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エピソード5:またしても帰るのか

「嘘だろ、お前……倒しちゃったの!?」


 素人の僕が倒した事がそんなにも驚いているのか誰から見ても分かりやすい驚愕の表情で口をあんぐりと開けている。

 もう、ここに戻るにも距離があってクタクタなんだからあんまり揺らさないでくれませんかね?


「店主、肩をぐらぐらとさせるのは即刻止めて下さい。これでも僕は疲労しているんです」


「んだよ、情けねえな。あの凶暴怪物と至らしめるアウレオルスを倒したんだから、もっと誇れよ」


 凶暴怪物って。そんな奴をド素人に押し付ける店主の気が計り知れない。

 結果的に月から降ってきた蒼剣に助けられたから形成は逆転した。

 でも、はっきり言って怖すぎた。あれは先生の説教や母さんの説教すらを超越した怖さ。

 これからは現実世界で何があっても平常心でいられそうだ。


「じゃあ、依頼されたアウレオルスを倒した褒美を頂きましょうか?」


「おうよ、報酬金はたんまり出してやる」


 袋から物凄い音が響く。あの中にどれだけのお金があるだろうか、ごくり。


「それと……例のあれを出しなさい」


 例のあれって何の事? 僕と一緒に訪れた時には一言もそんな事言ってませんでしたよ。


「あぁ、やっぱりか……でも止めた方が良いぞ。あの国はあれがあっても治安については保証が出来ない」


「やらないといけない使命があるの。アンに任された使命を果たさないと」


「はぁ。俺としては行かせたくないんだがな」


「……それについてはご心配なく。何か問題が起きたら彼が一目散に私を守ってくれるから」


「えっ、僕?」


「ショウタ以外に誰が居るの。私は貴方の内なる強さに信用している」

 

 話が見えてこない。取り敢えず、会話から拾って要約してみると危険な国に潜入するって感じか。


「お願い、ショウタ」


 僕なら全力でお断りの土下座スタイル。危険な事に積極的になる性格じゃない。

 しかし、彼女の上目遣いを見るだけで心が折れそうになる。

 いやいや……さすがにまずいだろ。

 僕は兵士みたいに頑丈な身体つきをしていないし、何より彼女の身に迫る事態が起きたら助けられるか保証が出来ない。

 だから、お願いだからその上目遣いで僕を見ないでくれ。


「わ、分かった。その……危険な事になったら、なるべく君を最優先に守るよ。必ず守れるかは分からないけど」


 マリーのお願いに屈してしまった。基本的にお願いは面倒臭いから極力お断りする……この僕が。

 僕はこんなにもチョロいのか。マリーに一言お願いされただけで。


「さぁ、店主。これにどう応えますか?」


「何回か忠告はしたぞ。これで何か問題が起きたとしても、俺に文句は言うなよ絶対!」


 念押しスタイルで机の上に置いたのは木製の四角形。そこに国を象徴するかのような絵が書かれてある。

 一見すると蛇? らしき気高き動物の絵だ。マリーは店主からの礼の物を手に入れて非常に上機嫌。

 反対に店主の方は……項垂れてる。余程行かせたくないのだろう。

 店主とマリーの間にどんなドラマが描かれていたのかは全く関知しないけど、店主の顔は暗い。

 それだけである程度は語っている。


「大丈夫。なるべく穏便に済ませながら解放して逃せば良い話よ」


「相手は欲しい物があれば力で奪い取る国だ。お前もそれなりの美貌なんだから自分を大事にしろ」


「やだ、照れるわね」


「誉めてねえ。俺はあくまでもーー」


「あーあ、はいはい。ご忠告どうもありがとうございました。では、私はこれにて失礼します」


 無駄に丁寧なお辞儀を済ませてから軽やかなステップで依頼屋を後にするマリー。

 僕もここから去ろう。何か居づらい雰囲気になっているし。


「お前さん。マリーに付いていくのなら、しっかりな。あの国は危険な野郎が集まっている噂が耐えねえからよ」


 さっきから店主とマリーの会話に出てくる国が相当危険な事は聞いて分かる。

 どれだけ危険な国なんだ? 

 こっちの方ではアフガニスタンとかカンボジアが結構な戦争国として有名だけど。


「その国の名前は?」


「ん? お前さん……あぁ、そうだったな」


 すみませんね。僕はこの世界の住民じゃないんです。

 最初に話した作り話に付き合って下さい。


「オウジャ。国家の王であるオウジャ・デッキが力で支配した厄介な国。今は沈黙状態だが……想像以上に油断ならない国として俺達の国であるスクラッシュとゲネシスが警戒している国だ」


 想像以上にやばそうだ。二つの国がオウジャを敵視しているという事は相手は極道並の連中か。

 いや、これは勝手な僕の妄想ですけども。


「今日はベットでしっかり鋭気を養ってこい! オウジャに行くまでの道中も危険なモンスターはそこらかしこに出没するから出掛ける時は細心の注意を持って行くんだぞ!」


「あぁ、はい。では失礼します」


 嫌だな。僕はそんな危険な連中と関わらないといけないのか……まぁ、マリーの指示に従いつつ上手く事が運んでしまえば大きな問題は起こらないかも。

 うんうん、もっと前向きに進もう。


「なーに話し込んでいるのよ」


「あれ、待ってくれたの?」


 どこかに行ったのかと思っていた。初めからマリーを探しに行こうと考えていたけど待ってくれていたのなら、探す手間は省けた。

 

