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第十一話 一時帰還

そのあと俺は、とりあえず『スキルチケット』を使うことにした。と言うか使った。

まあうん、さっき思ったことに関しては今更と言えば今更なので深く考えるのはやめにしたのだ。基本的にちょっと微妙な気持ちになるだけで問題はないからな。


それで『スキルチケット』の結果は『悪意感知』『精神耐性』『魔力刻印』の三つ、前二つはともかく、『魔力刻印』は要検証が必要なスキルだろうな。


「そういえば、検証といえば魔法の反応を検証しようとか思ってたな…」


数日前のことなのにすっかり忘れていたな。

うーん、ここの攻略が終わったら、少し休んで…いや、塔の方の迷宮の攻略の休憩中にでもするか。休むなら『力の泉』だろうし、そっちの方が丁度いい。


そんなことを考えながら、俺は『収納』にドロップアイテムをしまい、いつの間にか合流していた日華さんたちのもとに向かった。




日華さんたちの元に着くと、そこでは二人の少女が宙に浮かんだ三枚のスキルカードを前に頭を悩ませていた。

…ああ、そういえば、普通は『スキルチケット』使っても三つのうちの一つしか手に入らないんだったな。


そんなことを思いながら、俺は二人に声をかけた。


「ただいま戻りました」


「あ、丁度良いところに戻ってきたわね。…んー、どうせだし、スキル選ぶの手伝ってくれないかしら?」


「いいですよ」


俺の意見がどれだけ役に立つから知らないけど、まあ、選べるスキルの中に俺の持ってるスキルがあるなら使い勝手くらいは教えられるから、どうにかなるか。

そんな思いで俺は日華さんの言葉に頷いた。


…まあ、ちょっと人の手札の一つになり得るものを選ぶのは抵抗があるけどな。


「『火魔法』『再生』『火耐性』の三つが出たのだけれど、どれにしようか迷っていたのよね。…正直、どれもこれも私のユニークスキル…『火焔姫(フェニクスプリンセス)』が持ってる能力だから必要ないのよ」


「んー、なら『再生』とかどうですか?あれ、多分ですけどダメージを癒すスキルじゃなくて、身体を正常に戻すスキルですから、あると便利ですよ」


事実、さっきは『再生』のおかげですぐに復帰できたからな。

もし、日華さんが持っているユニークスキルの効果がダメージの回復なら、状態異常の回復効果を持っている感じの『再生』は持っておいて損はないだろう。


それに多分だけど、ユニークスキルを使った時の濃い疲労も多少は改善されるんじゃないだろうか。

いやまあ、これに関しては確証が全くないからなんとも言えないけどな。


「うーん、そうね。…『火魔法』と『火耐性』の方も何か思いつくメリットはないかしら?思いついているならで良いけど、考察の材料に加えておきたいわ」


「あー、そうですね…」


そうだな、スキルチケットを使って『火魔法』と『火耐性』を取得するメリット…、


「パッと思いつくものだと『火魔法』は明らかに消耗が大きいユニークスキルを使わずに火を使えるようになりますから、ユニークスキルを使う中に混ぜれば継戦能力や攻撃のパターンが増えますね。『火耐性』は保険になるんじゃないでしょうか?やっぱり、ユニークスキルであっても、耐性を貫かれないようにするのは大切だと思います」


「うん、確かにそうね、参考になったわ」


それなら良かった。まだまだ戦闘経験なんてほとんどない俺の言葉だけど、参考になったのならそれで十分だ。

ああ、でもそうだな。『火魔法』に関しては言っておかないとな。


「ただ、『火魔法』に関しては塔の迷宮に潜れば、割と簡単に手に入りますのでそっちをお薦めします」


「そうなのね、あそこはまだ情報が出回ってないから生の情報は助かるわ」


そういうと日華さんはスキル決めの為、思考の海に潜り始めた。その様子を確認してから、俺はもう一人の少女に意識を向ける。


そうすれば、その少女は丁度顔を上げたところで…、


「ついでに私のも見てくれませんか?」


そう、言ってきた。






「と、その前に自己紹介しましょうか。私は本宮(モトミヤ) 流沙(ルサ)、ただちょっと本が好きなだけの中学生です。適当に流沙ちゃんとでも呼んでください」


「あ、確かにそうだね。俺は御魂 刹那、えーっと、家とか友達が迷宮に呑まれてしまったから、とりあえず今は迷宮攻略に精を出してる」


そういうと流沙ちゃんはなんだか微妙な表情を浮かべた。

…って、あー、そう言えばそうか。こうやって字面だけ並べると俺の境遇って結構重いのか。


俺としては心配していた人たちが最初に見つかったから、それほど心労はないんだけど…まあ、実際に何があっても生き残りそうな奴なんてそうそういないもんな。

なんか知らんけど、俺の周りには両親を筆頭に溢れてるけど。


「あ、ごめん。俺の境遇、字面だけ見ると重めだよね。でも安心して、あと残ってるやつはなんやかんや生きていそうなやつばっかだから」


「あ、いえ、確かにそこもなんですけど、そこじゃなくてですね…」


そこじゃない…?…あ、そういえばちゃん付け呼び!


「あ、その、なんかごめん。言い訳だけど、あと二名ほどに同じ自己紹介されてるから思わずスルーしちゃった」


「二番煎じどころか三番煎じ…orz」


なんだろうか、すげー落ち込んでるようだけど、この子から物凄く幼馴染のあいつと同じ匂いがする。というか、orzオー・アール・ゼットって口に出して言うものじゃない。

いやまあ、だからって実際にこの姿勢をやられるとそれはそれで困るけどさ。


ちなみに俺にこの自己紹介をしてきたのは件の幼馴染に結菜ちゃんだ。

前者はネタで、後者はそのネタで言った幼馴染に唆されたのもあるだろうけど、半分以上素でだな。


「まあ良いです。それよりもさっきは受け止めてくれてありがとうございます」


「ああうん、どういたしまして。その様子だとあの時、意識あったんだ」


急に冷静に戻った流沙ちゃんに、こういうテンションの落差が激しいところも似てるなぁ…なんて思いながら、そんなことを聞く。

あの時、完全に意識が落ちてると思ったんだけどな。


「はい、意識はかなり希薄でしたけど、『図書記録レコード』が記録してました」


「『図書記録レコード』?」


「意識がある限り、知覚出来る限りの周囲で起こったことを記録し続けるユニークスキルです。どんどん記録を蓄積していくと解析なんかも出来る様になるそうですよ」


それは便利なスキルだ。

汎用スキルとして『鑑定』は存在するけど、あれは自分のステータスを見るくらいしか出来ないから、アイテムやスキルの詳細を知れる可能性というのはとても大きいな。


って、なんかサラッと聞いちゃったけど、これって俺が知って良い内容なのか?


「ちなみにこのユニークスキルは成仏した本物の静寂の司書さんの贈り物です。一応言っておきますが、さっきまで貴方が戦っていた静寂の司書の力だけを持った精霊とは違いますからね」


「なるほど」


ということは、最初に流沙ちゃんの体から抜けていったあの白い霞みたいなのが本物の静寂の司書だったわけか。

…で、あとに残ったガワが静寂の司書がいないのを良いことに喋っていた俺たちに対して溜まったヘイトを継承して、恐らくある種静寂の使者を倒したような状態の流沙ちゃんが図書室を出た時点で現れたわけだ。


うーん、なんだこの自業自得感、そしてこの不注意が過ぎた感。

そうだな、なんかもう色々とひどいわ。

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