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エピソード52:アンラッキーをラッキーに

 蒼剣は力に応えて、威力を増しありとあらゆる物を意図も簡単に切り裂く。

 但し、相手は魔法に長けていると思われるアルカディア。防御魔法や全ての属性魔法を網羅している実力。

 それらが非常に優れていて一筋縄では倒せない。


 他の二人は互いに狙いをつけた相手に武器を振るい、激闘を繰り広げつつある状態で、とてもじゃないが応援に来れるような場合ではなさそうである。

 だからこそ、僕も全力で尽くさなければならない。一刻も早くアルカディアをねじ伏せてザットとライアン隊長をフォローしないと!


「くくっ。余所見はいけないな!」


 無数の雷を飛ばしつつ、火の玉で対象である僕に目掛けて飛んでいく。

 更にそれに飽きたらず、眩い光線をぶっぱなすアルカディア。

 全ての攻撃は防げそうにもないが、いかなる先をも瞬間的にモニターとして映る先読みの効力で一部をかわす!


「ぐっ!」


 危ない! あの光線を僅かにでも受けたら大ダメージを残す所だった。

 あんな攻撃で家に空洞が出来てしまうなんて、非常に恐ろしい。


「動きは止まったか!」


 けど、それに集中し過ぎたお陰で無数の線を描く雷に直撃してしまった。

 アルカディアの高笑いと共にもう一度解き放たれた光線を見た瞬間に降りきるようにして脱出したけど、身体の痺れが全く取れそうにない。

 この雷にどれだけの電力が流れ込んでいたんだ? バチバチしまくっていて、身体が思うように動いてくれない!


「君は随分とタフな所があるね。私の予想ではもうくたばっていてもなんらおかしくないのだが……そこまで来ると、やっぱり意地でも蒼の騎士なんだと思い知らされるよ」


「そりゃあ、貴方みたいな……野望が違えど、自分だけしか考えていない我が儘野郎と何回か対峙していますからね。伊達に蒼の騎士を名乗ってはいませんよ!」


「くくっ、実に愉快だ。そうでなくては折角の余興も楽しめない!!」


 僕の言葉に薄ら笑いを浮かべるアルカディア。次に移した行動は以前にも増して、執拗に……そして、徹底的に僕を潰していく。

 炎・水・土・雷と自分の持てる全てを惜しみなく使っていきながら、狂気じみた顔で街が壊れようがなんだろうが僕を殺すまで狙いをつける。


「ほーら、ほーら! さっきまでの威勢をこの私に見せてくれぇぇ!」


 こいつ、会って早々壊れ始めた。早く決着をつけないと手がつけられなくなってくるぞ。


「私の計画は完全に完結する。例え、どれだけ惨めに抗うとする戦士が居ても……二度と日の目を見る事がないように身体をバラバラに潰してくれよう!」


 遠距離魔法のお陰で上手く距離が詰められそうにない! どうにか障害物を駆使してでも、奴に一泡吹かせないと!


「どうしよう。どうやったら魔法使い相手に……剣が届く?」


 物に聞いてみた所でどうしようもないのに頼っている僕に不甲斐なさが立ち込める。

 そうしている間にもアルカディアは平然とした顔で距離を詰めてこようとしている。

 このまま、黙ってやられるなんて……それは嫌だ! 僕は断固として歯向かわせてもらう!


 お願いだ。一度でも良いから、この距離からでも仕留められる一撃が欲しい!

 途端に祈りが応えたのか蒼剣は強く輝き、まるで振り払えと言わんばかりに。

 

「そうか、僕に力を貸してくれるんだね」


 握り締めた瞬間に相手から見えない場所から飛び出し、その祈りを持ってして。


「うおぉぉ!!」


「そこにいたか!」


「フルパワーで沈めえ!」


 大きく振り払った一撃は急激な加速を一直線上に描いて、対象の相手と建築物を破砕する。

 さすがに威力をセーブしていなかった影響で周りの建物を破壊してしまった。

 かと言って、手加減が出来る程の相手ではない。やるならやるで覚悟を決めるしかないんだ!

