表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なつ風

作者: 不有

前書きはササッと

蝉の声。

川の音。

風が止み、シンと静まり返る畦道。

まだ幼かった頃、夏休みにはよく静岡の田舎の父親の実家に私は預けられた。

もともとあまり丈夫ではない私の身体は、都会での暮らしにはあまり適さなかったようで、それでも、両親の仕事上引っ越しをすることは出来なかった。

喘息持ちで、長時間の運動や、激しい運動は医師から停められており、友達も少なかったと思う。

つまり、夏休みの間くらいは落ち着いた環境で過ごして欲しいという事だったのだろう。

昔は、その事がとても嫌で、両親に対して抗議したこともあったが、今ではとても感謝している。あの場所での出会いは、私の人生を少しだけ、ほんの少しだけ変えた。

そう思える。


「また夏休みの間、蓮をよろしくお願いします」

車内からは、父のその一言しか聞き取れなかった。

夏休み初日の朝、都心から3時間以上かけて秦蓮を乗せた車は父親の実家に到着した。着いたのは正午を過ぎた、日の一番高い時間。

「さぁ蓮、おばあちゃんの所でいい子にしてるのよ」

「……うん」

母に促され、僕は蝉の鳴く外に出た。真夏の日差しが照りつけていたが、涼しい風が山から降りてきており、不快感はなかった。

「蓮くん、また今年もばぁちゃんと仲良くしておくれね」

「うん」

父さんと母さんは、その後何か忙しそうに車に乗りこみ、東京に戻っていった。

それを僕は、ばぁちゃんの手を握り締めながら見ていた。

「さぁ、スイカでも切ろうかね」

ばぁちゃんは目尻のシワをさらに深くして笑っている。僕は上手く笑えなかった。

後書きはススっと

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