第十六話 黒武者
前回よりは短めだけどやや長め~!
あ、11月もよろしくです。
《スキル『飛翔』がドロップしました》
《アイテム『魔力の指輪』がドロップしました》
消えていく闇精霊の姿を見ながら、目の前に現れた二つのドロップを回収する。
『飛翔』のスキルカードは『スキルホルダー』に収納して『魔力の指輪』は左手の人差し指に身に付けた。
それから雪芽特戦大佐に視線を向ける。
すると、丁度雪芽特戦大佐もその作業を終えたようでこちらに視線を向けていた。
「さて、お主よ。この後はどうするのじゃ?そろそろ夕食の頃であるし、一旦帰るのは分かるのじゃが、その後はまた迷宮に潜るのかえ?」
「そうですね、『力の泉』だけは見つけておこうと思います。多分ですが、日を跨ぐと思いますので雪芽さんは先に休んでいても問題ないですよ」
夕食を食べ終われば、大体19時を過ぎる。
そんな時刻から迷宮の未知の層に挑んで『力の泉』を探すとなれば、日を跨ぐのは必至だ。
それが分かっている以上は、雪芽特戦大佐を付き合わせるのは申し訳ない。それにもともと、今日が俺の誕生日だからって言う理由で付き合ってもらってた訳だしな。
「…日を跨ぐのじゃな。なら私は一足先に休ませてもらうのじゃ。私ももう、夜更かししても大丈夫なほど若くないからのう」
「あ、はい」
…もう一つ理由が増えた。
年頃の女性を夜更かしさせるのは紳士とかそれ以前に許し難い罪だ。下手な無理を強いる奴は、それが如何にいけないことなのか納得するまで使い潰されれば良い。
…まあ、今時そんな奴は一瞬で晒さられるし、実際にそんな風に使い潰されるからいないんだけどな。
遥か昔から…特に諜報が活発に行われて始めた頃から発達し続けた情報社会の在り方とその中で構築された高いモラルを舐めないで欲しい。
「…っと、思考が逸れた」
「おーい、お主よ、何をやっておるのじゃ。そろそろ地上に戻るぞ」
そんな風に思考を明後日の方向に飛ばしていると、いつのまにか雪芽特戦大佐は白い光に満ちている3層に続く扉の前まで行っていた。
『適応変身』を使って『攻撃強化』を『念動力』に切り替え、『精霊樹の剣』と『精霊の杖』を急いで回収してそちらに向かう。
「では、さっさと3層に出て帰るとするかえ」
「はい、そうしましょう」
2層のボス部屋で最後にそう言葉を交わし、俺たちはその扉を越えた。
《アイテム『スキルチケット』を入手しました》
《アイテム『精霊の指輪』を入手しました》
《レベルが上がりました。Lv30→Lv31 基礎能力が向上しました》
扉を越えると同時に目の前に現れた二つのアイテムは雪芽特戦大佐の前にも似たようにアイテムが浮かんでいるのを見て、手に取る。
そして、手に入れた無色透明な宝石が特徴の『精霊の指輪』は左手の中指に付け、『スキルチケット』は何の躊躇いもなく開封した。そうして手に入ったスキルカードは『攻撃予測』『気術纏』『テイム』で、『スキルホルダー』に収納した。
「それじゃあ、戻りますか」
「うむ、そうじゃな」
それから、記録晶板の[テレポート]を使って適当な層の『力の泉』に戻り、迷宮の外に出た。
それから時は過ぎて夕食後、どこかで今日の日付を聞いて俺の誕生日だと気付いたらしい赤荒父娘に祝われた俺は、予定していた時刻よりも少し遅れて迷宮に戻って来ていた。
「うぅ、ちょっと食べ過ぎた」
遅れた原因は、まあ、単純な食べ過ぎだ。
赤荒父娘特製のお祝いメニューがどれもこれもが美味し過ぎた。まだ大分初期だから、食材はそんなに充実してないはずなのに…。
料理教室で生計を建てている腕は並みじゃないってことか。まあ、この前なんて、どこかは知らないけどテレビ局の取材が来てたしな。
そんなことを思いながら歩いていると、俺は2層の『力の泉』から3層の入り口まで辿り着いた。
ここから本格的に…、いや、違った。ここから3層の『力の泉』を探しに探索開始だ。
