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エピソード12:当然のように参加させて貰います

「グランドオアシスの泉に向かう道中。突如現れた二人の男女。そこらの雑魚共は一掃し、目的地の陥落も夢ではないと叶う時に二人の者共が徹底交戦。中でも追い上げてきた男に対して攻撃に移ろうとしたものの、男が構える謎の剣に押され状況が劣勢に回った時に追い討ちを掛けるが如く治安団が加勢に入り作戦の続行は不可能と判断。そうして現在……貴様は任務を果たさなかったにも関わらず此処におめおめ俺様の前に舞い戻っていると?」


「はい、全て嘘偽りございません」


「ふっ。ふははははっ、これは笑いが止まらん!」


 高笑いは部屋の周辺に響くようにして蔓延。側近と思われし者達は王の笑いに対して一切の閉口を貫く。

 その理由は至極明快で突然の高笑いには良くない兆候を持っているから。

 長年王として国すべてを牛耳ろうとするオウジャの側近には全てお見通しである。

 やがて、甲高く響いた笑いが瞬時に消え去ると代わりに槍が飛び去る。

 その一瞬を見越して、寸での場面で首を僅かながら横に向けて回避行動を図るアビス。

 床に落ちた槍を見下げるも内心イライラが募るオウジャに振り返る。

 すると足を交差しながら人差し指で椅子の腕付近に設置されている背もたれの部分をコツコツと忙しなく音を鳴らす。

 この事から王は怒りの表情に満ちていた。直接部下として配属されていないアビス。

 態度に対して慎重にしつつ、次の言葉でどうにか丸め込もうとする作戦に手を伸ばす事に決めた。


「王よ。ひとまずはお怒りをお納め下さい」


「誰の原因でこうなったのか……なぁ、アビス?」


「今回の一件につきましては横槍が入ったのです。作戦が滞りなく順調に進んで見えていた矢先、私にとって障害として認識すべき相手が現れました。その青年はこれでもかと蒼く輝く蒼剣を武器とし、この世の武器を超越した力を所持。その者は蒼剣の使いに相応しき者かと」


「原因は蒼剣の使いにあったと? 強さにおいて問題ないお前がなんと無力な」


「実際にご覧になられてない以上私が無力に思われるのは必然でしょう」


「弱腰か。なら、俺様がお前の代わりに蒼剣の使いと合間見えるとしよう。国のトップとしいずれ世界全てを掌握せんとする俺様が」


 王の怒りは静まる。蒼剣の使いというワードに興味を覚えたオウジャは力任せに投げ飛ばした槍を拾い上げ、大きく掲げる。


「蒼剣の使いがどれ程の力か、俺様が直々に手合わせする! 者共よ。奴を捕らえ、この玉座に連れてこい! アビスでさえも手強いと作戦を断念した相手。相当な強さであると認識して挑ませて貰……いや、待てよ?」


 何かが脳裏をよぎったのか首の下に片手を置いて考えを張り巡らしていく。

 やがてオウジャは自然に笑い、言葉を改める。それは強者だけが集い、頂点に君臨した者のみが手にする賞金を掛けたコロシアム。

 物を目当てに争う人間同士の底力。王は深く頷き笑みを溢す。

 側近たる者達は口を一向に閉ざす。だが、しかしここに反対の意を唱える勇気ある者が前に出る。


「王よ、今は国の統合を目指すべきです。この時期にコロシアムという娯楽場を開催している間に、ゲネシスとスクラッシュの間で我々の国を打倒せんと準備を内々に進めている可能性も考慮して早急にーー」


「黙れ」


 槍は一瞬に飛んでいく。その矛先は意義を唱えた勇気ある者へ。

 避けなかった者も末路はなんと哀れであろう。心臓をダイレクトに直撃した彼の意識はもはや空の肉体。

 貫かれた槍は王の手元へ流れるように戻る。ここに居る誰もが思う恐怖心。

 アビスだけが冷静で居られた。他の者達は動揺を抑えきれていない。

 

