第四話 再度迷宮へ
大体前回と同じくらい!
翌日、俺は塔の中に戻ってきていた。
「さてと、ちょっとスキル変えて探索するか」
そして、スキルを『風魔法』『魔力強化』『気配察知』『隠密』にセットし直して早速探索を開始する。
本当は昨日のうちに探索を開始するつもりだったんだが、俺は避難所に着くなり精神的な疲れからか眠ってしまって、気がついた時には日が暮れていたのだ。
精神の疲れは昨日のスキルセットで、今はセットしても意味がない『剣術』や『魔法剣』をセットしていたことからも伺えるし、昨日はしっかりと休んで正解だった。
最初は正常な判断能力が戻ってなくて、やってしまったと思ったが、まあ、結果オーライだ。
それに元の服が服だったから、服も着替えさせてもらえたし靴も手に入れれたからな。
(というか、今から思うと俺は裸足でここに戻ろうとしてたんだよな。控えめに言ってもバカだったな)
やはり、じっくり休めて良かった。
俺は改めてそう思うのだった。
ちなみに今の俺の服装は、黒の半袖シャツ、紺色のジーパン、黒のベルト、黒のブーツと地味目なものだ。出来るだけ目立たず、動きやすいものを選んだので、探索に影響は少ないだろう。
それからしばらく、『隠密』と『気配察知』を使って探索していると昨日の部屋に到着した。
携帯のメモアプリの手書き機能を使い、地図を書きながら歩いていると発見したんだ。中の宝箱は開けられているし、泉に浸かっても回復以外に何も起こらなかったので、多分合っている筈だ。
さらに言えば、上層に続いていそうな螺旋階段も見つけた。目的が迷い込んだ人の捜索なので無視したが、この部屋に入る為の扉の近くにあったので、ここは次の階層へ行く前の休憩室のような場所なのだろう。
「まっ、ここにはあんまり用はないか」
探索途中で書いているからかなり雑だった手書きの地図を見やすくなるように整えて、再度探索を開始する。
出てくる敵は後ろから『隠密』で忍びよって『風魔法』を数回当ててやれば倒せるので、ほとんど気にならないから探索自体は結構楽だ。この調子でガンガン攻略を進めて行こう。
「んー?あれ、これここで探索終わりじゃないか?」
それからさらにしばらく探索を進めていくと、地図の中で通路と通路が繋がった。
拡大していたマップを元の倍率に戻してみれば、全ての通路が繋がり、一層の探索が終了したことを告げていた。
時刻を見れば、大体探索に入って半日くらいだ。
なんだか、昨日の俺がどれだけ無駄に行動していたか示されているようで複雑な気分になったが、どうやら半日で探索は終了したらしい。
ということは、自衛隊に迷宮への突入命令が決行されれば、この辺りはすぐに捜索の手が行き届くだろうし、一層を俺が捜索する意味は薄そうだ。
「二層に行く…、うーん、まあ一旦帰ってから考えるか」
そうなれば俺は二層に行ったほうがいいか?と思ったが、現在の時刻を思い出して思い留まる。
現在は入った時刻から12時間近く経ち、時計は夕方5時を指している。そろそろ帰るべき頃合いだろう。
というわけであの部屋に行き、外で張っているだろう自衛隊の皆様に見つからないように『隠密』を使って外に出た。
夕方、配給された夕食を食べ、特にすることもなく避難所となっている自衛隊の天幕の中でまったりと休んでいると、自衛隊の人に呼び出しを受けた。
呼び出しに来たのは、もともとこの避難所に俺を案内してくれたあの自衛隊員さんだ。聞いたところによると秋野 義久という名前で、使いパシリのようなことをしているが、陸軍中佐なんだそうだ。
確か、軍の階級は上から順に大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、そこからさらに大尉、中尉なんかで十数階級続いたはずだから、この人めっちゃ偉い人だ。本当になんで使いパシリなんてしてるんだろう?
そんなことを考えると、秋野中佐はその天幕の前で足を止めて俺の方に振り返って言った。
「ここだ、貴方を呼んだ人物はこの先にいる」
どうやら考え事をしているうちに目的まで到着したらしい。目で続くよう促し、先に天幕の入り口を潜って中に入っていった秋野中佐に続いて俺も天幕の中に入った。
天幕の中では自衛隊員の中でも階級が高そうな人達が集まり、会議していた。秋野中佐に続いて中に入ると、その人たちの注目が一斉に俺に向く。
…めっちゃビビった。そんなに一斉に見ないで欲しいんだけど、まあ無理な相談だよな。
そんな思いで驚きに引き攣りそうな表情筋を抑えて堪えていると、会議中の面々の中でも特に階級が高そうな長身の女性が口を開いた。
「秋野中佐、その彼が唯一の帰還者の少年か?」
「はっ、そうであります、詩咲中将。避難所のテントよりお連れしました」
「ご苦労、秋野中佐」
秋野中佐の恐縮であります、という言葉がどこか遠く聞こえる。
中将?政治の場にも参加権を持つ超エリートじゃないか、マジでなんでこんなところに居るんだよ。
もはや驚きを通り越して呆然としてしまった。そして、気がつけばその詩咲中将の視線が俺の方を向いていた。思わず怯みそうになる鋭い視線に自然と背筋が伸びる。
「君が御魂 刹那君だね。私は詩咲 凛音陸軍中将だ、よろしく頼む。早速で悪いんだが、迷宮内のことを話して貰えるか?明日、迷宮への突入作戦が二日後に決まったんだが、内部の情報が圧倒的に不足してるんだ」
「は、はい、俺の話で良ければ幾らでも」
「ありがとう。皆、貴重な迷宮内の情報だ。心して聴くように」
うわっ、そんな凄まじいプレッシャーを掛けるような言葉を…。ええいっままよ、こうなったらヤケだ。知ってる情報は全部話してやる。
そうして、俺は知り得る全ての情報を吐き出した。
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語彙力が尽きたので、後書き短め!