第十五話 ボス戦
長めぇ!
そして再び迷宮に入ってらそれなりに時間が経過して、ついに俺のレベルが上がって30になった。
その中で雪芽特戦大佐に水狐から『水魔法』と『魔力察知』のドロップがあり、なかなかドロップしないと思っていた水狐からのドロップが判明した。
それで現在の時刻は17時35分、夕食までも余裕があることもあり、『力の泉』の部屋で一度休憩してからボス戦に挑むことになった。
「それで、15分後部屋の前で集合か」
大分威力を落とした『火魔法』の炎で『力の泉』を温めて浸かりつつ俺は呟いた。
呟いたのは雪芽特戦大佐が部屋に入る前に言った言葉だ。それからも分かる通り、俺たちは別々の『力の泉』の部屋に入っている。
ただ疲労を回復するなら少し浸かるだけでも良いんだけど、やっぱり精神の疲労も回復するとなるとお風呂みたいにじっくり浸かる方が良いもんだ。
しかも、なんやかんやで数日振りのお風呂だしな。今は凄く爽快な気分だ。あとはシャンプーとか使って全身を洗えたら最高だったんだけど、さすがに『力の泉』に排水溝とかはないし、それは無理な話だ。
「…ん?あれ?俺、『女体化』の効果切ってなかった?」
それからじっくり『力の泉』に浸かって、十分に温まったところで上がった俺は、そこで『女体化』の効果を切り忘れていることに気がついた。
おかげで『女体化』状態の俺の全身がそのまま俺の視界に映っている。意外に着痩せするタイプだったらしく思ったよりも大きな胸に腰のくびれの美しい曲線、無駄毛なんて一つもない綺麗な肌が同時に視界の中に映っていた。
でもまあ、俺自身が何かを感じることはなかった。
いくら綺麗な女性の体でもこの体は俺の体だ。だから当然だが、自分自身の体にそういう感情を抱くなんてことは全然無かった。
『風魔法』を上手く扱って体についている水滴を飛ばし、側に置いた服に腕を通す。そして、最後に『黒猫パーカー』を羽織った。
そうそう、『黒猫パーカー』といえば戦闘を重ねて、大体効果が分かった。推測にはなるが、聴覚を強化する能力と敏捷を強化する能力は確実にあるはずだ。
ついでにいえば、身軽になったことと柔軟性が上がったという変化があったが、これに関しては『女体化』の影響もありそうなので微妙だ。
「まあ、それはいいか。それよりもさっさと行かないと」
だがまあ、今からボス戦である以上、能力補正のある『黒猫パーカー』を脱いで検証なんてことはあり得ない。検証は気が向いた時にでもしよう。
そう思い、俺は『力の泉』の部屋から出た。
外に出ると、まだ雪芽特戦大佐は出て来ていなかった。少し早かったかとスマホで付けていたアラームの時計を見ると、まだ二分ほど残っていた。
アラームを止めて、それくらいあれば十分だろうと『適応変身』を起動する。
今回、ボス戦での最初のスキルの状態は『剣術』『体術』『気力操作』『攻撃強化』『敏捷強化』『縮地』『気配察知』で編成した新しい『近接セット』だ。
ただ、移動中は『精霊の杖』と『精霊樹の剣』が嵩張るので『攻撃強化』を『念動力』にしておく。
そうして、『念動力』外した影響で落ちた『精霊樹の剣』と『精霊の杖』を改めて浮かせる。
「すまん、待たせたのう」
「いえ、そんなことありませんよ。丁度のタイミングです」
それと同時に雪芽特戦大佐が『力の泉』の扉を開けて現れた。
雪芽特戦大佐は謝っているが、恐らく今で15分ジャストだ。特に謝罪することはない。
だから…、
「それじゃあ、行きましょうか。ボス戦に」
俺はここから先に進むことを促した。
それから地図を頼りに2層を進み、上層へ続く階段を雪芽特戦大佐とともに上る。
そうして階段を登ると、少しして前方が開けた。
なんとなくの感覚でそれを感じた俺は、足元に向けていた注意を正面に向ける。
するとそこには1層のボス戦の部屋が広がっており、その先にある今まで閉じられていた扉が開かれていた。
「あの扉の先みたいですね」
「そうじゃな。では、行くとするか」
道中に行った作戦会議で、ボス戦での戦闘は敵が複数の場合は分断して個別に戦い、単体の場合は能力的に攻撃力が高い俺を主軸に雪芽特戦大佐がサポートする形で戦うことになっている。
そのことを改めて頭の中で反芻して、俺は雪芽特戦大佐に続き、開かれた扉の先に進んだ。