 

 それにしても相手の反応がない。まさか、これで運良くチェックメイトか?


「蒼天の舞・咆哮」


「くくくっ! あぁ、中々良いじゃないか。今さっきの一撃はゾクゾクしたよ!」


「っ! まだ、生きていたのか!」


 こいつ、しぶとい。あの手加減抜きの容赦のない一撃を振り下ろしても、ピンピンとしているなんて。

 アルカディアは以前の相手とは比べ物にならないくらいの強敵だ!


「君と会えた日に感謝しないと。こんなに愉快な気持ちになれたのは、すっごく久しいからねえ!」


「それは、どうも」


「私を本気にさせた。そのお礼に今から君を地獄に突き落とし、這いつくばらせてやる……嫌と言う程に!」


 ありがたくもないお礼なんて迷惑なだけだ! しかし、相手は聞く耳を持つ筈がなく勝手に始める。

 それは宙に描く無数の光色を帯びた円が何かしらの魔法を放つ……そんな瞬間。

 

 途端に嫌な予感が脳裏をよぎった。


「さあ、たっぷりと味わってくれ」


 けど、そう思った時に先読みの力を通して見えてきたビジョンは回避するにも回避のしようがない圧倒的な暴力。

 敵味方関係なく放出された無数の光線は僕を対象に狙い撃つ。

 剣で防御の姿勢に入るも、解き放たれた無数の光線の一部が膝や踵に直撃したりと激痛が走る。


「ぐああぁ!」


「泣き叫んだ所で誰も助けは来ないよ。この戦力差の前では!」


 攻撃が止んだ。けど、思った以上に身体を痛め付けてしまったせいで思うように動かない。

 それにザットもライアンも僕と同様に傷を受けている。あっちの戦闘状況はかんばしくはないようだ。

 人数のハンデは一切なかったけど、この三人に挑むには現状無理だったのか?

 簡単には諦めれない……ここで、挫けてしまえば奴等に敗北を許してしまいかねないぞ。

 頼む、こんなに傷を受けていようとも立ち上がれる力をくれ。

 

「おや?」


「まだ……終われない!」


「しつこい。蒼の騎士はこの圧倒的な状況下に置いても、まだ死を受け入れないのか?」


「宗主、ここは俺が仕留めます。相手の反応は消え失せましたので」


「もう彼を仕留めたのかな?」


「随分な抵抗をされましたが、力ずくで潰しましたのでしばらくは起き上がれないかと」


 ライアン隊長。そういや、さっき凄まじい音と一緒に建物にぶつかるような破裂音がしていたけど……くっ、無事でいて下さいよ。


「蒼の騎士ショウタ・カンナヅキ。お前の周りにはもはや仲間は居ない」


「どうかな? 貴方の方がよっぽど淋しい奴に見えるけど?」


「負け犬の遠吠えか」

 

 剣を引き抜いたと同時に詰められた距離。その時の条件反射が更なる致命傷を防ぐ。

 先読みの効力で何度かの切り払いを受け身の形で受け流す。

 相手の切れ味は相当な物で、一寸の乱れもなく次々と素早く移る様はザットとよく似ている。

 ただ、この人は殺意を持って動いている。恐らく下手な手加減を働ければ、奴のペースに嵌まってしまうのは時間の問題。


「もう終わりか。折角の余興も無駄に終わりそうだね」


 勝手にがっかりされても、こっちは迷惑だ。そんな内心すら露知らずアルカディアはザットとアビスの戦闘を遠目で眺めている。

 彼等の戦闘は未だに終わってはいない。寧ろ、それどころか益々ヒートアップをしていて終わるに終われない状況にある。


「美しい。彼はどこまでの殺意を持っているのだろうか?」


 ザットの執念はアビスを殺すまで……呻きは止まない。彼がどうしてああも固執するのかはまだ知らされてもいない。

 

「消えろ!」


 おっと、危ない! うっかり物思いにふけすぎてしまった! とにもかくにも今は早い所、こいつを追い払わないと!

