に童顔でどちらかというと庇護欲を湧かせる妹顔の私に向かって!

なぜよりにもよって「お姉様」!!


「お姉様!お菓子を焼きましたの!ぜひ食べてくださいませんか?」


遠くから小走りにやってくるレイユ様の声がする。


一難去ってまた一難。

一つ悩みが解決したと思ったら、また悩みが湧いてくる。


私の悩みはまだつきない。



















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