扉を進んで部屋に入ると、その部屋の中心に二つの魔法陣が浮かび上がった。
それの色は1層のボス戦でみた光属性と闇属性の魔法陣を示す黄色混じりの白と紫混じりの黒だ。
それを確認しながら『精霊騎士の剣』を構え、様子を伺う。
それは、ここで急に魔法陣が一つになったりすれば使用する作戦の内容が変わってしまうからだ。一部の例外を除き、戦うなら冷静かつ慎重でならなければならない以上、作戦を先に決めて混乱なんて事態は笑えない。
と、そんなことを思っていると魔法陣一枚からそれぞれ一体の敵が姿を現した。
「二体…、ということは分断ですね。どっちのやつと戦いますか?」
「そのまま正面のやつで良いじゃろう。お主が闇で、私が光じゃな」
「わかりました」
そう答えると同時に『念動力』で『精霊樹の剣』を飛ばし、闇の…黒い体に蝙蝠のような羽を生やした悪魔のような見た目の一応精霊らしい敵の注意を引く。
一足先に突撃して、あの氷の槍で光の…白い体に白い翼の天使を模したような見た目の一応精霊らしい敵を攻撃して自分に注意を完全に向けさせた雪芽特戦大佐に続いて、俺も走り、『精霊樹の剣』を回収して『適応変身』で『念動力』を『攻撃強化』に切り替える。
そして、『縮地』を使って一気に接近し、『体術』を最大に活用して小さな悪魔のようなそいつを思い切り殴り飛ばす。
同様に雪芽特戦大佐が刀の柄で天使を模したようなそいつを俺とは逆の方向に飛ばしたのを『気配察知』で感じながら、『精霊騎士の剣』を上段に振り被る。
「はぁっ!」
振り下ろした『精霊騎士の剣』が、闇精霊の持つ槍が打ち合い、ガンッと金属音が辺りに響く。
『攻撃強化』で強化された力を『気力操作』で腕を強化することによってさらに強めてそのまま押し、力押しによって闇精霊が体勢を崩したのを見て、蹴りを放って腹を蹴る。
それによって、『精霊騎士の剣』と闇精霊の槍の鍔迫り合いが終わり、槍を弾いて完全に振り切った『精霊騎士の剣』が闇精霊を切った。
さらにそこから一歩踏み込み、返す刀で振り下ろした『精霊騎士の剣』を振り上げる。
だが、途中で背中の羽を動かして闇精霊が後退したことで、その剣撃は『精霊騎士の剣』の切っ尖が体表を薄く切り裂くだけで終わってしまった。
さらには、それが大きな隙となって闇精霊は体勢を立て直しただけでなく、大きく体を動かして突きまで放って来た。
来るだろうとは思っていたので、即座に『適応変身』で『体術』を『念動力』に切り替えて、振り上げた『精霊騎士の剣』に『念動力』を掛けることによって無理やり振り下ろして、闇精霊の槍の突きを防ぐ。
続いて、後ろから『精霊樹の剣』を『念動力』で呼び寄せて再度『適応変身』、『念動力』『縮地』を『体術』『二刀流』に切り替える。
「先に武器を潰す」
そして、狙いを闇精霊の持つ槍に変えて、左右から一発ずつ、隙が生まれないように攻撃を加えていく。
右手の『精霊騎士の剣』から袈裟斬りを放ち、そこに生まれた隙をフォローするように左手の『精霊樹の剣』から突き攻撃を行って闇精霊を怯ませる。
左右の剣の振り方は変えつつも右手の『精霊騎士の剣』は闇精霊の槍を狙い、左手の『精霊樹の剣』はそのフォローとして隙を無くさせるように振るうスタイルを徹底して行動し続ける。
結果…、徐々に闇精霊の槍にはヒビが入っていき、『精霊騎士の剣』の突きがヒビの中心に刺さると、バリンッ!と大きく金属音を立てて砕けた。
これでこの敵が身を守るものは何もなくなった。
あとは手早く、敵が何もしてこないうちに決着を決めるだけだ。
『精霊騎士の剣』と『精霊樹の剣』を握る手に力を入れ直し、攻撃済みの『精霊騎士の剣』は次の攻撃を放てるように引き、得物の槍が壊れて大きく隙を晒している闇精霊の脳天に素早く『精霊樹の剣』を振り下ろす。
一切防ぐことが出来ず、その強打を受けた闇精霊は大きくたたらを踏み、地面に膝を着く。
そんな敵の様子に俺は…、
「これで最後だ」
左手を『精霊樹の剣』から離して『精霊騎士の剣』を両手で持ち、『適応変身』で『二刀流』を『瞬動』に変えて、最上段から『瞬動』を掛けて猛加速した両腕で『精霊騎士の剣』を闇精霊の脳天目掛けて振り下ろした。
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