ベルグレドの疑問
「あー最近暇ぁー!」
ミイルは食堂で行儀悪く突っ伏している。
ラウルはアハハと笑って運ばれてきた器を差し出した。
以前に比べロゼからの依頼が減ったのである。
2人はその仕事をずっとしていた為今は仕事が殆ど無い。
「まぁこの時期は仕事も減るしお金にも困ってないし、いいんじゃない?たまにはゆっくりしてても」
落ち着きなく身体を揺らしていたミイルは「えー?」と不満そうだ。元気過ぎる。
「ロゼ。このまま結婚しちゃうのかなぁ」
ラウルが思わず飲み物を吹き出す。
ミイルは汚いなぁとラウルを睨んだ。
「いや!だって変なこと言うから!」
あのロゼだよ?とラウルが言うとミイルは不思議な顔をした。
「なんで?人間なんだから子供は出来るでしょ?問題があるの?」
どんなに強い力があっても身体は人間である。と、ミイルは言いたいらしい。
「コルボ族は番を見つけた時が繁殖期になるから分かりやすいっちゃ分かりやすいよね。でも人間同士って相性が良くてもどうにもならない事があるからなぁ」
「そうだねぇー実際コルボ族の番が人間だったことがあるらしいんだけど大変らしいね」
ミイルは顔を顰める。
多種族同士の夫婦になるのはかなりリスクが伴う。
「どう大変なの?」
何も考えず聞いてしまったラウルをミイルはジト目で睨んでいる。
「ラウルってたまに無神経だよね」
え!?と慌てているラウルにそれでもちゃんと説明してあげる。
「だから!コルボ同士なら相性があえば同時に発情期に入るの!」
ハッ!としてライルは顔を赤らめる。
「ご、ごめんミイル・・・考えが足りて無くて・・」
慌てふためいてしまったラウルに特に怒っていなかったミイルは分かってるよと許してあげる。
「これがルシフェルだったらぶっ飛ばすけどね〜」
彼は寧ろ分かっていて言ってきそうだと2人して頷いたのである。
「ぶえっくし!!」
「おい。汚い」
一方勝手に納得されていたルシフェルはベルグレドの領地に来ていた。
「酷え奴だなぁ少しは心配しろよ」
「風邪か?うつすなよ」
絶対零度の対応である。ルシフェルはそれは全く気にせず出された紅茶を口にした。
「あー懐かしい味だなぁ」
ルシフェルのつぶやきにベルグレドは首を傾げた。
それには答えず辺りを見回してルシフェルは感心した。
「だいぶいい感じに仕上がってきたな」
「何のことだ?」
ベルグレドも周りを見渡すが特に何もない、ように見える。ルシフェルはハッと笑っておもむろに手をベルグレドの目に押しつけてきた。
「おい!」
ギョッとして後退ると動くなと止められる。
「力が有るのに見えないのは見ようとしていないからだ」
そう。ベルグレドには微かにしか見えていなかった。
「お前はもう少し外に興味を持った方がいい」
見えない?本当は見えるのか?と思った途端に眼の周りが急に暖かくなる。ルシフェルが手を離したので眼をそっと開くとその光景にギョッと固まった。
[あー!べるがこっちにきがついたぁー!]
[すごいすごい!どうやったの?るしぃ!]
[みてみてべるぐれどーわたしおおきくなったー!]
その部屋の中には大量の妖精達が好き勝手に動き回っている。ベルグレドは唖然とした。
「な、何だこれ・・・」
「言っただろうが。お前の意思とは関係無いって」
ダービィディラル。それは彼の特異体質である。
「さぁロゼのお使いついでに俺の仕事もちょっと手伝ってもらうぞ?お互い己の職務を全うしようじゃないか!」
「何がお互いだ!得するのはあんただけだろうが!」
ぎゃんぎゃん言い合ってる2人の間に笑いながらブラドが入ってくる。
「ルシフェル様今日はこれが目的だったのでは?」
ブラドの箱を受け取るとルシフェルは溜息をついた。
「全くロゼも借りといて取りに来いとは人使いが荒いぜ」
「それ、あんたのだったのか?」
それは魔力属性を調べた時の物だ。
「まぁな役に立っただろ?」
確かに役に立った。ベルグレドは興味が湧いて聞いてみた。
「ちょっと気になったことがあるんだけど」
「安くしといてやる」
それを無視して話を続ける。
「聖魔法を持っていると水晶が光るんだよな?」
「まぁ人によって輝き方は様々だが・・・そうだ。でもお前は聖属性じゃないよな?」
「いや、俺じゃないんだけど・・・その光の中に・・・別の何かが混ざることってあるか?」
「別の何か?別の光じゃなくて?」
まぁ二種ぐらい混じることは良くあるので、その事かと聞いてみる。
「いや、全く別の・・・例えば黒とか」
そう言われルシフェルは納得いったように「ああ!」と返事をした。
「あるぞ。まぁ滅多にお目にかかれないがな」
そんなルシフェルの調子に少し肩の力を抜いたベルグレドはまだ話を続けるルシフェルに耳を傾けた。
「魔力の属性は本来相反すると使えないが同時に使える者がいるのさ」
「それは凄いな・・・」
ロゼに扱かれ少しは魔力の使い方を学んだベルグレドは今なら少しはその凄さが分かる。
「それにしてもどこでそんな物、知ったんだ?ここにはかなり貴重な文献があると聞いてはいたが」
ルシフェルは関心したように聞いてくる。
「いや、何だったかな・・・そんな凄い事なのか?」
「まずお目にかかる事がないからだよ」
は?とベルグレドは聞き返した。
「光に黒い色が混ざっていたならそれは黒魔術だ。そいつは間違いなく人間じゃなく魔人だ」
へぇ。とベルグレドは興味なさげに呟いた。
その態度にコイツ自分から聞いてきたくせにと呆れた顔をする。ルシフェルはこの時見落としたのだ。ベルグレドの微かな口の震えを。




