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第三話 理科室の人体模型

やばい、もうすぐストックが尽きるのに続きがかけてない

―科学室に入ってすぐに人体模型が居たら気を付けろ。そいつは血涙を流して襲い来る。

なぜならそいつは自分にはない、ホンモノの肉体を求めているから。


動き出したその人体模型を見ながら、俺は親から聞いたこの学校の七不思議の一つを思い出していた。

いやまあ、思い出したからと何かあると言う話ではないのだが、こうして実物を目にして特に理由もなく思い出してしまったのだ。

だけど同時に感慨深くもある。なんせこれを聞いたのが中学入学前だったおかげで、俺は中学校をいろんな意味でドキドキして過ごすことになったからな。


「…っと、そろそろ集中しないとな」


思い出に向けていた意識を現実に戻して、意識を目の前のことに集中させる。

その頃には人体模型はカクカクと体を動かして、なぜか妙に生々しい感じがする臓器が入った腹を上に向け、両手両足を地に着いた四足歩行の体勢でスタンバイしていた。


…ああ、うん。光景が普通にホラーでビビった。


「…なんていうか、ホラーな体験って案外大したことないもんだね」


だが、どうやら日華さんはこの人体模型の様子を見ても特に問題ないらしい。

意識を集中させると同時に視界に飛び込んできた光景に、一瞬足を竦ませた俺とは違いそんなことを呟いていた。

気になって隣に立っている日華さんにチラッと視線を向けてみれば、そこでは物凄く据わった目をした日華さんが両手から真っ赤な炎を燻らせていた。


なんていうか、戦闘準備万端というより、一瞬回って悟ったという感じだ。

というか、この人全然冷静じゃないな。よりにもよって科学室で炎を派手に使おうとしているのがその証拠だ。


「あのー、日華さん?ここがいろんな薬品がある科学室だってこと忘れてませんか?きっと可燃性のものもありますよ?炎使うのは流石に危険じゃないですか?」


「ふーん、意外と周りが見えているんだね」


内心かなり焦っていた俺の前で日華さんはそういうとあっさり手の内の炎を消した。

へっ?と首を傾げる俺の前で、日華さんはどこからともなく刃渡り三十センチほどのナイフを取り出して構えた。


「さっ、敵が来るわよ。こんなシャレは置いておいて、貴方も構えて」


日華さんがそういうと同時に怪異な人体模型が獣のように低姿勢で襲い掛かってくる。

…これ、シャレだったのか。

俺はなんとなく腑に落ちないものを感じながら、『武者の黒刀』を構えた。




「最初の攻撃は私が抑えるから、そこに貴方が全力で攻撃してね」


「了解です」


伝わって来た指示に特に考えることなく即答し、『武者の黒刀』を最上段に掲げる。

そこで『適応変身(シェイプシフト)』、校内探索用に設定していた『剣術』『体術』『念動力』『気配察知』『魔力察知』『危険察知』『視力強化』『攻撃予測』のレベルアップで一枠増えて八枠になったスキルを『剣術』『体術』『念動力』はそのままに、それ以外のスキルを『身体強化』『攻撃強化』『気力操作』『瞬動』『気術纏』と一気に切り替える。


その頃には強く一歩を踏み込んだ日華さんは人体模型の怪異と接近していて…、


「ハアッ!」


一拍、裂帛の気合いが聞こえたと思うと日華さんは目にも止まらぬ速さで人体模型の両腕を掴み、自身の身体を潜り込ませて足を払い、背負い投げの要領で素早く地面に叩き付けていた。


唐突に見せつけられた訳がわからない動きに一瞬思考が止まりかけるが、それはそれとして事前に決めていた通りに体は動く。

地面に叩き付けれた人体模型を『念動力』で地に押さえ付け、自身の身体を『瞬動』で加速、『武者の黒刀』に『気術纏』で『剣術』の気を纏わせ『気力操作』でそれを刃に集中、同時に全身を巡る気を腕に集めて腕の力を強化、


「フッ!」


そして、大地に向かって垂直に掛かる『念動力』の力場の力を『武者の黒刀』にも加え、人体模型に真っ直ぐ振り下ろした。


鋭く振り下ろされた『武者の黒刀』の刃は、思いの外あっさりと人体模型の体を斬り裂く。

斬った人体模型の体が硬質な材質で、なんというかなり斬りやすかった。それはもう、物理的にも心理的にも、どちらの面から見てもだ。


だが…、


「…硬っ!」


『武者の黒刀』の刃が模造の心臓に達した時、一瞬赤く鼓動した心臓が自身に食い込もうとした黒き刃を強く拒み弾き返した。

咄嗟にバックステップを踏んでその場から離脱すれば、日華さんも後ろに下がって来ていた。


だけどどうやら、後ろに下がった理由は俺とは違うようだ。

ピキッ…パキッ…と、何か硬いものがひび割れるような音が連続する。

その音の出所は俺の隣、日華さんからだ。


「日華さん、その腕…」


「気を付けて、あいつに触られるとこうなるよ」


そういうと日華さんは痛みを堪えるように顔を歪めた。

そんな日華さんの腕は、見た目こそもともとと大差ないように見えるが、生気を感じずマネキンの腕のように硬質な質感に変化していて、明らかに人体のものではない作り物のような腕になっていた。


その現象に半ば確信を持って倒れ伏して動かない人体模型に視線を向ければ、その腕は日華さんとは反対にどこか生気を感じるものへと変わっていた。


「…なんだ、本物の体を求めてるだけじゃないのか」


思わず、そんな呟きが漏れる。

俺の知ってる噂はあくまでも親の世代のもの、実際の噂はそれからも変化を続け、より凶悪な方向へ変わっていたらしい。


「はぁ、あんな特徴的な行動するからやっぱり私が知ってる方の噂だと思ったんだけど、ただの油断だったかぁ」


「…ん?」


だが、そこで聞こえて来た日華さんの呟きにその思考は一時的に止まった。

首を傾げて日華さんに視線を向ける。


日華さんが知っている噂は学校を練り歩く人体模型だと思ったんだけどけど、これはもしかしたら情報の行き違えが起きているのかも知れない。

なんせ、今目の前でピクリとも動かないが不気味さを隠せていない人体模型がとった特徴的な行動は二つ、俺の噂にある血涙、そして、あのホラー感を醸し出す獣のような四足歩行の動きだ。


だがそれらは、どちらも校内を練り歩く人体模型の噂とは当て嵌まらない。


「日華さん、ちょっと情報交換しませんか?」


だから俺は明らかに倒れていないのにも関わらず、どうしてか動かない人体模型を警戒しながらも、恐らく俺の知らない第三の噂を知っているだろう日華さんに情報交換を持ち掛けた。


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