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ロゼの想い

「皆んなは背後で待機して。手を出さないで欲しい」


ロゼは部屋に入る前三人に釘を刺した。


「彼が私に攻撃してきても彼には攻撃しないで」


「彼がロゼの話を聞かなかったらどうするの?」


エルグレドは正気ではないようだ。

もしかしたら全く話が通じないかも知れない。


「これは私のわがままなの。ただやり忘れたことを成し遂げる為に私は来た」


扉に手を置きロゼは眼を閉じた。


「これで最後にする。彼が私を拒絶して私を受け入れなくてもいいの。だからダメだったらすぐ脱出して欲しい」


「もちろんお前も連れて逃げるぞ?」


ルシフェルは念を押した。

ロゼは笑って頷いた。


「ええ。だから私が彼の下へ近づけるように、みんなの力を貸してくれる?」


三人は頷いた。


(私も、本当愛されてるのね)


何で今まで気がつかなかったんだろうとロゼは思う。

自分だってこんなにも周りから思われていたのに。

ロゼは今までファイ以外の人間を心から信用できなかった。

どこかで壁を作り公平な取引だからと一線を引いてるつもりでいた。

だってもし信じて裏切られた時。自分は()()酷く傷つく。

そうやってエルグレドにさえ壁を作った。

だけど皆、ロゼの無事を祈ってくれる。

いや、例えそれが嘘であったとしても構わなかったのだ。


(私も・・・私が彼等を愛していればいい)


ふとエレナの顔が頭をよぎる。

自分は愛されていないと言いながら彼女は彼等を愛していた。あの強い眼差し。


「さぁ。行くわよ」


どうか力を貸して下さい。

ロゼはそう祈りながらその扉を開けた。



****






部屋に入ると壇上の前の椅子に座っている男と見覚えのない女性が彼を背後から抱きしめていた。


「随分と遅かったのですねロゼ様。待ちくたびれてしまいましたわ」


女はそう言ってエルグレドの頬を愛おしそうに撫でている。ロゼはダガーの柄をこれでもかというほど握りしめた。


「手を離して貰えるかしら?彼は私の婚約者なのだけど?」


「そうでしたわね?でも貴方が消えてくれればそれは無かったことになりますわ?そして彼は私の物になる」


この女は誰だろう。ロゼが知らぬ間にエルグレドに近づき操ったというのだろうか?


「お可哀相なエルグレド様。ロゼ様。貴方が彼に渡した物はしっかりと勤めを果たしましたわよ?」


女はエルグレドの左手を撫でた。

そこにはロゼが渡した指輪は無かった。


「ただその代償に壊れてしまいましたが。指輪も、彼も」


まさか。


「陛下も実の息子に殺されたのなら本望でしょう?」


ロゼの体から凄まじい魔力が放出される。

怒りが足の先から這い上がってくるようだ。


「全て貴方が仕組んだのね?」


「全てではありませんわ。私は少しお力をお貸ししただけ。皆勝手に動いたのです」


彼女がエルグレドの頬に唇を寄せる。

ロゼはその激情のまま、前に一歩踏み出した。


「ロゼ。無闇に飛び込むな。何をしてくるかまだ分からない」


「さぁエルグレド様。ロゼ様が来ましたよ?眼を開けて下さいませ」


ルシフェルの忠告と同時に女がエルグレドに囁いた。

エルグレドはゆっくりと眼を開け、その瞳にロゼを映した。そしてー。



「ロゼ・・・」



四人は眼を開いて固まった。

彼の身体には無数の黒い痣が浮かび上がっている。

だがそれよりも何よりも・・・・。



「ロゼ。会いたかった・・・ずっと」



彼は笑っていた。

しかしその笑みはロゼが知っている彼の物ではなかった。

ネットリと絡みつくような妖艶で美しい微笑み。



「ロゼ!加勢する!」



ラウルがロゼに近寄った瞬間。エルグレドの足元から禍々しい黒い渦が物凄い勢いで湧き上がった。



「「「!!!!!」」」



それはあっという間に部屋に広がって四人に襲いかかってくる。

ルシフェルは咄嗟に詠唱して光の壁を作り出した。



「おいおいおいおい!これもう無理じゃねぇか?」



ギシギシと結界が音を立てて崩れそうだ。

その間に詠唱し終えたロゼの疾風がその闇を皆の前から吹き消した。



「お前は俺だけの物だ。そうだろう?」



未だ闇の渦が晴れ止まぬ中、エルグレドは平然と話しかけてきた。すごい魔力だ。彼の中にこれほどの魔力が存在したとは。



「さぁ、おいでロゼ。俺と一緒に行こう」



不思議な感覚だった。

これはロゼの知るエルグレドではない。ないのに・・・。



「ええ。今行くわ。エルグレド」



それは彼の本心のような気がした。

それはロゼがそうあって欲しいと望んでいただけかも知れないが。

ロゼは結界から飛び出した。

すかさず仲間たちがロゼに補助魔法を唱える。



(これはもしかしたらダメかも知れない)



彼の痣はかなり広がっている。

もう正気を取り戻さないかも知れない。

それでもいい。

ロゼはただ彼を目指して駆けていく。

背後からキラキラとした光がついてきた。



[一気に飛ぶわよ!]