スキルの設定は『体術』『魔力強化』『闇魔法』『気配察知』『縮地』『隠密』『奇襲』と、『奇襲セット』に近いもので、今回は既に『女体化』は使用済みで『黒猫パーカー』を身に付けている。武器なんかは一切持ち込んでいないので完全探索仕様だ。
それで、全力で『隠密』を続けながら探索を続けていると、すぐに最初の敵を見つけた。
それは2層のボスと同様に人型をしていた。身長は大体2メートルぐらいで赤いヒビが走った漆黒の武士の鎧を纏ったような姿だ。兜の下に見える目は全てを睥睨するような深紅で、全身に怖気が走った。
(やばいやばいやばい!こいつはやばい!絶対こんなとこにいていい奴じゃない)
[テレポート]で来る時に確認したから分かるが、ここの適性レベルは20から30だ。
だが、俺の視線の先にいるそいつはそんなレベルの奴じゃない。いや、仮にそのレベルでも、その強さはそんなものではない。言うなればこいつは、雪芽特戦大佐と似たような強さを持っているやつだ。
戦うにしても、それは入念な準備をして上で雪芽特戦大佐たちに協力して貰って挑みたい相手だ。
『我、強敵求む』
…だがまあ、現実とはなかなか上手くいかないもので。
『隠れし者よ、姿を現せ』
その言葉によって、俺が使っていた『隠密』は一切の抵抗を許されずに剥がされた。
咄嗟に『縮地』を使ってその場から離れる…だが、
「っ!これは」
前方に『気配察知』が反応して俺の行手を阻む。避けて進もうとしたが、それより先にその反応が闇の武者を中心に円を描くように一気に展開された。
1層の隠し部屋に張られていた気力の結界、それが黒武者によってバトルフィールド形成に使われたのだ。
そして、その声は聞こえて来る。
『我が前より、逃げること叶わず』
「逃走不可能ってわけか」
覚悟を決めるしかなさそうだな。
黒武者を視界の正面に添えて『適応変身』、『隠密』を『魔力察知』に変えて『気配察知』と併用し、魔力気力の両方の面から黒武者を捉え、『闇魔法』『奇襲』『縮地』を『光魔法』『魔法纏』『魔力操作』に変換する。
そのまま『魔法纏』を使って『光魔法』を纏い、攻撃に光属性を付与すると同時に身体能力を向上させ、向上した身体能力を把握する為、黒武者を警戒するようにその周囲を回り、『魔力操作』で魔力を注ぎ両腕に纏う『光魔法』を強めていく。
一撃必殺なんて不可能は願わない。ただ、唯一鎧に覆われていない顔面を堅実に殴り続けてダウンさせる。
『我、強敵を求む』
そう俺が心の中で強く思うと、もう一度最初に聞いた言葉が聞こえて来た。
その言葉に、なぜか今度は強烈な嫌な予感を覚えた。この感じはそう…、生理的な部分から来るどうしようもない怖気だ。
『これは選別の刃なり』
その言葉を言うなり、黒武者はゆっくりと刀を抜いた。その動作は酷く隙だらけで…、だが異様なまで目を引いた。
見た目も相まった不気味さに思わず足が止まり、攻撃に移ろうとしていた体を押し留める。いやが応にも警戒心が高まった。
『気配察知』と『魔力察知』に意識を集中させて、どんな攻撃が来ても対応できるように腰を落として両拳を構える。
『精霊の杖』と同じ能力を持つ『精霊の指輪』に制御を委託して『光魔法』の盾も生成した。
そして、刀が鞘から完全に抜ける。
「…痛っっ!」
一瞬の空白、そして両腕に切り傷が刻まれた。
咄嗟に『魔力操作』を使って両腕に強く『魔法纏』を密着させ、なんとか出血は防ぐ。
だが、それで流血が止まったわけではなく、また傷が無くなったわけでもない。そして、なによりも相対する黒武者が、さっきの正体不明の攻撃をもう一度使ってくるかも知れない。
たったの一幕で懸念材料が一気に増えるとともに、俺は思った。
…ああ、これは尋常じゃなくやばい、と。
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