「国の頂点に君臨する王に意見は不要。全て俺の言う通りに動けば問題は起きぬ。者共よ、床にひれ伏し血にまみれた遺体になりたくなければ従順である事だ。だが安心しろ、最後の果てまで俺様に付いてこられたのなら……貴様等が望む新世界を渇望出来るであろう。それに準じて職務を全うせよ」


「はっ!!」


「良い……では、者共には蒼剣の使いを俺が用意する舞台に勧誘しろ。無論奴を連れ込む方法は全く問わない。いずれにしても確実に連れ込め。でなければ、折角俺様の用意する景品が台無しになってしまうからな」


「御意!」


 散り散りに散らばる側近。程無くして静まり返った王の間に佇むのはオウジャとアビスと首を無くした身体だけ。


「それで、お前が用意する景品は?」


「景品の楽しみは最後まで取っておけ。ネタバラシなど私の趣味ではないからな……何なら貴様も参加してみるか? リベンジという名目の下にな」


「いや結構だ。目的も意義も見出だせない戯れ事に一切の興味はない」


「ふっ、そうか。ならば俺様だけが楽しみに待つとしよう。お前さえも苦戦した蒼剣の使いとやらに。まずはこの街に生きる民共の召集から始めるとしようか……やれやれ、今日は慌ただしい一日を送れそうだ! ふははははっ!」


 オウジャの嘲笑いにアビスは沈黙を貫く。そうして場が笑いに満たされた王の間を後にしたアビス。

 世界掌握を目標に掲げんとする王であるオウジャの獲物は蒼剣の使いショウタ・カンナヅキに定まった。

 王に目を付けられた獲物がどう立ち向かうか。当の本人は知る由もない事にアビスは堪らず不意に笑う。


「蒼剣の使い。お前が巡る障害にどう抗うか? 精々私を失望させない事だ」


 街の中へ。飢えを凌ぐ為に命懸けの商売を営む者やそれを見て馬鹿にしたかのような笑いで立ち去る者。

 様々な立場に置かされた者達が入り乱れた街。

 表向きは賑わった街にあろうが裏は富豪が貧乏を弱い者苛めをする非道な街の中へアビスは今日も紛れ込む。


※※※※


 遂に到着しました。砂漠で色々ともたついて時間も消費したけど。

 街の名前はオウジャ。東京ドームよりも恐らくは広大と思われる土地。

 皆の服装はおおよそサウジアラビアに住んでいるかのような物で男性は僕よりもずっしりとしているTシャツ。

 女性に至っては頭に布を被っているようにも見える。あれって、確かこっちの世界で言い表すとスカーフになるらしい。

 そんな場所に通行証があるとは言え、場違いな場所に来てしまった僕達。

 皆からの視線が別の意味で集まっている。


「ようやく来れた」


 今回の目的は無理矢理に誘拐されてしまった罪無き子供達の救出。

 決行するには昼を過ぎ去った夜辺りが頃合いとして図るべきだ。

 この時間帯には皆が寝静まっているだろう。


「これから準備を始めるわ。ショウタも手伝って」


「うん。勿論手伝うよ」


「ありがとう。それじゃあ、まず最初に」


 オウジャの門をくぐり抜けた先に張り出されている掲示板にはこの街の詳細のような物が書き綴られていた。

 レストランとか……さすがにないか。あるとしても宿屋とか武器屋とかお約束のRPGにはよくある建物。


「あっ、BARがあるんだ」


 カクテルとかが豊富にある店。僕は高校生だから未成年に分類されるので酒は飲めないし煙草も吸えない……筈だけど、今の僕ならいけるか? 

 ここは異世界だから警察も居ない訳だし。


「夜中に営業しているらしいよ。この街のお酒は大変美味しいって言われている以上、一度は飲んでみたいな」


「へ、へぇ。僕も飲んでみようかな」


 警察も居ないし大丈夫大丈夫。こういう挑戦って一度はやってみないと。そうだ、チャレンジチャレンジ!


