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揺れる宮廷

最近ロゼには悩みがある。


「おはようエルグレド」


「ああ、おはよう」


最近ロゼはガルドエルムに戻って来るとエルグレドの屋敷で寝泊まりしている。

クライスもロゼが居る事に文句を言わなくなっている。


「今日もゆっくり出て行くの?」


「そうだな。急ぐ理由が無いからな」


エルグレドは最近騎士団に顔を出していない。

まぁ普段騎士団は鍛錬ぐらいしか集まってやる事がないらしいので問題はないようだが。


「じゃあ少しだけ散歩しない?食事の後・・・」


ロゼがそう誘うとエルグレドはかまわないと頷いた。

2人は約束通り支度をして外に出た。

エルグレドはロゼの手を握ると歩き出した。


「ここは夏になると綺麗な花が咲くのね」


ファイズ家の庭は広い。ゆっくり見て回れば結構時間を潰せる。


「ロゼは各地を旅してるのだろ?色々な花を見てきたんじゃないか?」


「そうね〜確かに珍しい植物を見る機会はあるかもね」


風が気持ちいい。

いや、それはいい。


「そうだ!たまには私の鍛錬に付き合ってよ!」


ロゼは正面に立ってエルグレドを下から覗きこんだ。

何を言っているんだと顔が言っている。


「もちろん刃のついてない棒にしてね?か弱い女の子なんだから」


眉を寄せているがそれも了承してくれる。

エルグレドはあの日から出来る限り空いた時間はロゼと居てくれる。

こうやって2人で手を繋ぎ歩くぐらいは普通に出来るようになった・・・・だが。


「そろそろ戻るぞ。支度しないといけない」


そう言ってロゼの頭を撫で手を繋いだまま来た道を戻って行く。


(・・・・・・・やっぱり)


ロゼは手を引くエルグレドの背中をチラリと見上げる。

エルグレドはロゼに優しく接してくれる。

手も繋いでくれるし頭を撫でたり軽く抱き寄せる時もある。ただ。


(キス・・・しなくなった)


あの事件の日の夜以来、エルグレドは前ほどロゼに触れなくなった。恐らく婚約の儀が済まされたからだろう。


(まぁ確かに私が言い出した事だったけど・・・)


エルグレドが急にロゼにキスする様になったのも、ロゼの人前で急にするのは嫌だという訴えからだった。


(だからって必要なくなったら急にしなくなるとか・・・真面目か!)


極端すぎるとロゼは頭を痛める。

正直に言うとロゼは少し物足りなかった。


(いや!別にいいのよ?嫌われたのではないし・・・)


ロゼは冒険者としての腕は一流だ。しかし恋愛ごとについては全くと言っていいほど初心者なのだ。


(いつもこういうのは他人事だったからなぁ。もう少し興味を持つべきだったかしら?)


「まだ、私は行かない方がいいわよね?」


あれ以来ロゼは宮廷に行っていない。

エルグレドはそれに頷く。


「何か用事があるなら俺が済ませておくが?」


少しだけエルグレドの纏う空気が変わった気がしてロゼはその申し出には首を振った。


「今のところ大丈夫よ。でも頼む事もあるかもしれないからその時はゼイルに渡してもらってもいいかしら?」


すでにリュカの事は知っているのでそれにはエルグレドも頷いた。


「わかった。宮廷にはもう少したったら2人で行けばいい」


屋敷に戻って来ると2人はそれぞれの部屋へ戻っていく。

ロゼは部屋に戻って椅子に腰掛ける。

しばし目をつむり沈黙する。


(っていうかなんなの私!?欲求不満か!!)


