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褐色少女の独立戦争  作者: mashinovel
序章  独立闘争の始まり
3/63

2. 大戦勃発

 あの日、ラジオから声が聞こえてきた。

 戦いの始まりを告げたその声を、私は忘れない。

 ナシカの遺体は農業用水が流れるコンクリート製側溝の中で発見された。

 5歳の可愛らしい褐色肌少女の遺体は、無残にも徹底的に痛めつけられ、辱められていた。

 顔面には猛烈な殴打が加えられた痕跡があり、頭蓋は粉砕されほとんど原型を留めていない。

 くりっとした大きな緋色の瞳は破裂して無くなり、双眸は空虚な穴と化していた。

 小さな身体には無数の刺し傷と打撃痕があり、ナイフのようなもので滅多刺しにした上に、何度も執拗に蹴られたことが伺えた。

 そして……明らかに激しい性的暴行を受けた形跡もあった。


 早朝の見回り当番だった農園労働者の中年男性・ラルビは、最初それが遺体だとは気付かなかった。

 何かゴミが打ち捨てられているのかと思い近づくと、それが親友で労働者の番頭役であるゲイル・ベルカセムの幼い娘の亡骸だと分かるや、血相を変えて労働者用集合団地に転がるように駆け戻ってきたのだ。


 丁度、労働者用食堂で妻や長女のサーラと朝食を摂っていたゲイルは、ラルビの知らせを聞くや否や、すぐさま現場に向かった。妻はその場で気を失い、サーラと食堂にいた大勢のダニーク人労働者たちはゲイルの後を追いかけた。


 サーラは全力疾走する父の背中を追いかけながら、ラルビの知らせを信じられずにいた。



 そんな……嘘よ……

 ナシカが……彼女が死ぬなんて……ありえない。

 お願い神様、嘘だと言って! 



 サーラと労働者たちが現場に着くと、ゲイルとラルビがナシカの遺体を側溝から引き揚げていた。

 その無残な姿に皆口元を押さえ、中には耐え切れず朝食を吐き出す者さえいた。


 サーラは物言わぬ妹の遺体に縋り付き、ひたすら愛する者の名前を叫んだ。

 

「ナシカ!!ナシカ!!!どうして!どうして!?」


 両目から涙が溢れ出るのを止められない。

 最愛の妹の亡骸を抱きかかえながら、サーラは号泣した。

 ゲイルは両目を見開き、両の拳は固く握りしめられ、血が滲んでいた。

 その緋色の瞳は紅みを帯び、激しい怒りが現れている。


 集まった労働者仲間たちは、そんな親子に掛けるべき言葉が見つからずにいた。

 女たちはサーラの泣き声につられて涙を流し、男たちはゲイルの怒りに合わせるかのように憤怒を滾らせた。


 しばらくして、事情を知った農園労働者互助会が通報し、現場に救急車と地元警察が到着したが、スタントール人の救急隊員は、ナシカの遺体を一瞥しただけで搬送を拒否した。


「これはもう明らかに死んでるな。病院に連れて行ったところで無駄だろう。」


 そんな言葉をゲイルとサーラに投げつけた。


「なんですって!?今、なんて言った!!」


 サーラは怒りのあまり、その救急隊員に襲い掛かろうとしたが、ゲイルが右手でそれを制止する。


「やめろ。 ……わかりました。ご多忙の折、失礼しました。」

「じゃ、後は警察の方にお願いします。我々はこれで。」


 結局、救急隊員は何もせずに去って行った。


 地元警察のスタントール人の中年男は、騒ぎを聞いて遅れながら現場にやって来た同じスタントール人の「監督」と話していた。「監督」は面倒事が増えた不快感を微塵も隠しもせず表情に出していた。


 「監督」と話し終えた警官がゲイルに事情を確認する。


「えっと……それで?おたくの娘が誤って側溝に落ちて死んだ。

 それでいいかな?」


 サーラは警官の言っていることが理解できなかった。


「なにを言ってるの?どう見ても殺されてるじゃない!!

