第二話 『女体化』について
「ふーん、ということは、もしかしてそれってユニークスキル?」
「……えっ、なんで分かったんですか?」
結構本気で驚いた。なんてたって俺の『女体化』が持っているのは、せいぜい性別を女に変える力くらいだ。
そんなスキル、普通はユニークスキルだなんて思わないだろう。
「実はね、ここに来る前に私の友達が『性転換』っていう性別を変えるスキルを手に入れたのよ。でもそれは、あくまでも体の性別を変えるだけで貴方みたいに精神や所作に影響はなかったから、思いついたのよ。ずばり、貴方のスキルは普通の『性転換』じゃ、ないんじゃないかってね?」
ああ、と納得の声を漏らす。
確かに比較対象があるなら、この『女体化』スキルが
ユニークスキルなんじゃないかって予想が立つだろう。
あとは本当は俺は女だったという可能性とか、どちらの所作でも振る舞える演技上手な可能性を排除する為に精神の変化のこととか、実際にユニークスキルかどうか聞けば良いだけだ。
でもまあ、それよりも俺は自分の所作までもが女性に変化していたことが驚きだ。
そこら辺は全然気付かなかったからな。
「でも正直、だからどうしたって感じですね。使い道はいくつか思いつきますけど、どれにも大した魅力は感じませんから」
「意外ね、貴方くらいの年頃なら合法的に女湯に入るとか、女子更衣室に入り込むとか、そう言うくだらないことに魅力を感じると思ったんだけど」
「ないですね。それにそれなら、鏡に映った自分を見れば良いですから」
胸を張って言えば俺の全身に日華さんの視線が向けられ、確かに…と一言で納得されてしまった。
そんな様子に、冗談のつもりだった俺は少し気まずく感じながらも口を開く。
「…あの、冗談ですからね?」
「あれ、冗談だったの?貴方のスタイルなら本当にそうでもおかしいとは思わないよ?」
そう言われて俺は自分の体を見下ろす。
服の上からでは分かりづらいが大きいと言えるサイズではないけど決して小さくはない大きさの胸、細く括れた腰に縦割れしたお腹、引き締まった小振りな臀部、すらりと伸びた細い手足。
我が事ながらしっかりと鍛えられた綺麗な体をしていると思うが…、
「何事にも上には上がいるんですよ。それを知っていたら、そうそう調子になんて乗れません」
最近で言うと詩咲中将、昔からだと姉と幼馴染。 雪芽特戦大佐に関しては最早別枠なレベルで整ったスタイルをしている。それぞれ女性的なものや鍛えられた身体の機能美、それらが絶妙に合わさり凄まじくバランスのとれた芸術なんてタイプの違いはあれど、どれもが俺の並べるものじゃない。
「貴方、周りの女性のレベルが相当高かったんだね。だって、貴方のスタイルでそれを言うのはちょっとした嫌味よ」
「…えぇ、そう言われましても」
そう言って向けられたじとっと視線に、思わずそんな言葉が口から漏れる。
「とは言っても、根付いちゃってる価値観なんてそう変わらないだろうけどね。私も同じ口で学生時代は孤立しかけたことがあったからよく分かるよ」
そうなんですか、と口を開きかけて、ふと俺は首を傾げた。それから日華さんに視線を向ける。
長く赤味がかった茶髪、吊り目が特徴で勝気そうな顔立ち、どこがとは言えないがなだらかな丘陵、全体的に細身で低身長、それに学校の外での活発な雰囲気、俺よりも小柄なその姿はどう高く見積もっても高校生くらいだ。
いやまあ、迷宮に潜っているのなら十八歳以上ではあるんだろうけど、どう考えても学生時代と懐かしそうに呟くような年齢には見えなかった。
「…ん?…あ、今のセリフは忘れて頂戴、少し口が滑ったわ。私は十八歳、ごく普通の女子高生よ」
「あー、はい、了解です」
転生とか、若返りとか、前世の記憶とか、絶妙に厨二心を擽るワードが頭を過ったが務めて無視した。
世の中にはあんまり知る必要のない知識なんていっぱいあるんだ。これはまあ、普通にその類なんじゃないだろうか。
それからしばらく…、
「さて、これで廊下は見終わったわ。ここからはいよいよ本命ね」
三階の廊下の端っこ、そこで日華さんは振り返り、そう言った。ここで校内の廊下は一通り見終わった。
ここからは本格的な探索…各教室の探索に重きを置いた校舎攻略の開始だ。
「それじゃあ、まずはここよ」
ところ変わって校舎一階、まずは科学室などの一般教室以外から探索することになり、ここ…科学室に訪れた。
早速、日華さんが扉を開いて科学室の中に入っていく。
「あれ?普通にあるわね」
そして、何もしていないのにいきなりそう呟いた。
そんな日華さんの様子を見て首を傾げながらも俺も続いて科学室の中に入り、それから日華さんに話し掛ける。
「急にどうしたんですか?」
「いえ、この中学のことだし、攻略のヒントは学校の七不思議だと思ったんだけど当てが外れたわ」
ああ、と納得して頷く。
確かにこの中学はかなり古く、そういう七不思議的な噂話も存在している。その中でもこの科学室の怪談…学校を練り歩く人体模型はかなり有名かつ確かめやすいものだ。
なんせ、ここに人体模型があるかどうかを確認すれば良いだけの話だからな。だから、日華さんは科学室に入ってすぐ目に入ったあの人体模型を見て、自分が立てた予想は違っていると判断したんだろう。
だが、その判断はまだ軽率過ぎるというものだ。
「日華さん、その当て多分当たってますよ」
「ん?どういうことよ」
「この学校、ここに関する七不思議は二つあるんですよ」
そう言った直後だった。目の前にいた人体模型がカタカタと音を立てながら動き始めた。
―その目から真っ赤な血涙を流しながら。
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