 先読みの力で回避の手段を得る中で僕の抵抗は始まる。風のように素早く切り裂き、相手が運良くよろめいた。

 

「なっ!?」


「そこ!」


 ずっと貴方のターンに嵌まっていたんだ。ここで、いい加減逆転するのも一興じゃないのかな?


「さっきまでのは演技だったのか!?」


「別に。ただ、僕は……そろそろ良いようにやられるってのは個人的に癪に障ると思ったからさ!」


 懐に飛び込んだ。背中に回り込み、その開いた隙を剣の持ち手に力を込めて勢いよく凪ぎ払う。

 すると反応通り、相手はなすすべもなく吹き飛んでいく。無論、サイガはそこらの敵とは一味違うので未だにピンピンとしているが。

 まずは優勢に戻れたので、状況は良しとしたいと思っているのは僕だけかも。

 なんせ、僕を狙う敵はサイガだけでなくアルカディアも居るのだから。


「君に一つ、神の御言葉を授けて上げよう」


 しまった!? 僅かな間に僕の足が輪のような物で! 剣で切っても切っても切れないなんて……くそっ、思わぬ所で!


「油断大敵……ってね」


「アルカディア!!」


 背後からでも感じる熱量。足が動けないので首が後ろに回らないが精一杯の覚悟で回したら、真っ赤な色に染まった球体らしき物が……まさか、これって。


「灼熱の業火に燃やされ、骨となって散り散りになると良い」


「ふざけるなぁぁ!」


「宗主の粋な計らいに感謝せよ」


 冗談じゃない。あんなのがかすったりでもしたら生きて帰られる保証は一ミリ足りともありやしない。

 

「最後は君の悲鳴を轟かせてくれ!!」


「蒼の騎士。お前の力はその程度だったか」


 ふざけるな。こんなんでバッドエンディングを迎えられるか! 

 僕は異世界の主人公でもなんでもない只のそこらにいるNPCだとしても、今起きている状況を素直に受け入れてしまう程に愚かではない!


「うおおお!」


 伊達に異世界と現実を並行しちゃいないんだ! 底辺の僕の底力! ありがたく受け取れえ!


「こ、こいつ!?」


「どうだ! 抜け出したぞ!」


「だが……もう遅い!」

 

 その時、強大なる炎の球体は凄まじい熱量を持って接近してきた。

 一か八かの覚悟で蒼剣を球体にぶつけてみようと試みようてした瞬間にとんでもない現象が視界に映る。


「はあはあ、良かった」


「あっ。マ、マリー!?」


 なんで……君はベットの中で意識不明の状態だったのに。


「馬鹿な。あの球体を一瞬で!?」


 かなり困惑している。となるとアルカディアはこうなる事を全く想像していなかったのか。

 それにしてもマリーの救援で危ない場面から切り抜けた! これには心から感謝しないと。


「私が休んでいる間に……とんでもない事になってるね」


 マリーも合流したので二体一の不利な戦闘からは切り抜けた。

 数に関してはこれでおあいこだ。


「奴等はミゾノグウジン教の幹部。目的は分からないけど、罪のない女性を執拗に狙っている」


「最低ね。どんな理由があれど女を狙うなんて、性格云々終わっている」


「くくっ。これはこれは……中々いや最高に魅力のある子が私の視界に現れるとは。非常に! 運が良い!!」


「マリー・トワイライト、これより遅れた分も含めて……この外道男を成敗する。ショウタ、力を貸して!」


「勿論だ!」


「ああ、なんて可憐なる少女だ」


 更にテンションがおかしくなってきたアルカディア。まだ、倒れるもしくは撤収する雰囲気にならない。

 

 マリーも復帰してきた今、ここからが正念場だ!

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