「さぁ、行くよ。まずはあの子達が匿われている……この場所から」


 宮殿の近くに位置する留置所。マリーが指を指す場所に子供達が匿われているのなら、用心して行かなければならない。

 そこには何百人者兵士達が巡回しているのだから。

 現に歩いている最中にもチラホラと警戒している者達が徘徊しているように思える。


「平然としていて。余り迂闊な行動を起こすと止められかねないから」


「わ、分かってる」


 街の中の雰囲気は賑わっているように見えて賑わっていない。

 商店街らしき場所。売人から物を購入する消費者の光景は至って普通だ。

 しかし中には一部の売人に罵倒を浴びせ、最悪暴力を振るう者までチラホラ。

 そして極めつけには良い大人が金を是が非でも受け取る為に富豪の靴を舐めるという悲惨な光景。

 暴力を過激に振るっている事に僕は我慢ならずに突っ込もうとしたが瞬時に腕を掴まえられた。

 あの中に入るなって言いたいのか。あんな弱い者いじめをする光景を放置しろと?

 

「お願い。今だけは私の指示に従って」


「くっ……」

 

 耐えるしかないのか。あの悲惨な光景を……この街はなんて腐りきっているんだ。

 所々街の外には服もまともに着ているかどうか怪しい子供も居るみたいだし。

 どうやら、この街の王とやらは街全体の経済に力を入れてないようだ。

 気持ちが煮え繰り返っていた。我慢ならない気持ちを何とか抑え殺して、どうにか到着した宮殿。

 眩しい黄金。金閣寺のようなキラキラと落ち着かない宮殿に人々は盛大に集う。

 何か行事でも始まるのだろうか? 


「人が沢山集まって来ている」


「発表かな? ちょっと聞いてくる」


 近くの人に理由を聞いてみた所、何やら王であるオウジャ・デッキから重大な発表があるとの事。

 早速世界その物を牛耳ろうとする王の顔を拝めるのか。これは良い機会だ。

 しばらく黙って待つこと数分。赤いローブを特徴とし金色の鎧を纏う金髪の男性が宮殿のロビーから正体を現す。

 遠くてしっかりとは見えないが王の雰囲気は確かにある。威厳としていて尚且つ油断ならないオーラが正にそれであった。

 ひんやりと静まる宮殿内にて王は高らかな声で発言する。


「民共よ、今日は俺様の一声でよくぞ集まった! 俺様が呼んだ理由は至極端的に済ませるとすれば人間と人間が己の人生を左右せんとする試合。そう、それは即ちコロシアム! 力を求める強者が集う舞台を王である俺様が主催で開催する! 賞金ははっきりと言わんがたんまりとくれてやる! そして勝者のみが自由に管理出来る上物もな!」


 あ、あれは!? 子供達じゃないか! 全員で四人か……あいつ、幼い子供達を勝手に誘拐した挙げ句に景品として何処ぞか知らない野郎に売り付ける算段か。 


「パーシー、トビー、ダクソン、メリル!!」


 しかもマリーが助けようとしている子供達か。あの男、景品を子供にするなんて非道過ぎる。

 王としての自覚はないのかよ!


「力で支配するオウジャ・デッキ。奴は穏健を貫く父を内密に暗殺した後に王としてのしあがった。王の理想主義は弱者を挫き、強者だけが散らばる弱肉強者の国家。だが、今の王は蒼剣の使いにご執心になった」


 この声はアビスか!? けど、どれだけ辺りを見回してもアビスが見当たらない。一体どこに潜んでいる……隠れていないで出てこい!


「王が用意する泥まみれの舞台にどう対処しどう掴むのか。お前の活躍に期待させて貰うぞ、蒼剣の使い」 


 どっかに消えたのか、声が消え去った。マリーにも聞こえているのかそれとなく顔を横に向ける。


「あれ?」


「どうかした?」


「別に何でも」

 

 視線は王に向けていた。となると聞こえていたのは僕だけか。いや……今はこの王の話に耳を傾けるべきだ。

 上物が子供達として捧げられる舞台。参加者は誰でも良いみたいだから絶対に参加して助け出さないと。


「マリー、僕はコロシアムとやらに参加する。あの子供達は必ず救ってみせるから」 


「ショウタ……」


 左手がぎゅっと紡がれる。ほんのりと暖かいマリーの掌が重なりあって。

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