 それに、誰が殺したか知ってるわ!ねぇ、父さん!」


 サーラは警官に食って掛かり、隣にいる父に向き直る。

 だが、彼女は父の顔を見て驚愕した。

 温和な笑みを浮かべていたのだ。


「はい、その通りです。全く持って痛ましい事故なようです。」

「父さん!?なにを」

「黙れ。」


 サーラは、父の有無を言わせぬ言葉とその瞳を見て沈黙した。

 緋色の瞳が真っ赤に燃え盛っていた。

 激しい怒り。それを超人的精神力を持って押さえつけている。

 それが、まだ8歳の少女に過ぎないサーラにも瞬時に理解できた。

 周囲の同胞であるダニーク人労働者たちも、ゲイルの心情を慮って俯く他なかった。


「こんなしょうもないことで、いちいち通報するなよ、ダニーク人。

 俺たちスタントール人は忙しいんだ。」

「はい、誠に申し訳ございません。」


 ゲイルは警官へ頭を下げた。


「それじゃあ、俺はこれで帰るぜ。

 あぁ、監督さん?別に調書とか要らないよな?」

「あぁ、要らないですね。社長のリョーデックさんには俺から報告しときやす。

 迷惑かけやした、お巡りさん。」


 ダニーク人への横柄な態度を隠しもせず、白人の警官は早々に引き上げた。

 被害者がダニーク人だから、事案として記録することさえも面倒だと思った。

 同じく面倒事を嫌った「監督」も、これを単なる事故と説明することでさっさと片付けたのだ。

 それよりも先月の生産ノルマがまだ未達だ。仕事を優先させねば。


「おい!いつまでぼさっとしてやがる!作業を始めろ、ダニーク人共!」


 「監督」の男は、一片の憐れみの感情も見せず、ダニーク人労働者たちに就労を強制した。


 彼らスタントール人にとって、ダニーク人は「所有物」でしかない。

 同じ「人間」とは思っていない。

 彼らは「人間」とは肌の色、瞳の色が違う「亜人」なのだから。

 エルフやドワーフと同じ、「人間」より格下の「亜人」なのだ。

 だから、彼らに「権利」等存在しないし、それを主張する事さえ許しはしない。


 ゲイルとサーラの周りに集まっていた農園労働者たちは、「監督」に急かされるようにそれぞれの持ち場の葡萄畑へと散って行った。


「行くぞ、サーラ。」


 ゲイルはサーラの手を掴むと歩き出した。

 サーラは俯き、激情を押し殺すのに全精神力を注ぎ込んでいた。

 押さえつけなければ、今にも「監督」に飛び掛かって殺してしまいそうだった。

 父の温かく、力強い手の感触が、それを辛うじて静止してくれた。


 ナシカを殺した犯人はわかり切っていた。

 農園経営者の醜く太った長男坊。

 昨日、ナシカを屋敷に連れ込んだ豚野郎、ピエル・リョーデック!



 奴が!ナシカを凌辱し、嬲り、惨殺したのだ!

 私たちダニーク人は、永遠にスタントール人の「玩具」でしかないのか!?



 サーラは心に誓った。



 奴らを……スタントール人を!

 必ず皆殺しにしてやる。



 彼女の緋色の瞳は、父以上に激しく燃え上がり、紅く輝いていた。

 

 ナシカの葬儀はその日の夜、農園の支配者であるスタントール人たちに気付かれないよう、密かに営まれた。

 互助会の老婆たちが遺体を麻布で包み、労働者共同墓地に新たに設けられた墓穴の中へと入れた。

 葬儀は古の時代からのダニーク人の作法で行われた。

 彼らが暮らすこのファーンデディアの大地にのみ咲くベシタという赤色の花の花弁を、参列者たちが一掴み持って、順に墓の中の遺体へと撒く。最後に親族であるサーラ、母親、そして父親であるゲイルが花弁を撒いて墓を埋めてから葬儀は終了である。


 簡単ではあるが、古来からのダニーク人の作法。

 本来なら、花弁を撒く時、墓前で神官が神の御許へ魂を送る詞を上げるするのだが、1500年前にスタントール人がファーンデディアへとやって来て、彼らによりダニーク人土着信仰の徹底廃却が行われてからは、既に神々の名前さえ忘れ去られていた。