「勿論よ。ショウタはこの先私の騎士としてお側に仕えるの。これからも」


「騎士って……大袈裟な。僕には君を守る程の力はない。それどころかマリーの方が強いと思うよ。魔法も使えるみたいだから」


 RPGゲームでしか見られないと思っていた魔法があんなにあっさりと出来てしまうんだ。

 先読みのチート能力以外に剣しか使えない僕でさえもその才能が羨ましい。

 こっちの現実世界で魔法を発動させたら、科学者達が全員が好奇心を持って本格的な研究が始まりかねない……だろう。何となくそんな気がしてきた。

 少なくとも、全チャンネルが報道する事は間違いない。


「ショウタ。貴方はこれから先、私の騎士になるの。そう、拒否権はない……」


「でも」


「最初に出会ってしまったのが運の尽き。諦めて、私の指示に従って」


 何故こんなにも僕に対する押しが強いんだ? そこまでして僕を。


「それが世界を救う唯一の手段になるから」


 ごめん、さっきから何を言っているのかさっぱり分からない。

 ひょっとして僕の理解不足?


「世界を救う手段って……この世界に何がーー!?」


 視界がシャットダウン。また、この現象か。

 もしかしたら話の流れを察するにマリーが居る世界で大戦争が始まるのか。

 いやいや、そうだとしても僕には関係のない……


「事なのか。もう僕は充分に関わっている気がする」


 異世界に来てから一日も実際には経っていない。けど彼女と出会ってからは物語がトントン拍子に進んでいる。

 あの世界で相手の動きを捉える先読みと素人の僕では到底倒しきれない怪物を一撃で切り裂く蒼剣。

 これから僕はどうなっていくのか。チートに近いスキルと強力な武器を携えた時点で僕の心は荒ぶっていた。

 そんな時に告げられたマリーの一言。


「おーい、どうしたよ翔大?」


 騎士になる……か。興味の出ない所では全く表にも出そうとしない若干引っ込み思案な僕に果たして務まるのか?

 

「おいって!」


 目の前の人達は制服の上着を教室の椅子に立て掛けているのか、カッターシャツで廊下を歩いている。

 改めてスマホの確認をしてみると昼真っ只中。一旦異世界の話は頭の隅っこに寄せておいて飯を食べに行くとしよう……っ!!


「痛い痛い!」


「無視を決め込むのは良くないぜ」


「別に君を無視している訳じゃない。ちょっと考えていたんだ」


「そうか……って、納得出切るか! さてさて、言い訳は署で伺おうか?」


   《異世界》→→→→→《現実》


「別に署では無いよね。ここ学校だし」


 影野明。風紀違反ぎりぎりのラインをした茶髪と本人はバッチリと決まっている自負するワックス仕立ての髪質。

 基本的に何に対してもポジティヴな思考を持つ彼は僕が知る限りでは友人がすぐに集まる。

 僕と明は幼稚園の頃に別々のクラスだったのにも関わらず、時々会う度に話し込んでいた僕達二人はいつの間にか自然とそういう友人関係に。


 あっ、待てよ。

 

 確か当時新作のRPGとして名を馳せていたモンスタークエストのある一面がクリア出来ないと明が休憩中に一人で座っていた僕に話し掛けたのが切っ掛けだったかな?

 あの辺りから凹凸な性格同士だったのに。

 今じゃ、暇があれば明の家に押し掛けて棚にあるゲームで遊んでワイワイガヤガヤとしている。

 それで上手く付き合えているのが今も不思議でならないけど。


「だったら、あそこでじっくりと聞くとしますか……とその前に」


「昼飯だね。僕は焼きそばパンがベストだけど次点であんぱん」


「俺は……そうだな、チョコレートパンが良い」


 二人で食べる時はどちらかが買う。その為にじゃんけんという勝負がある。

 しかし大抵は僕が勝つ。明はひたすら負けの道を辿り、僕が欲しいパンを購入する定めにあるのだ。

 要するにパシり状態。勉強はほどほど運動はそつなくこなしている明であろうが賭けをすると滅法弱い。

 将来ギャンブルとかカジノとかに手を出してはいけないタイプだと思われる。

 まぁ、パシりとはいえ代金は予め明に預けているから実質お使いみたいな感じになっているけど。

 

「おらよ。くっそ、いつになったらじゃんけんに勝てるんだよ……」


 今日はあんぱんか。一番欲しかった焼きそばパンは完売したのか。

 ここの学校の食堂で置かれている焼きそばパンは売ったら速攻で売り切れてしまう大人気商品。

 早足で駆け付ける明でも買えなかったのなら相当の生徒達が買い占めをしたに違いない。


「その内なんとかなるんじゃない?」


「勝者の言葉って何かイラッとくるわ」


 僕と明は基本休憩時間に人が一切近寄らない裏庭で食事を取る。

 片手に四角形の形をしている手頃なアップルジュースを口に運びあんぱんを口に放り込む。

 こうして僕は2回目の帰還が果たされた。望んでもいない世界移動。

 景色が真っ暗なった後に切り替わるシステム。あんぱんの中に練られたあんを深く味わう余裕はない。

 何故再び帰投出来たのか? どうして異世界で入手した力を現実世界に引き継げないのか?

 異世界で着用していた制服とポケットにずっと忍ばせていたスマホは引き継げるのに。

 まだまだ、あの世界については分からない事だらけだ。


「一体今日は何があった? 困った事があるなら俺にバシッと言え。出来る範囲で助けてやるよ」

  

 それじゃあ、ここは一つ付き合って貰おうじゃないか。こんな話をして理解してくれるとは到底思ってないけど。

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