ゴスっと凄い音を立てて机に頭を打ち付ける。

その音に驚いて侍女が慌てて部屋に入ってきた。


「ロゼ様!大丈夫ですか?!」


あわあわとロゼの様子を心配そうに見つめている。

ロゼはその姿勢のまま動かない。

しばらくしてロゼは唸り声の様な声を出した。


「私って女としての魅力が足りないのかしら・・・」


侍女はピタリと動きを止める。

珍しく弱気なロゼに侍女は優しく声をかけた。


「男の方というのは本当に不器用な方ばかりですよね」


そっと両肩に手を置き身体を起こされる。

引き出しからブラシを取り出しロゼの髪をときだした。


「エルグレド様に何か言われたのですか?」


「何も」とロゼは答える。侍女は「そうですか」とそのまま髪をいじっている。


「エルグレド様は今までずっとお一人でした」


ここに来てからずっと。と聞いてロゼはそうだろうか?と不思議に思った。


「ベル様も私達もそして恐らく騎士団の方々も皆エルグレド様に愛情を持っております。しかし届かないのです。」


彼がここに来た経緯を考えればそれは当然なのかもしれない。ロゼは詳しい事は教えられてないが彼はこの家の子供ではない。


「誰にも甘えた事がない方なのです。でもロゼ様には甘えている様な気がします」


そんな事はない。甘やかされているのは自分の方だと思う。


「恐らくそれはロゼ様がエルグレド様が来て欲しいと思う所まで近づいて行ったからではないでしょうか?」


鏡の中で綺麗に髪を結われている自分を眺める。


「きっと貴方を失いたくないのです。どうかロゼ様。御身を大切にして下さいませ」


出来上がった髪型を見て自分の顔をみる。


「うん。やっぱり私って可愛いわぁ」


侍女はふふふと笑った。


「それでこそロゼ様ですわ!」


2人は朝の陽の差し込む部屋で笑いあった。




****




「エルグレド様!」


背後から外交士官と執務士官が走ってくる。

何やら慌てた様子に只事では無さそうだと足を止めた。


「どうした。そんなに慌てて」


「東のパラドレア国が戦争の準備をしていると情報が入ってきました」


「それは確かか?」


パラドレアはファレンガイヤ の北東にある国でガルドエルムとは大きな大河を挟んだ隣接する国である。


「全く毎回毎回世代交代のたびに攻め込まれて迷惑この上ない」


その国とは何度も戦争を経験している。

しかしいつもこちらの国が勝利しその度に賠償金の代わりに領土を奪う事は見逃してきた。


「しかも悪い事に今バルド様は病に臥せっておいでになる」


そう。最近は体調を崩す事が多く重い病ではないかと噂されていた。


「指揮は誰が取ることになりそうだ?」


「アストラ様が・・・バルド様が次の継承者として考えている方です」


アストラ・バードル。バードル家長男である。


「そうだな。では騎士団には俺が伝える。すぐに動けるよう準備しなければ・・・」


2人は何か言いたげにエルグレドを見たがそれ以上何も言わなかった。


そもそもガルドエルムの王は必ずしも王自らの子供が継ぐというわけではない。

それは妻を1人しか娶ることが出来ないという事も理由のひとつだが何よりも聖魔法の"祝福"が使える者が王もしくは王妃でなければならないからだ。

その為にバードル家は存在する。

自分の子供もしくは王の資質がある者を養子として迎え準備させるのが使命であり存在意義である。

長男のアストラの聖魔力はかなり強い。

しかし政務はどうかと言われれば微妙なのだ。


「あの家は兄弟みな仲が悪い。協力はしないでしょうな」


あの家の中で一番頭が切れるのはリュカである。

しかし彼は異端視扱いされている為論外であろう。

本人も決して口は出して来まい。


「何事も起こらねばいいのだが」


心の隅で思った事を2人は同時に気づいたのか苦い顔に変えた。そして2人はいつも疑問に思っていた。

()()肖像画を見れば誰にだってわかる。

しかしバルドはあれを張り替えなかった。

今の自分を飾ればきっと気づいたものは少なかったはずなのに。

もしくはエルグレドを自分の膝下に置かなければよかったのだ。しかしバルドはどちらも選ばず堂々とエルグレドを竜騎士にした。

ちゃんと調べれば彼にも素質があるかもしれないのに。

正直王の考えが全く分からなかったがそれを口にするものは誰1人としていなかった。


(あの方が王になれば良い国になるだろうに)


2人は考えてもしょうがない事を考えてまたお互い頷いてからそれぞれ今すべき事をしに二手に分かれたのだった。




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