 葬儀には、農園で働くダニーク人労働者のほぼ全員が参列した。

 可愛く素直で明るかったナシカのことを、農園のダニーク人の誰もが好いていた。

 「学校」の同級生だった少年少女たちが、声を押し殺して泣いている。

 大人たちも、悲しみと怒りを抑えていた。


 互助会の老人たちが、皆がベシタの花を撒き終えたのを確認すると、シャベルで墓穴の中の遺体に土をかけ始めた。

 ゲイルはそれを無表情で見つめ、妻アスリは夫の胸に顔をうずめて大粒の涙を流している。

 無表情のままゲイルは、涙を止めることが出来ない妻の頭を優しく撫でていた。

 そしてサーラは、もう泣いていなかった。

 口はきつく結ばれ、瞳には激しい怒りが浮かんでいた。



 ナシカ。

 あなたに誓う。

 あなたの無念は晴らしてあげる。

 あなたの受けた苦痛を、屈辱を、万倍にしてスタントール人に叩き付けてやる。

 いつの日か、必ず!

 スタントール人の死体を積み上げて、あなたの無念を晴らし、

 私たちは自由を手に入れる!


 

 ……その「いつの日か」は、唐突に訪れた。


 葬儀を終え、ダニーク人たちはそれぞれの部屋に戻っていった。

 皆無言だった。幼気いたいけな少女の無念の死に、そしてその無念さを晴らしてやれない自分たちの無力さに、誰もが言い知れないやるせなさを感じていた。


 日付が変わった深夜。


 サーラはふと目を覚ました。

 隣のマットレスで寝ていた父と母がいない。

 寝る前、優しく頭を撫で、自分と母を寝かしつけてくれた心優しき父の姿が無い。

 狭い部屋内に両親の姿は無く、サーラは労働者団地の錆びつきが目立つ金属製の玄関扉を開け、自身の部屋がある4階から階段を降りて1階の労働者用食堂へと向かった。


 何故かはわからない。

 ともかく、食堂に行かなければ、という思いに駆られた。


 食堂には明かりが灯り、大勢の大人たちが集まっていた。

 よく見れば、近隣の他の農園や建築現場で働くダニーク人労働者たちも集まり、食堂に入り切れず、一部は廊下にまで出ていた。

 

 サーラは立錐の余地も無いかのように人でいっぱいの食堂を何とか掻き分け、集団の先頭へと進む。

 大人たちは、食堂の壁棚に置かれたラジオを見ていた。ラジオの前に少しだけ空間があり、そこにサーラの両親はいた。

 ナシカの遺体を発見したラルビが、椅子の上に立ってラジオの周波数を合わせようとツマミをいじっていた。

 

 すると、「声」が聞こえてきた。

 本来なら、ここでは聞こえるはずの無い「声」が聞こえたのだ。

 ノイズが時折混じり、とても明瞭とは言い難いものだったが、この場に居たダニーク人たちにはしっかりと届いた。


「ザザッ…全ての…ザッ…抑圧下のファーンデ…ザッ…の人々へ呼び掛けます。

 共和国は…ザッ…トールへの宣戦布告を宣言しました。

 ファーンデディアを不当に占拠し、圧政を敷く専制君主国家に対し、正義の鉄…ザッ…を下すべく、共和国軍は昨日夕刻、国境の“北の門”を全面で突破…ザッ…に成功しました。

 抑圧下にある全てのファーンデディアの人々よ。

 武器を手に取り立ち上がってください!

 我ら共和国と共に…ザッ…デディアに真の平和を!真の自由を!

 繰り返し、呼び掛けます…全ての…ザザッ…」


 「共和国」を名乗るラジオの「声」。

 それは、彼らが住まうこのファーンデディアの北に位置するノルトスタントール連合王国の敵対国家・イェルレイム民主共和国が北辺の国境を突破して軍事侵攻してきたことを告げ、彼らダニーク人に武装蜂起を呼び掛けていた。


 その時、ゲイルたちが居る、北部国境から遠く離れた南部ファーンデディアで受信できるはずの無い「北辺の蛮族」イェルレイムの国営放送が何故受信できたのか、誰も疑問に思わなかった。

