第十二話 誕生日について
十月最初の投稿やぞ!
「お主よ、少し良いじゃろうか?」
迷宮から外に帰る途中、戒めも兼ねて今までの戦闘を振り返っていた俺に雪芽特戦大佐が話し掛けてきた。
「雪芽さん?どうかしたんですか?」
「うむ、実は今日、迷宮に関する法案がまとまる予定でな。お主は迷宮に対して興味を持っているようだし、先に見せとこうと思ったのじゃ」
「え?それ大丈夫なんですか?思いっきり機密情報のような気がするんですが」
そういうと雪芽特戦大佐は、「ほれっ」と言って1台のスマホを渡して来た。それを受け取れば、画面に桜の花と刀を模した特戦のロゴが浮かび上がる。
そして、それからほどなくしてスマホの画面が切り替わり、画面に大量の文字列が現れた。
思わず、雪芽特戦大佐に視線を向ける。
「安心せい。どうせもう数時間もすれば一般公開される情報じゃ。それにここなら情報漏洩の心配もないのじゃし、気にせず読むが良いのじゃ」
「じゃあ、遠慮なく読ませて貰います」
それから読み始めたそのスマホには、突如出現した迷宮について法案が事細かに書かれていた。
分かりやすく簡潔にまとめると、
・大規模迷宮への立ち入りは個人登録が義務付けられ、十八歳以下は立ち入り禁止。
・迷宮内での諍い、犯罪行為は一切の容赦を持たずに対応する。なお、人同士の場合は肉体的精神的を問わず、暴力行為などの苦痛を伴う行為は一切行えないことが判明している。
・迷宮内で手に入れたものを使った犯罪行為は、通常より重い刑罰を実行する。
・大規模迷宮入り口には迷宮資源の買い取り窓口、探索道具の販売店舗、戦闘訓練などの講習場の設置を義務付ける。
と言った感じだ。
スマホの画面には、それらのことをより細かに詰めた法案と迷宮の中での様々なデータが載っていた。
俺がまとめた二つ目のやつは、そのデータの中でも特に興味深かったのでピックアップしてみたんだ。
「ありがとうございます、大体分かりました。ですけど、特に問題なことはありませんね」
「ん?そうなのかえ?確かにお主は17歳では無かったか?」
「俺、明日が誕生日なんですよ。だから、そこらへんは特に問題ないんです。問題があるとすれば、俺の誕生日に海外に出掛けている両親が帰ってこられるかですね」
ここまで帰って来ていなかったことからなんとなく分かっていたとは思うが、迷宮から脱出した直後に思った母親たちは外出中という言葉、実は少し言葉が足りていない。
本当はこの外出という言葉の後に海外へと続くのだ。
なんせうちの両親たちは、ちょっとそこらまでと言って県外の山奥とかに行くようなアグレッシブな人たちなのだ。外出なんて言えば、それこそ海外に行くと相場が決まっている。
それでどこに行ったかは聞いていないが、俺の両親は海外にいるわけで、なんやかんやで今までの誕生日は一緒だっただけにちょっと気になっているのだ。
なんたって今は世界中で迷宮なんてものが溢れている。冒険者気質の両親がそれに夢中になって帰ってこない可能性が否定できない。
「確かにのぅ、こんな情勢じゃから海外から戻ってくるのは難しいじゃろうな。…ふむ、なんなら私が祝おうかえ?」
「うーん、確かにそれもいいんですけど、迷宮を探索出来るようになるなら2層探索の続きをしたいんですよね。正直、誰にも俺の到達階層を抜かされたくないです」
「お主…、意外と負けず嫌いなんじゃな。なら、どうせじゃし私と探索せんか?誕生日に一人というのもどうかと思うぞ」
俺の言った言葉に雪芽特戦大佐は途端に真顔になり、そう言った。
思わず俺は固まる。確かにそうだ、誕生日なのにわざわざ一人になりに行くなんて、まるで寂しいやつだ。ただでさえここ最近は家で一人だったのに。
「…あー、じゃあ、お願いします」
「うむ、それで良いのじゃ」
というわけで、明日は雪芽特戦大佐と過ごすことになった。
そして翌日、俺は連続でスマホを鳴らしたメールに目を覚まされた。
毛布を退かしてスマホを探り、その画面を見る。
そうすれば、そこには三通のメッセージが入っていた。そのどれもが、誕生日を祝う言葉と行けなかったことを謝罪するもので両親たちから送られて来ている。ただ、その最後の一文には必ず、今ちょっと離せないことがある、とついていたので了解、気をつけてとだけ返しておいた。
まあ、さすがにうちの両親でも、今の迷宮による混乱で本数がかなり少なくなっている飛行機には乗れなかったらしい。
…でもまあ、そのうち帰ってくるだろうからそこまで気にしても意味はないか。
そうして、俺は近くに置いてあった『精霊樹の剣』と『精霊の杖』を手に取り、いつも通りの『偽装』を施してテントを出た。
「おはようございますっ!これ、届けに来ました!」
テントから出るとそんな言葉と共に、ずいっと一本の剣を渡された。
勢いに押されて受け取り、その剣に視線を巡らす。そうすれば、その剣に施された装飾に既視感を覚えた。
俺が既視感を覚える剣なんて一つしかない。
今俺に渡されたこの剣は、確実に『精霊騎士の剣』だ。
それに気付いてから俺は剣に向けていた顔を上げた。
「あ、ありがとうございます。えっと、勇途少尉でしたよね」
「はい、そうです!憶えてくれていたんですね!」
顔を上げた先にいた二十代前半くらいの男性は、昨日の作戦時に同じ隊だった勇途少尉だった。
特に態度に何かあるというわけではないがどこか女性的な印象も受ける活発な雰囲気と容姿で、随分と元気が良い人だ。
「それでは、自分は仕事に戻らさせていただきますね」
「あ、はい、お気を付けて」
そして、いきなり来ていきなり帰っていく様は風のようでもあった。
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