突然の婚約
その日は彼女が学んでいた魔術学園の卒業日だった。
彼女の名はロゼ。少しクセのある紅い髪とエメナルドグリーンの瞳が特徴的な少女はたった今告げられた内容に、呆然と立ち尽くしていた。
「竜騎士長エルグレド・ファイズ。彼女をお前の婚約者として迎え入れよ」
ロゼの隣で同じく何も知らずに呼び出された青年は一瞬返答に躊躇いをみせたように見えたが、直ぐに立て直した。
「仰せのままに」
いやいや、そこは問い正すか断るかしてくれよ。
しかしロゼは、眩暈を覚えながらも致し方ないかと思い直した。
なんと言っても今彼に無茶な命令をしたのは、彼の主人であるガルドエルム国王バルド・アグレイナである。
「彼女は平民だが素晴らしい魔力の持ち主であり、稀有な存在だとイントレンスの巫女からもお墨付きだ。まぁ今すぐ婚姻を交わせとは言わん。しばらくはお互いを知るため親交を深めるがいいだろう」
なるほど。
ロゼはその言葉を聞いて、渋々であるが無言のまま目の前の王を見た。見つめ返してきた瞳は、ロゼの了承の意を受け取り柔らかく目を細めたのだった。
初投稿です。
つたない文章ですがお付き合い頂けたら嬉しいです。