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エピソード88:既成概念をぶっ壊せ!

 ゲネシス王国は変わらない感じか。追っ手も来ていないようだし、まずは一安心。


「いや、どうしてこうなったんだ!!」


 人通りの少ない路地。マリー・トワイライトが今までオウジャとアルカディアを焚き付けた張本人だと言う真実にやるせない気持ちで一杯一杯だ。

 自分の歯痒さに苛立った。だから、僕は壁をぶん殴る。不思議と痛みは走らないが、腹立たしさが倍増してしょうがない。

 

 いずれ逃げ場もなくなるのだろうか? 希は僕を敵として認識した以上徹底的にやり遂げるつもりかもしれない。

 彼女は一度決意を表明すると意地でもやり通そうとする悪い癖があるから。


「ひとまずお家に戻ろう」


 マリーの正体を追求した時からどうにも体調が優れない。ふらふらになった身体を無理矢理進めて、人目を避けつつ小屋の方に入る。

 そこは街の中心地から外れて、なるべく人目に触れられないような場所にある小屋。


 元とは言え、蒼の騎士の称号を手にいれ民衆の目に晒されていた僕が堂々と歩くのは非常に目立つ。

 だから、こそこそ出来る場所で住む事に決めたんだ。青のコートも頭が隠せないから代わりにフードが付属した上着を羽織っている始末。

 季節が冬というのも一応関係しているけど。


「ただいま……って一人でも言うのも結構虚しいな」


 父さんにも母さんにも病院以来会っていない。また、戻れていない日々を送っている都合上今度もし現実世界に帰還したりでもすれば僕の身体は一ヶ月で退院出来る保証も起きない。

 この異世界で長い日々を繰り返せば、それだけで現実世界の神無月翔大に多大なるリスクを押し付けてしまいかねない。

 だからこそ元に戻るには現実世界と異世界を行き来させられてしまった一番の原因である神宮希を葬らない事には。


「希は、自分が死ぬのを拒んでいる。至極当たり前だけど」


 ましてや彼女は現実世界を潰して歴史をこの異世界にすり替えるつもりなのだ。

 もはや自分が死ぬまで育った現実世界に価値を見出だせないのだろう。

 

 自由の身であり、全ての事象を操ってきた希が最終的に望むべくは地球の破壊と己の世界の再興。

 そこにもし仮に地球が消滅したとなれば、恐らくは希が神の立場となって好き放題に管理する世界を誕生させてしまう。

 

「立ち塞がるは二人。あいつらを倒せば、どうにか事態は切り替わる……のか?」


 腕を武器にするバルフレード。分厚い本を片手に遠くから魔法で牽制するガンマ。 

 希が用意した部下は想像を超えた強さにある。彼等を倒すにはかなりの時間と体力を要していまいかねない。

 少なくとも僕だけで相手をするには骨が折れるだろう。どうにか誰かに手を貸して欲しい所だ。


「ふっ、それは無理か」


 手を貸して欲しい。よくも我ながら、そんな図々しい考えが浮かんでしまう物だ。

 こんな世界を作り上げてしまった最悪の元凶は僕だというのに。

 やはり……単身でも彼女に剣を振るうしかないか。世界が敵として立ちはだかるのではないかと思う中での戦い。

 

 余りにも無謀だと誰もが思うのだろうが。まだ、現実世界には帰っていないからお守りとしてリボルバーを上着の内ポケットに隠してある。

 万が一にはこれを使って、状況を打破するつもりだ。肝心の希に手の内をばらしているからまともに直撃するかどうかは賭けの部類に入ってしまうけど。


「全各国の皆様。誠に突然ではありますが重大な発表があります! まずはどうか空を見上げて下さい」

  

 な、なんだ。なんのつもりだ? どうして希の声が聞こえてくるんだ?  

 彼女の声はエコーとなって耳の鼓膜に嫌でも伝わってきた。窓から空を見ようとしても上手く見えないので、ひとまず外に出て指示どおりに見上げると……そこには僕のよく知る彼女の顔が写る。

 

 どんな魔法か知らないけど、あのモニター越しに写すというのは並大抵では出来ない筈だ。

 そうなると、やはり希は高度な魔法をいとも簡単にこなす事が明らかになる。

 元々自分に隙がないように予め設定を盛りまくっている可能性も否定しきれないけど。


「お昼の時間からこんにちは。ではでは、皆さんには重大な発表を告げようと思いまーす。余りにも突然で驚く事も多々あるとは思いますが……頑張って聞いてね♪」


 こんな時間帯に何を仕掛けるつもりなんだ。しかも発表ってのが一番引っ掛かる。

 神宮の考えなんてまともな物ではない。寧ろ僕を締め上げる方法を考えている可能性の方が高い。

 不安な思いを胸に、彼女のスピーチに望む。

 そうして……始まる言葉の全てが僕を地獄の底に突き落とす最悪の始まりでもあった。


「アグニカ大陸にある空・海・土は遥か昔創造神ミゾノグウジンに生み出されたと書物に記載されていますね。まぁ、実際は貴方達のモニターに写し出されている私こそがミゾノグウジンなのですが」


 自分から真の名前を告げたか。きっと、今頃各国の住民が混乱しているだろうな。


「そして……この世界を大きく歪ませるは蒼の騎士。彼はこれまでオウジャ・デッキやアルカディアを成敗しましたが、実はこの全てがショウタ・カンナヅキによる思惑でもあったのです」


 な、何を言ってる? 君の方がこの世界を自分の物に仕立て上げてたんだろう。

 なのに、何故僕の仕業だと嘘を平気で言えるんだ? 今の君の思考は明らかにおかしい!!


