第五話 いざ二層へ
またまた前回と同じくらい!
なんか思ったよりも安定してるかも?
「…とまあ、一層はこんな感じでしたね」
「そうか、塔の中はそのようになっているのか…」
深く考え込むように腕を組み、目を閉じた詩咲中将の様子に、俺は心の中ではぁーと息をついた。
結構掛かったけど携帯のメモまで使って全部説明し終えた。ミッションコンプリートだ。
「それで、俺はもう戻っても?」
「ああ、戻っても…いや、少し待て。秋野中佐、彼にあのカードを渡せ。責任は私が持つから気にする必要はない」
そうして話すことを全て話した俺が避難所に帰る為の許可を貰おうとすると呼び止められ、はっ、といって答えた秋野中佐が一旦席を離れた。
それからすぐに戻ってきたと思ったら、その手にはクリスタルのような材質のカードが握られていて、俺にそれが渡された。
「…?これは?」
「迷宮の入り口で発見された記録晶板というものだ。所持者の最高迷宮到達階層や攻略した迷宮を確認出来る機能があるんだそうだ。まあ、迷宮内で最低でも一体のモンスター討伐が必要そうだから、我々は誰も扱えないのだがな」
「あぁ、ええっと、じゃあありがたく貰っておきます」
そうして、俺は記録晶板を受け取り、自衛隊のテントを後にした。
テントに戻った俺は早速、記録晶板に触れてみた。
「ああこれ、縦持ちなのか」
【名前】御霊 刹那
【ランク】A+
迷宮一覧
【攻略済み】
なし
【攻略中】
始まりの迷宮:精霊種
現在1層(適性レベル1〜10)攻略中
[テレポート]
触れて起動してみて分かったが、このクリスタルのカードはスマホなんかと同じ縦持ちだ。
だがまあ、それはどうだって良い。それよりも他の機能が重要だ。【ランク】はいまいち分からないが、なんとなく重要な気がする。それに迷宮一覧の【攻略中】の項目、ここが特に重要だ。
そこの始まりの迷宮:精霊種に続いて存在する[テレポート]の文字、これ、かなり重要なんじゃないだろうか?というか重要だろう。
「…ちょっと押してみるか」
『隠密』を使って自衛隊のテントから外に出て、物陰に入ってその[テレポート]の文字を押してみる。
すると、記録晶板から光が溢れ…
気がつけば俺は、あの泉の入り口に立っていた。
「…本当にテレポしたみたいだな」
扉を開けて外に出てみて、俺はそれを確認した。
ここは完全に迷宮の中だ。それも、しっかりとあの泉の場所に来ている。
迷宮を攻略する上で、この機能はかなり重要だろう。記録晶板を見て確認したら、大体四半刻のインターバルが必要らしいが迷宮内でもこの機能は使えるらしいし、強敵に挑む必要がある時は安全地帯へのエスケープ能力として常に確保しておきたいところだ。
それにしても一層の適性レベルは1〜10だったのか。俺、レベルだけなら随分と余裕があるよな。
うーん、ついでだし2層に足を伸ばしてみた方が良いかもしれない。1層はそろそろ自衛隊が俺が提供したデータと合わせて攻略を始めるだろうし、これ以上俺がこの場に止まる意味は薄いだろうしな。
「よしっ、そうと決まれば2層に上がるか」
そう呟いて、俺は2層への階段を登った。
螺旋階段を登り切り、俺は辺りを見渡す。
2層は1層とは違って拓けた場所だった。1層は探索する必要があったのに対して、こちらはそのようなものは必要としていない。
最初の広場からいくつもの広場が続いていて、それを巨大な扉が仕切っている。今は開け放たれているが、恐らく俺がもう少し進めば、勝手閉まるだろう。
そんなことを思いながら進むと案の定予想は的中し、広場の真ん中辺りまで来たところでバンっと音を立てて、全ての扉が閉まった。
それと同時に広場の真ん中を中心に、六色の魔法陣が地面に浮かび上がった。
「最初から囲まれてるってどういうことだよ」
悪態を吐きつつも急いで『隠密』を発動し、闇色の魔法陣が浮かんでいる場所にダッシュで向かう。
なにが出るかは知らないが、集団戦で『闇魔法』のあの黒い霧は使われたくない!
そして、魔法陣の中から1層で見たあの影のようなモンスターが出てきた。
マジで最初に狙っておいて良かったぁっ!
そう思いながら『風魔法』を使い、コアに向かって風の弾丸を連射する。狙いがあんまり定まっておらず、命中率はあまりよろしくないが、一発二発三発と風弾が命中し、コアを砕いた。
そして消えていく闇属性のやつを通り抜けて『適応変身』、攻撃を行って解けた『隠密』を外し、『身体強化』に切り替える。
そのまま円を描くように走り、その後ろをそれぞれの属性の魔法が通り抜けていく。
『気配察知』でそれを確認し、今度は光属性のやつに向かう。五指を使って風弾を飛ばして光のやつの退路を断ち、拳に風を纏わせてコアを殴り砕く。
さらに水属性のやつに牽制として『風魔法』を放ち、そこに迫って来た土属性のやつの魔法を屈んで避け、そこに迫った火と風の魔法は後ろに飛び退いて避けた。
その結果、火と風の魔法はさっきまで俺の位置で衝突し、相殺され…
ドガンッ!
…ずに、風が火勢を一気に強め、火が爆ぜた。
「っ…いてっ」
爆発の熱風が肌を焼き、怯んでいるうちに風の魔法が肌を切った。
ダメージは擦り傷程度、だが俺の中に流れていた楽勝ムードは洗い流され、代わりに命のやり取りをしているという自覚が訪れた。
…やばい、ちょっと調子乗ってた。
もっと慎重に、倒す速度じゃなくて、ノーダメージで倒すことを意識して戦わなければ。
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