第八話 特戦
今回も短め!の、予定だったけど次回が長くなりそうだったのでちょっとこっち移行したから長めになった
そんな少女の姿に思わず硬直する俺とは裏腹に、秋野中佐は条件反射でも起こしたように敬礼の体勢に入ったのが、『気配察知』のスキルで分かった。
「…えっ、秋野さん?」
「雪芽特戦大佐、いつこちらに来られたのですか」
「うむ、さきほどこちらに到着したのじゃ。….ところでのぅ、そこの小僧は何者じゃ?ただならぬ気配を感じるぞ」
…特戦大佐?えっ、特戦大佐?特務戦闘部隊大佐?
サラッと聞こえて来たその言葉に、俺は今度は別の意味でフリーズした。
特務戦闘部隊…通称:特戦と呼ばれるその部隊は、老若男女問わず、国を正しく存続させる意志と戦闘能力のみだけを見て選ばれた戦闘のエキスパート達が在籍する少数精鋭の戦闘部隊だ。
当然、その戦闘能力はめちゃくちゃ高く、国の上層部であっても気楽に動かすことはできないほどの能力を秘めていると言われている。
俺はそんなわけで、そんな人物がこんな場所に来たことに対して、思わずフリーズしてしまったのだ。
それほどにこの国が迷宮を警戒しているのだろうと推測は出来るが、やはり多少の戦力をもっているとはいえ結局は一般市民でしかない俺にはその存在はとても重い。
「いえ、そう言われましても彼…御魂 刹那くんは本当に一般の方ですよ。確かに、ここで発生した迷宮に巻き込まれているという経歴はありますが…」
「ふむ、つまりはレベルアップによる影響と見るべきなのじゃな」
「はい、詩咲中将が協力を要請したのも、1層全てのマッピングを済ませたレベルを頼ってのものと思われます」
「それは、なかなかに豪胆な者じゃな。普通は出口を探して逃げ回るのが精一杯じゃろうに」
俺を挟んで会話する二人の話の内容にそれが入った時、俺は思った。
実は勝手に潜ってマッピングしたから、二度目のトライで心に余裕があったなんて言えない。
…ので、俺はここから抜けることにした。
そもそも、会話しているところにほとんど部外者の俺が居ると言う状況そのものが気まずいのだ、なので察して欲しい。
「あの、俺そろそろ行きたいところがあるんですけど、そっちに行ってもいいですか?特戦の方が来たのなら、俺の協力は不要でしょうし」
「いや、そんなことはない。詩咲中将は特戦大佐の参戦を聞いてから君への協力を頼んでいる。作戦開始は今日の14時だから、それまでによく考えておいてくれ」
「うむ、私が入る時点で連携などほぼ無いに等しいのじゃから、その辺りは気にせんでも良いからの」
「あ、はい。それでは」
そう言って、俺はこの場を後にした。
なんか思いの外、国防に携わる方々から評価が高いな。と思いながら。
あっ、一つ言い忘れてた。
俺は二人のもとに戻り、それを言った。
「あの、伝え忘れてたんですけど、2層に上がるとき階段の先でボス戦がありますので気をつけて下さいね。ではこれで」
さてと、ところ変わって迷宮2層の『力の泉』だ。
俺は『力の泉』の効果で疲れが無いのを良いことに、俺は再度探索に乗り出していた。
そんなわけで今は、そこそこスキルが集まって来たので、探索前の準備として『適応変身』の設定をしているところだ。
まず、『光魔法』『杖術』『魔力強化』『魔力察知』『異常耐性』でスキルを組み、『魔法セット』と名付けたものに『魔力操作』を入れ、『異常耐性』を『念動力』にして複製し、『光魔法』をそれぞれの属性の魔法に変換して『○魔法セット』というのを属性分作る。
次は『剣術』『魔法剣』『○魔法』『魔力強化』『魔力察知』『念動力』で『○魔剣セット』を組む。
そして最後に『剣術』『縮地』『気配察知』『身体強化』『攻撃強化』『気力操作』で『近接セット』を組んで置いた。
「…あとは12時にアラームをセットして、よしっ、行くか」
作戦への参加の是非はともかく、とりあえず12時にら一度、テントに戻ることにした俺は2層の探索を開始した。
2層の探索は1層と比べ、大きく難易度が上がっている。というのも、この階層に出る火水風土…それぞれの属性の敵が動物の形をとっており、攻撃手段が増え、全体的に運動能力が上がっているのだ。
それによって大体の攻撃は近距離から放たれるし、そこに爪や牙を使った直接攻撃が混じってくるといった具合で随分と厄介になっているのだ。
1層の敵が特別弱かったのか、それとも2層の敵が特別強いのかは分からないが、2体以上同時に行動していることがないことと罠がないことが数少ない救いだ。
「っと、ここで行き止まりか」
カチッ
「…ん?」
と、そんなことを考えていたのがフラグになったのだろうか。
スマホのメモ画面に描いている地図に行き止まりを記した時、足元から明らかに罠を踏んだような…、つまりはスイッチを押したような音が聞こえて来た。
それと同時に一本道だった後ろの通路が横から迫り出して来た壁によって閉まり、この層で出て来た火の狼と風の鷹を象った石像が目の前の壁から迫り出し、そして目がそれぞれの属性の色に光ったと思えば、急に色付いて命を宿されたように動き出した。
そうすれば当然、俺を視界に映すわけでして…、
俺と迷宮の魔物二体の戦いが始まった。
『光魔剣セット』を使っている俺は、『光魔法』で光球を三つ生成し、それの制御を『念動力』を通して掴んでいる『精霊の杖』に託す。
少し今更感はあるが、魔法の制御代行及び威力強化、それが『精霊の杖』の効果だ。
『念動力』で掴んでいると、どうしても魔法の威力強化は『精霊樹の剣』の方が高くなり、少し魔法の火力が下がってしまうが制御代行能力は問題なく使うことが出来るので、遠距離近距離問わず対応能力が要求されるこの層ではとても重宝している。
そこに火狼が突っ込んで来た。
こいつの身体は強い熱を持っていて、直接触るのも触られるのも危険だ。
だから、『魔力察知』で風鷹に光球の標準を合わせるように狙いつつ、『光魔法』で『魔法剣』を使い、『精霊樹の剣』に光属性を纏わせ、それを使って殴り飛ばす。
そこに急降下して襲い掛かってきた風鷹の攻撃は自前の『光魔法』で火狼を牽制しつつ、『精霊樹の剣』で受け止め、そこに照準を合わせて『精霊の杖』で保持していた光球を放つ。
すぐに離脱しようとした風鷹の足を掴んで止め、それを全て着弾させた。そして、攻撃にぐったりした風鷹をそのまま振り回して火狼に向かって投げつける。
牽制の『光魔法』を避け切り、既に体勢を立て直していた火狼は投げ付けられた風鷹を避けるかと思えば、俺が『光魔法』の光槍を用意しているのを見て、風鷹を咥えて走り、俺と距離を作る。
その様子に俺は光槍を命中させることを諦めて、『精霊の杖』で保持させることにした。
だが、俺が光槍を構えているのは依然変わらず、風鷹を咥える火狼は警戒を崩さない。
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