それはファイの近くにいる妖精だった。

彼女は無事だろうか。



[チャンスは一度だけよ?それ以上はここにいられない]



充分だ。

彼女達がいなくてもきっとそうに違い無かった。


ロゼは高く跳躍し、舞い上がった。

そのままエルグレドを目指して飛び込んで行く。


彼は大きく手を広げた。ロゼを抱きしめる為に。彼に飛び込みながらロゼはエルグレドの顔を両手で挟み眼と眼を合わせた。



「貴方に言い忘れた事があるの」



ロゼはそう言って彼の唇に自分の唇を押し当てた。

初めて自分からしたキス。




「貴方を、愛しているわ。」




その瞬間。

黒い闇が一瞬にして晴れた。




三人がホッとして先に見える二人に目を向けて

しかし皆何が起きたのか理解出来なかった。



「ロ・・・・・・・ゼ・・?」



エルグレドの口からロゼの名前が紡ぎ出された。

彼は信じられないように自分の手元を見る。

そこには剣の柄を握っている自分の手が見えた。


訳がわからず剣を引くと同時にルシフェルの叫び声がエルグレドの鼓膜を振動させた。



「馬鹿やろう!!抜くなぁぁぁぁぁ!!」



ロゼの身体がエルグレドから離れていく。


エルグレドは目の前でひどくゆっくりと倒れていくロゼを立ち尽くしたまま見下ろした。


彼女の血がものすごい勢いで吹き出し床に投げ出された身体から溢れている。



「あ、ああああああ!嘘。嘘嘘嘘!!」



ミイルは絶叫した。

彼女はまだ事態が受け入れられず動く事が出来ない。



「ロゼぇぇぇぇぇぇ!!」



ラウルが一拍遅れて理解したが彼も動かなかった。

誰よりも早く床に投げ出されたロゼを抱え上げたのはエルグレドだった。



「あはっ・・・あははははははははははははは!!」



突然アルドは狂ったように笑い出した。

やっとだ。やっとロゼを消す事が出来た達成感にアルドは震えた。


三人がエルグレド達目掛けて飛び込んでくる。

アルドは手をかざし、その手から真っ黒い蛇の形をした生き物を呼び出した。


それは三人の身体に巻きつき拘束する。



「もう貴方達には用はないわ。消えて頂戴」



笑いながら三人を見ていたアルドは、ふと未だ跪きロゼを抱えているエルグレドに気がついた。


「エルグレド様。もうそれは動きませんわ、捨て置きましょう?」


そんなアルドの言葉にエルグレドは反応しない。

アルドはそれに苛立ちを覚えた。



「いつまでそんな物を抱えているのです?分かっているでしょう?貴方が殺したのです」



それでもエルグレドはロゼを手離そうとしなかった。

そんな彼にアルドは我慢出来ず叫び出した。



「なぜ・・何故いつまでもそんなモノ大事そうに抱えているのですか!!そう?・・・姿が残っているからいけないんだわ・・・私が今すぐその女の姿を跡形もなく消して差し上げます!!」



アルドの手から黒い炎が立ち上がる。

彼女がロゼに手を伸ばしたと同時、エルグレドの剣がアルドの身体を貫いた。



「・・・・・・・・な、ん、で・・」



「お前の望みを叶えることは出来ない」



その瞳はしっかりとアルドを映していた。

アルドの瞳から涙が溢れおちる。

そして醜く笑いながらエルグレドを罵った。



「そう?でも貴方の望みも潰えたはね?だって貴方自身の手で壊してしまったもの・・・はっははははは!!」



エルグレドの剣は確実にロゼの急所。心臓を貫いた。

その瞬間ロゼは絶命した。



「そのまま悲しみの中生きるがいいわ!私は後悔してない!絶対に・・・後悔なんかするものか!!」



エルグレドの剣が光出す。

彼はアルドの言葉には何も返さずただ一言だけ呟いた。



「ならば後は苦しみなく、安らかに眠れアルド・ラズ」



アルドの身体が光に包まれた。



「お前に"祝福"を与えよう」



光が強くなり彼女の身体から黒い渦がかき消えた。

アルドは両眼を閉じる。



そしてそれは、今までで一番穏やかなアルドの表情だった。


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