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第四話 後回し

日華さんの知っていた噂は俺の知っていたものよりももっと古い、爺さん婆さんの世代の噂だった。

それは全身から血をダラダラと流していながら生きている不思議な霊獣の話で、なんと取り憑かれると目から血の涙が溢れて誰彼構わず襲い掛かってしまうようになるんだそうだ。

で、それが学校が出来た当初から人体模型に取り憑いて夜になると活発に動き出すんだそうだ。


まあ、確かにさっきの人体模型の動きはかなり獣臭かったし、そっちの噂だと思っても不思議なことじゃない。


「…それにしても霊獣かぁ」


獣の幽霊を霊獣と呼ぶなら、この怪談話はありきたりなものになるがどうしてもそこが気になる。


そもそも獣の幽霊ならなぜそう呼ばない?それになぜダラダラと血を流しているのに不気味ではなく不思議なんだ?

主な疑問はこの二つ、そういうとものと割り切ればなんでもないことだけれども、なぜかこれが引っ掛かって首を捻ってしまう。


と、そうやって首を捻っている時だった。


「んー、ねぇ、ここ後回しにしない?」


「…えっ?いいんですか?」


日華さんから飛んで来た予想外の一言にさっきまで首を捻って考えていた疑問は頭から吹っ飛び、思わず疑問符で返事を返してしまった。


「そりゃあ、私だってこのままは嫌よ?」


手をぶらぶらさせながらそう言う日華さんに、なら…と言葉を発そうとして俺は日華さんに片手を前に突き出して止められた。

それから日華さんは人体模型に目を向け、でも…と言葉を続ける。


「多分、このままじゃアレは倒せないのよね。その証拠にあれだけの勢いで打ち込んでたのに損傷は身体だけで臓腑にはなんのダメージも入ってない」


「確かに、臓腑…というか心臓には刃を弾かれましたね」


それもかなり強烈に弾かれている。

それこそ攻撃そのものを無効化されたように感じる程度にはな。


「そうそう、それによく見るとなんだけど身体もゆっくりとだけど再生してるように見えるのよ。それで、これって実質的に討伐不可能なんじゃないかって思うわけ」


そう言われて人体模型をじっくりと観察してみれば、確かにゆっくりとではあるが人体模型の体は再生を始めていた。


「あー、確かにそうですね。それでこの学校にそのヒントがあるんじゃないかと言うわけですか?」


俺は可能性がありそうな話を言葉にした。

なんせ、ここの敵は何世代もの噂が入り混じっているせいかこのままじゃ討伐不可能、だったら校内になんらかのヒントがあるって期待するしかない。


そして、この考えは日華さんも同様だったようで首を縦に振って頷いた。


「そう言うこと、と言っても何にもない可能性の方が高いと思うけどね」


その言葉には俺も溜め息を吐くしかなかった。


この学校では何世代も掛けて噂が積み重ねられているせいか、七不思議とは名ばかりで様々な怪奇現象が存在しているという認識が強いんだ。

それはつまり、それぞれの噂の繋がりが非常に薄いというわけで…、恐らくはそう、何か別の要素でもない限り、ヒントなんてものはそうそう出てこないだろうな。






それから少し経ち、俺たちは移動していた。


「日華さん、まずはどこに向かいますか?」


移動の途中、俺は少し後方を歩いている日華さんに次はどこに向かうか聞いた。

俺としては二階の視聴覚室の怪異が丁度良さそうに思えるが、どうするんだろうか?


「うーん、一応、本命は二階の視聴覚室なんだけど、先に他を回っておこうって感じよ。ほら、急がば回れってよく言うじゃない?」


「あ…、そういう考え方もあったか」


思わずそんな言葉が口から漏れていた。

戦で例えるなら、俺はなんの躊躇いもなく正面突破で本丸を攻め入ろうとしていて、日華さんは周辺から確実に追い詰めようとしていたわけだ。


あれだな、完全にここにお互いの考え方の違いが表れている。


「…今ので察した。貴方、結構直情的なところがあるんだね」


「…はい、そうみたいです」


そう言う俺の頭の中に思い起こされるのはここ数日の記憶、一層のボスで慎重に行こうって思っているのに結局ゴリ押し染みた戦いになったり、隠し部屋で後先考えずに全力の魔法を放ったり結界を強引に押し切ったり…とまあ、俺が直情的だと言われるのに思い当たることは結構あるわけだ。


「でも、安心してください。一応、判断力を失っているわけじゃありませんので」


「つまり、理性的に直情的になっているってこと?…ちょっと意味不明だけど」


「えっと、一応そうだと思います」


本人もいまいち意味が分かっていないことに俺は半分疑問符を残しながらも頷いた。

多分だけど、日華さんは理性的に判断した結果が直情的だと言いたいんだろう。一応、それなら当たっているんじゃないかと思う。

…まあ、たまに本当に後先考えずに行動してしまうこともあるからな。


「一応…、なのね。分かったわ、そういう風に記憶するわ」


「はい」


その言葉にはしっかりと頷いた。

たびたび無茶な行動をしてしまう俺からすればそう認識してくれるのが一番助かる。大体、俺がそういう行動をするときは可否の判断より先に行動しているからな。


と、そこで気が付いた。


「…あ、というか話変わちゃってますね。そろそろどこに行くか決めましょう」


思わず脱線してしまったが、ついさっきまで話していた内容は次の目的地なんだ。

生徒の救出という任務もある以上、どう攻略するかはかなり重要なことだ。


「そうね…なら、視聴覚室から遠い場所から攻めるのがいいんじゃない?私たちが目指す場所の安全確保にはそれが一番良い思うわ」


「そうなると次は…」


「校舎三階の旧図書室、噂は静寂の司書よ」


そうして、次の目的地が決まった。


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