第六話 司書との対決
前に書いていたストックが残っていた為、投稿します。
ストック消化後、追加で投稿するかは分かりません。
赤い月光によって仄暗く照らされる旧図書室の中で鈍い光を煌めかせ漆黒の大鎌が振るわれる。俺はそれを咄嗟に距離を詰めて受けた。
受けた『武者の黒刀』と大鎌がかち合い、ぎゃりぎゃりと不快な金属音を立てて『黒猫パーカー』に強化された耳を刺激するが、それでも大鎌なんて大きな武器を自由に振り回されるよりは遥かにマシだ。
そこから大鎌を巻き込むように『武者の黒刀』を捻りながら振り上げて大鎌を大きく上に弾き、さらに距離を詰めてクロスレンジに持ち込む。
そして『武者の黒刀』を『収納』、代わりに『精霊騎士の籠手』を呼び出して装備すると同時に『適応変身』、さっきの全力攻撃に使ったスキル群で登録しておいた『攻撃セット』のうち、『剣術』と『攻撃強化』を『魔法纏』と『光魔法』に変えて呼び出して…、
「うっ、りゃぁあ!」
全部纏めて全力のボディーブローを叩き込んだ。
恐らく静寂の司書であろう少女はそれの衝撃に耐えきれず、向かいの本棚にまで吹き飛んでいく。
本棚にぶつかった衝撃で隙間なく並べられていた本が次々と落下し、静寂の司書の上に積み重なっていくが、この程度で終わるなんて到底思えない。
そう思っていると不思議と浮き上がった本が逆再生されているように本棚に戻っていき、その下からは予想通りほとんどダメージを負った様子のない少女の姿が現れた。
「やっぱり、あんまり効いてないか」
本の雪崩の下から現れた予想通りの姿に、俺は攻撃に際して適当に装備しただけだった『精霊騎士の籠手』をしっかりと装備し直し、『適応変身』を使って『気力操作』『気術纏』を『危険察知』『魔力操作』に変え、臨戦態勢を整える。
そしてその直後、その場にいたはずの少女の姿が消え、『危険察知』が大きく反応した。
『危険察知』が示すのは俺の直上、すぐに『瞬動』を使いその場を離れれば、ガンっという衝撃音とともにそこに大鎌が突き刺さる。
だが、そこに少女の姿はなく…直後、『危険察知』が真後ろに反応を示した。もう一度『瞬動』を使ってその場から離れつつ後ろを振り返れば、そこには両手に闇色の刃を握った少女の姿があった。
「…っ!マズッ」
その刃がなんなのか察して咄嗟に『光魔法』で盾を張り、『魔法纏』を全身に纏う。
俺がそうやって防御を固めているうちにも闇色の双刃はその姿を一本の槍へと姿を変えていき、俺に向かって射出された。
なんとか『瞬動』が続いているうちに避けようと身を捻るが、『闇魔法』の槍はそんな悪足掻きをものともせずにホーミングして動き、俺の体を狙って光の盾と激突する。
とはいえ、それは咄嗟に張っただけの光盾だ。それだけでどうにかなるわけもなく、あっさりと光の盾は砕かれてしまった。
だが、どうやら直前に半ば強引に体を捻ったのが吉と出たらしい。
俺を狙ってホーミングした槍と使い捨てで用意して動かさなかった盾、その違いによって生まれた角度の違いに闇の槍は僅かに逸らされ、二の腕の『魔法纏』の表面を喰っただけで後方に逸れていった。
「よしっ、チャンス到来!」
そこに好機を見た俺は『魔法纏』の割合を足に傾けながら『適応変身』、出来る限り早く『瞬動』『身体強化』を『縮地』『敏捷強化』に切り替え、即座に『縮地』を使用、さっきよりもかなり早い速度で距離を詰める。
だが、そこでなんとなく嫌な予感がした。
距離を詰めるのに使っていた『縮地』を止め、『光魔法』で牽制の光弾を放ちながら嫌な予感に当たりそうなものに検索を掛けていく。
果たしてそれは…、今よりも警戒を強める為に『縮地』『敏捷強化』を『気配察知』『魔力察知』に『適応変身』したことでヒットした。
「危ないかった…あのまま行ってたら見事に挟み撃ちになってた」
俺の後ろに回り込み、旋回してこちら側に戻ってきている闇の槍を『魔力察知』で捉えた俺からはそんな呟きが漏れていた。
今考えれば当然だが、魔法の形を変えられるなら魔法を操作することもできて当然だろう。
そうなるとさっき逸らされていったのはブラフ、俺を誘き寄せ、確実に大ダメージを与える為の布石だったわけだ。
本当、なかなかエゲツないことをしてくれる。
「でもまあ、分かってしまえばこっちのものだ」
即座に『魔力操作』を使って『魔法纏』の割合を変更、全身に割り振っていた魔力を全て両手に集中させ、それから一気に距離を詰めるべく、全力で地面を蹴った。
もとより『縮地』ですぐそこまで詰めていた距離、もはやスキルを使わずともその距離はグングン埋められていく。
そして、その距離がもう後戻りできないところまで埋められ、俺は拳を握って飛び掛かった。
そうすれば当然静寂の司書は迎撃の構えを見せ、俺に察知されないように慎重に動いていた闇の槍は一切隠れることをやめ、速度を上げて一気に距離を詰め始める。
だから俺は…、
「よっと」
今まで目立った形で使わなかった『念動力』を使い、足場を発生させて背後から迫った闇の槍を直前で回避、そして、俺の体のすぐ側を通り抜けていった闇の槍を『魔法纏』を纏わせた両手で後ろから掴んだ。
どうせこのまま通り過ぎらせても、また隠れて奇襲を掛けてくるだけだ。それも、今度は『念動力』の足場も念頭に入れて来るだろう。そんな面倒なことになるのは、いくらなんでもゴメンだ。
さて、この槍はこのまま破壊するのも容易なわけだが、それはもったいない。
「せっかくだしな。この魔法、使わせてもらうな」
というわけで、俺はこの魔法を派手に使ってやることに決めた。




