(3)
四日目の初仕事のこと。
別にビスケットを二人で貪っているところを上級生に見られても注意されなかったから、こんなのは日常茶飯事なのだろう。
…言い忘れていたが、私は今年初めて図書委員になった。
結局、誰も本を借りないまま、初仕事は終了。
やりがいがない。まぁいっか。図書室に居れればそれでいい。
…で、今日のこと。
帰りの電車の中、うとうととしながら座席に座っていた私の前で、誰かがつり革を掴んだ。
光が遮られ起きた私が、上を見ると遠崎宙奈がいた。
「えっ、遠崎…宙奈!?」
「そーよ。方面同じだったのに気が付かないなんて、ほんとあんたって馬鹿ね。あたしはずっと気が付いてたのに。」
知らなかった。
勝手な空想か何かでなければ、宙奈が私を待っていたことになるのだ。
…私は、自分の瞳がにわかに潤んだ気がした。
「気づかなかったのは許してあげる。これから一緒に通うって約束で。わかった?」
かくして、私と宙奈は一緒に通うことになったのであった。
私の学校は公立だから、中高一貫でも女子校じゃないよ。
…その証拠に、今日から通学してくる男子がいる。
名前は、継原駆。
別に転入生ではない。
超能力者とかでは絶対にない。
そうであると確信などしない。
では何故こんな微妙なタイミングで今学期初通学かというと、お婆さんが亡くなってしまったかららしい。
そういう奴にどう接したらいいか分かんね〜!!と騒ぐ日高快という名の男子。
馬鹿らし。
そして朝のHRで担任は言った。
全くそんなつもりではなかったのに、爆弾発言となってしまった言葉を。
「継原君、どの委員かやりたいやつある?枠はまだ残ってるし、どれでもいいわよ。」
「うーん……じゃあ、図書委員で。」
可哀想な継原は、宙奈の怪しげな笑みを、一日目にして浴びることになったのであった。
「じゃあ、図書委員の遠崎さんと古滝さんから説明を聞いてね。」
私は、しぶしぶ席を立ち上がった。
昼休み、私と宙奈は、生徒ホールで昼食を食べていた。
その時、宙奈は怪しげにそのよく光る瞳をくりくりさせながら言ったのだ。
「いい、怜香と駆くんを、親密中の親密な仲にしてあげるから。」
いつから下の名前で呼ぶようになった!?
それはさておき、だ。
宙奈のさっきの発言である。
一言で返すなら、
勝手にしてください。
でも、私に被害が及ばないようにね。
…って、絶対に無理だよね、この状態だと。
ほんと、何をやらかしてくれるんだか、心配でたまらない。
恋とかそっち系でくっつける、とかだけは言わないでほしいけど。
うちは図書委員にはなれなかったけど、もし図書委員になれたなら、図書室でビスケット貪りたいなぁ…はぁ…