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第一話 目が覚めたらそこは…

十話までは隔日更新、それからは毎週一話目指していきますっ!

 皆さん、唐突ですが目覚めたらいきなり石造りで窓の一つもないアホみたいにデカい建物の中に居た経験って、ありますか?


 俺は…、たった今それを経験してます。


「一体どう言うこった?」


 靴下すら履かずの裸足で歩き続けでいる俺が呟いた声が広大な石の迷宮に反響して幾重にも重なり、俺の耳に戻って来る。

 それに慌てて口を押さえ、近くの別の通路に入り、隠れて辺りの様子を伺う。


(…大丈夫だよな……)


 心の中で呟き、息を潜める。

 しばらくそこで動かずにじっとし、数分経っても何も無いことに心の中でそっと安堵の息を吐く。


 こんな場所なのになぜかネットの繋がる携帯端末を使って調べたから、今俺が居る場所…というよりもどんな所なのかは何とか把握している。

 ここは恐らく、迷宮と呼ばれる場所の中だ。

 今、インターネット中で騒ぎになっているから、そこにある断片的な情報からそう推測出来る。


 とはいえ、外では流通に関わる場所が迷宮化したところもあるらしく、どこもかしこも混乱している様子だ。

 お陰で迷宮の情報は、RPGの迷宮のようなものであって、世界各国に出現したことくらい出回っていない。


(まっ、でもそれだけ分かってれば十分だよな。敵が居て、それが襲って来る。この前情報があるだけ迂闊な行動が避けられる)


 だけど、とりあえずはそれだけの情報があればいい。

 それだけで行動を限局出来るし、なによりさっきみたいな迂闊なことをしても対応出来る。

 今のところその敵には一切遭遇してないから何とも言えないけど、いきなり襲われてパニックになるってのも防げるはずだ。


 自己暗示でも掛けるように何度もその思考を繰り返し、不安を払って立ち上がる。

 そして、角を曲がって元の通路に戻ろうとした時、そいつと目があった。

 それは紫の球体を中心に影のような身体を持っていて、そこに空洞のような目があった。


 …その目と、目があったのだ。



 ―――っ



「…!!…っ!?」


 一瞬、思考が吹っ飛んだ。


 声は辺りに響いていない…、叫びそうになった口は押さえつけて堪えていたようだ。

 早速自己暗示が良い仕事をしてくれたんだろう。

 多分、不測の事態でもどうにか出来るとでも思って、余裕を使っていなければ、俺はバカみたいに叫んでいただろうな。


(…って、そんなこと考えてる場合じゃないっ!)


 視界があの影のようなモンスター―便宜上、シャドウとする―から暗い色合いの霧のようなものが放出されて通路の一角が暗闇に染まる。

 いや、薄っすらとは見えているか。

 夜の帳が下りる少し前くらいの暗いけれど、完全に見えないほどじゃない暗さだ。


 とりあえず、その暗い中に居るのは危険だと判断して、そこからは出た。

 冷静、冷静と自分に言い聞かせて、今にも半狂乱になってしまいそうな身体を押さえつけながらだ。


「…っ!」


 そんな俺の身体を突然の衝撃が打つ。

 倒れるほどじゃなかったけど、結構な威力があってたたらを踏んだ。でもまだ霧から離れている途中だ。

 だから、すぐに体勢を立て直して無理矢理気味にその場から離れ、距離を作る。


 そうして十分に距離を取れば、衝撃の正体が見えた。


(あの黒い球、あれが衝撃の正体か)


 それは黒い球だ。暗い霧の中から素人が投げる野球ボールくらいの速度で向かって来ている。

 霧の中では周りが暗くて見通すことが出来なかったから、突然の衝撃に感じたのだろう。


 だけど、タネが分かってしまえば対処なんて簡単だ。

 広い通路を存分に使ってサイドステップを踏み、そこから離れる。

 一応警戒してその黒い球を見たが…、


(…ホーミングは無しか。隠してるだけかも知れないけど、それは認識として持っておけばいいか)


