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3.緩やかに成長している

小学一年辺りの息子さん。先生たちには感謝しかない。

環境の変化は難しい。

 それまで小さい人との外食は正直楽しくなかった。

 その時の気分で何を食べるかわからない。小さい姫みたいにフライドポテトだけ出しておけばいいというものではなかった。

 少しでもつまらなければ騒ぎ出し、全く落ち着いて食べられない。

 しかもほとんど食べないことも多々あった。それでいて後でおなかがすいたと言い出すのだ。

 だけど。

 小学校入学前、二人で出かけることがありちょうど昼だったのでラーメン屋に入った。

 さすがにそのままでは熱くて食べられなさそうだったから、小さい器を借りてそちらに麺を移したりしたが小さい人は穏やかにラーメンを食べた。

 離れた席に小さい人と似たような歳の子がお母さんと座った。その子と同じように、小さい人は当り前のように落ち着いてラーメンを食べたのだ。

 二人で穏やかに外食できたことが嬉しかった。

 ゆっくりとだが確実に小さい人は成長していた。


「たらのめ(仮称)」のお泊りも、義母の家のお泊りも喜んで行った。

 どうしてもだめな時はうずくまって「見ないで! 見ないで!」と全てを拒絶することもあったが、基本は人懐っこい子どもだった。


 小学校入学前にしなければいけないのは就学相談だけではなかった。

 同市に情緒障害学級は一箇所しかなく、うちからは遠いところにあった。

 登下校はスクールバスに乗せてもらえたが、放課後どうしたらいいかわからない。

 学童は私が働いていなければ行かせられないし、その障害者枠は本当に狭き門だった。

「たらのめ」のママさんから児童デイサービスというのを教えてもらい、小さい人と姫と共に何箇所か見学に行った。

 どうにか通える場所は見つかったが、最初の頃は週一でしか通えなかった。それでも行ける場所があるのはありがたかった。


 小学校のクラスは少人数制でとてもありがたかった。

 小さい人は加減がうまくできず、友達に抱きついたりして怪我をさせそうになる場面もあった。

 着替えやお風呂はもうほぼ手伝いをしなくても一人でできるようになっていた。

 運動は好きだがバランスが悪く、よくいろんな場所にぶつかったりした。手先は不器用だった。

 運動会の前になると全体練習がある。それは普通学級の子たちに混じってしなければいけない。

 小さい人は荒れた。それは本番まで誰も危なくて近づけなくなるほどだった。

 6年生の修学旅行に向けて、小さい人のクラスでは毎年宿泊研修というのがあった。

 小学一年の秋宿泊研修に参加した小さい人は楽しく過ごせたようだった。

 先生には「小さい人すごいです! 自分で着替えも上手にできるし、自分で身体も洗えるなんて!」と感動された。

 情緒障害学級にはいろんな子がいる。知的障害学級と違いIQは普通かそれ以上の子達が通っているが、できるできないのバランスが非常に悪い。椅子に腰掛けていられない。暴れてしまう。常に身体が揺れている。日常生活に必要な行動が不器用で非常に時間がかかる。本当にさまざまだった。

 それでも普通学級に通うよりは穏やかに過ごせるから。

 勉強がしたくない小さい人を宥めて先生たちはよくやってくれていた。

 小さい人はもう幼稚園の時のことを言わなくなった。

 しかし小さい人にとって1年は短かったようだった。

 変化を受け入れるのに時間がかかるのは変わらない。それは小さい人の特性だからしかたがない。

 もう少し1年が長ければいいのにと私は思った。

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