始まりの始まり
いつからだろう…ボクがこの世界以外から来た人間だと理解したのは。
いつからだろう…ボクがこの世界の理から外れた人間だと理解したのは。
いつからだろう…ボクがこの世界から愛された人間だと理解したのは。
ボクの名前はメルト。
メルト・サザ・ブリューク。
6歳。
本来...と言うか、生前……いや、死んだ記憶はないんだよな…………まぁいいや。
この世界に来る前のボクは20は超えてた。……はず。
体は子供、頭脳はホニャララを地でやっています。
まぁ名探偵ほど頭がいいとは思わないけどね!
前の世界の知識は思い出せるけど、僕個人の記憶はあまり無い。
名前も、家族構成も何も思い出せない。
ただ、分かるのは今現在の年齢とかけ離れた精神年齢だってことだけ...
下じゃないよ?上だよ?
前の世界の記憶があっても、今の生活に支障はない。
生まれた時からこの生活だったし、慣れたもんですよ。ふふん!
ただひとつだけ不満があるとすれば、ご飯が冷たい事...
冷えて固いパン、冷えて噛みきれない肉、極めつけがスープ!!!冷製の!!!
温かいごはんが恋しいです...
バルガルリア大陸の中央にそびえる大霊峰エルネアリス山。
その大霊峰から南に広がるアルスイール王国。
その国の北端に位置する男爵領、それが僕の家の領地ブリューク男爵領。
北に大霊峰を背負い、南東から東にかけてサラサン辺境伯領があり、南にライズ湖、西に灰龍の領域、南西に紫龍の領域が広がっている。
なんというか、四方を湖と強者に囲まれてしまっているせいでうちの男爵領は凄く狭い。
そう、凄く。
おかげで自給率が他の領地に比べて著しく低くなっている。
しかし、そんな我がブリューク男爵領には大霊峰エルネアリス内部に広がるダンジョンの入口があるのだ!
その名も『大霊峰』!!!
……まんまやん…
そのダンジョンの入口の管理がブリューク男爵当主の最大の仕事なのである。
『大霊峰』は通常のダンジョンと異なり上へ上へと登っていく。
未だ未踏で数多くの冒険者や王国騎士団が挑戦しに来る。
東の帝国と西の皇国からも来ることがあるくらいだ。
つまり、自然と冒険者向けの宿屋や食事処が多くなる。
農地なんてのは必要最低限の広さしかない。
さて、『大霊峰』だが、伝承では最上階にどんな願いも叶えてくれる女神様がいるらしい。
……未踏なのになぜ最上階の情報が...?
なんて思わなくもないが、その未確認情報のおかげでうちの領地は生きて行けてるので、気にしない事にする。
そんな男爵領で特に波も風も起きないまま10年の時が経った。