 そのまま真っ直ぐ飛んで行っていた。

 危惧していたホーミングは今のところ無し、そう判断したところで今度は回避した先に向けて、黒い球を放って来た。今度もサイドステップでそれを避ける。


 当然それも、真っ直ぐに飛んで行った。


(しばらくはこれを続けてみるか。俺がミスしなければ大した音は無いし、問題ないだろ)


 俺の予想が正しければ、これは魔法だ。なら、魔力なんかの何かしらの対価が必要だろう。ノーリスクで放っているならお手上げだが、もし対価が必要なら、それが尽きた時どうなるのか、試してみる価値はあるよな?


 と言うわけでしばらくは、殆ど体力も使わない遅々としたサイドステップを繰り返し続けた。

 大体、今の時点で5分くらいだ。

 結構な短時間だけど、流石に飽きて来た。だが、その甲斐あって、ついさっきにようやくその成果が出た。

 予想していた通り、対価となるものが尽きたのか、周りの暗闇の霧が晴れてシャドウの姿が露わになり、あの黒い球の連射も止まった。

 シャドウ自体も心なしか弱っているように見える。


(よしっ、今だっ!)


 それを見て俺は一気に駆け、色の薄くなったその水晶のようなそれに手を掛ける。

 そして、それを思いっきり引っ張った。

 水晶のようなそれを引き剥がすのに抵抗があるかと思ったが、そんなものは殆どない。砂の中から球体状のものを取り出す程度の抵抗で引き剥がれた。


 それと同時に、どこかで聞いたことがあるようなないようなファンファーレが鳴り、目の前にこんな文字が現れた。


 《戦闘が終了しました》

 《レベルが上がりました。Lv0→Lv1基礎能力が向上しました》

 《スキル『闇魔法』、汎用スキル『鑑定』がドロップしました》


 全ての文字を読み切ると、手に持っていた水晶がバキンッと音を立てて砕け、光のエフェクトとともに二枚のカードに変わった。

 そこにはそれぞれ『闇魔法』『鑑定』と文字が書かれてあり、カードの裏側を見るとそこには直径5センチくらいの円を真ん中に、不思議な紋様が描かれていて、そこを見ていると不思議と使い方が分かった。


 と言うわけで、ひとまずは『鑑定』を習得して、それで自分を鑑定したみた。


【名前】御魂(ミタマ) 刹那(セツナ)

【年齢】17 【性別】男 【種族】人族

【レベル】001/100

【スキル】[][LOCK(レベル5解放)]

 汎用スキル枠[鑑定]


(んー、簡潔だな。ゲームのステータスと言うよりは、異世界モノでよくあるゲーム風のステータスって感じだな)


 とりあえず使用出来そうなスキル枠は一つだけ、これは保留の方が良さそうだと、『闇魔法』スキルのカードはポケットにしまった。


 それから入り口の捜索を改めて始めた。

 恐怖はあるが、それはさっきまで感じていた知らないことへの恐怖ではなくなっている。未知の生物がいるかも知れないという懸念は、既に未知の生物がいると言う確信に変わったのだから。

 もちろん、ほとんど戦闘経験のない俺からすれば、その生物は十分恐怖を抱きうる対象ではあるが、やはり知らないという恐怖はそれ以上のものがあるんだ。


(特にそれに対処出来るってことが分かったことは、大きな安心材料になっているな)


 警戒するように行動しつつ、自己分析してそう思う。

 それはともすれば油断に繋がってしまうかもしれない思いだが、人間誰しも、特に戦闘や探索、潜入のエキスパートでもない俺なんかは、長い時間の緊張になんてなかなか耐えられるモノじゃない。

 だから俺は、そんな危険を承知で、その油断とも捉えることが出来る思いを心の安定剤に変えた。


 そうして足音を極力静かに歩くこと数分、今度はシャドウの赤色版に出会った。

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