「困惑をしている方も多いとは思います。ですが、彼は皆を思うようにこの世界を蹂躙しあまつさえ神である私を殺そうとしているのです! 仮に、もし私が死ねば世界は滅びの運命を辿ります。だからこそ、私はまず手始めに治安団の協力を得て……ショウタ・カンナヅキを始末しようと思います。ですが、出来るなら貴方達のお力添えも必要です。願わくば、どうか何卒ミゾノグウジンである私に彼を止める力を下さい」


 遂に民衆の力を借りてでも、君の世界を実現させるつもりか。僕の世界はどうであれ滅ぼすつもりなんだな。

 希にとって、自分が生きている世界はここ。僕が住んでいる現実世界には微塵にも興味ない。


 だから、あの世界を飲み込んで彼女の世界に作り替える。ここまで僕を試した理由は聞いてみない事に分からないけど、大体は僕の為にと言っていた。

 やはり生前の時に言っていたあの言葉をここで徹底的に実現させるらしい。

 その為にも自分が頭を下げてでも、民衆に理解を得るつもりなのか。


 これで上手く事が進めば僕は神宮の的であり、世界の的にも成り果てる……まさに最悪の道ではないか。

 と、心を曇らせる僕に対し彼女はとんでもない行動に出る。それは僕の度肝を抜かせた。

 

「って、言っても貴方達には強制的に協力して貰う。だって、そうでもしないと翔大を追い詰められないんだから♪」


 頭を上げて、悪い顔付きをする神宮。そこから急に空はとてつもなく紫に染まる空に変わり果てる。

 一体何がどうなって……考えるまでもなく、彼等はこの瞬間希の駒として操られているのだろう。

 このどす黒い空はとてつもなくやばい感じがする!


「待っていなさい、翔大。貴方を地の底まで追い掛けてあげるから」


 凄い執念だ。何をしようが僕を徹底的に追い詰めるつもりなんだろう。

 その為にありとあらゆる策に手を出すのか。本当に手段を選ばなくなったな。

 

「もうこの時点で知っているとは思うけど、今の私の波動で貴方の周辺はほぼ全て敵となった。これで……果たして、どう逃げるのか? さあさあ是非とも私を楽しませて頂戴!!」


 やってくれたな。しかも、今さっきの波動とやらが周辺の民衆を希の駒として動かしているなら僕の味方は誰一人とも居ない。

 今後はどう足掻いても、世界の敵として指名手配のレッテルを貼られる。


 アビスと同じく指名手配……か。まさか、こんな日が訪れるなんて思わなかった。


 おっとと、感慨深くなっている場合ではないか。それよりも今はここを脱出する方が先決か。


「いや、逃げた所で敵はゲネシス王国を含めた全ての国家。とてもじゃないが逃げ切れる自信はない。けど、逃げない限りは」


 彼等の手に捕まるか。最終的に希が捕まえられた僕をどうする

つもりなのかは判断しかねるけど、凄く悪い予感しかしない。


 小屋に戻って小物が入るポーチをズボンにくっつける。ここに回復用のアイテムと地図を入れて……いざ、脱出。

 今日からは自由に寛げる場所はない。アグニカ大陸の全てが彼女のテリトリーだ。


「あれじゃないか?」


「ははっ、見つけてやったぞ! ミゾノグウジンを殺す死神だ!」


「あいつを捕らえろ! 俺達の持てる全てを出し切れ!!」


 くそっ。今度から市民が敵として回るのか!? 全く……信じられない事をしてくれる!


「この街はもう終わりか」


 希の真の狙いはいずれ潰れゆく異世界を永遠とする為、僕が住んでいる地球を容赦なく壊す。

 例え、君の家族か住んでいようと。躊躇は一切ないって事か。


「捕まえるなんて生温いぜ!」


 人目に触れられないような場所に小屋を建てたのに、こんなにもあっさりと見つかるのは彼等の本能か? あの周囲のどす黒いオーラのような物がそうだとしたら、かなり危険だ。

 

 普通に話し合っても逃してくれそうにはない。なら……申し訳ないが、力ずくで押し通る!


「真・蒼剣。君だけが頼りだ」


 蒼く輝くたくましい剣。当初からこいつとは長い付き合いをしているが、一度たりとも折れる事なく切れ味を一切低下しない無敵の剣。

 最後の敵は希。これまで裏で策を張り巡らしながら、平気な顔で異世界を過ごしていた彼女。

 彼女を止めねば、僕の世界は果てる。あともう少しの付き合いになるけど、それまではどうか宜しく頼む!


「遠慮はするな! こいつを捕まえれば、世界は生存するんだ!」


「生かして帰すかよ! 俺が絶対に捕まえてやるんだ!」


 気合いだけは一丁前か。けれど、動きが素人丸出しで武器を振るうタイミングもなっていない。


 動きに脈動感のない住民はどうにか峰打ち程度で済ませた。但し敵は神宮が操る全ての住民。

 そう簡単には……追い払えやしないか。


「くっ、やっぱりか」


「居たぞ!」


 真面目に相手をしていたら体力が無駄に消耗する。これは元を断たない限り永遠とやらされてしまう。

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