 今、彼らの最大の関心事は別にあったからだ。


 これが事実かどうかということ。

 そして事実ならば……「その時」が来たのかどうか、ということ。


「おい、ゲイル。こ、これは本当なのか?」


 労働者の一人、ゲイルとほぼ同年代のダニーク人男性ベン・ベラクスが動揺しながら問う。


「あぁ、信頼できる筋によると、共和国軍の開戦と同時の空挺攻撃で、昨日の夕方までにスタトリアのファーンデディア駐留軍北部総隊は壊滅したそうだ。

 南部の精鋭部隊もほとんどが北へ出発したし、武装警察も総動員された。

 それに、イェルレイムだけじゃない。

 スタトリア本国も“共和国陣営”に組したオーク共から総攻撃を受けてるそうだ。」


 ゲイルは淡々と答えた。

 食堂に居たダニーク人全員にどよめきが走った。


……

 スタトリアとは、ノルトスタントール連合王国の略称であり、スタントール人たちも時々使う用語だが、スタントールに反感を抱く人々が使う場合、彼らへの侮蔑的意味合いを含んでいる。

 そしてゲイルの言う「スタトリア本国を攻撃しているオーク共」とは、ファーンデディアとは海を挟んで西側にあるノルトスタントール連合王国「本国」の北に存在するオークを中心とした軍事独裁国家・ディメンジアのことである。

 即ち、これはファーンデディアのみならずスタントール本国までも巻き込んだ、空前の大戦争が突然始まったことを意味していた。

……


「じ、じゃあ、共和国の奴らが来てくれたら、俺たちは遂に自由になれるんだな!?」


 ベンがやや興奮気味に言う。

 だがそれをゲイルが静かに窘める。


「……自由は勝手にやって来るものじゃない。いつの日か、自分たちで勝ち取るものだ。

 そう言ってただろ?」


 ゲイルは「言ってた」と過去形であることを強調して言った。

 そう、「いつの日か」が今まさに訪れたのだ。


「ゲイル!遂に……遂に始めるんだな!?

 奴らに……スタトリアのクソッタレ共にぶちかましてやるんだな!」


 ラルビがもう耐えられないと言わんばかりにゲイルに問いかける。

 右手の握り拳を食堂の机に叩き付け、「ダンッ!」という衝撃音が響く。

 それが合図であったかのように、ゲイルは立ち上がり、彼の問いに力強く答えた。

 

「そうだ!俺たちダニーク人の自由は、俺たち自身で勝ち取る!

 共和国の奴らに恵んでもらうものじゃない。俺たちで手に入れるんだ!

 俺たちの……“国”を!!

 スタトリアから奪われた“俺たちの国”を!自由を!」


 直後、食堂のダニーク人たちが発した闇夜を切り裂くような猛烈な歓声が、農園中に轟き渡った。


 ダニーク人たちが食堂の床のフローリングを引き剥がし始めた。

 すると、床下から多数の木箱が出現する。

 箱の中には共和国製の旧式の短機関銃や小銃、軍用散弾銃がぎっしりと詰まっていた。


 決起の「意思」だ。


 ゲイルの「部下たち」が木箱から手際よく銃を取り出して、食堂に集まっていた「同志たち」に手渡していく。

 さらに、食堂に隣接する農園労働者互助会ボランティア運営の「学校」の教室の黒板も取り外され、壁の中から何十個ものカーキ色の鉄箱が出現した。

 その中身は弾薬や爆発物。

 小銃弾にピストル弾、ショットシェルにフレア弾、それに手榴弾まである。


 決起の「表明」だ。


 「学校」のボランティア教師たちが弾薬を、銃を手にした「戦士たち」に配る。

 彼らは慣れた手つきで銃弾を装填していく。


 ここに決起の「意思表明」は完成した。


 サーラはその時初めて知った。

 愛する父が、世界の誰よりもスタントール人を憎んでいたことを。

 そして、自分たちダニーク人の「自由」を手に入れる為に、自分が生まれる前から周到に準備していたことを。

 

 食堂のみならず、この葡萄農園の労働者集合団地一帯はまるで祭り前夜のような喧騒と熱気に包まれた。

 その熱狂の中、今や「革命のリーダー」となったゲイルは、愛する娘の存在に気付くと、彼女に近付きこう言った。


「妹の仇を討ちたいか?サーラ?」


 大人たちの熱狂に呆気に取られていたサーラは、我に返ると真剣な眼差しを父に向け答える。


「ええ。あの豚を殺すための武器を頂戴。」

「……わかった。これを使え。」


 ゲイルは若干の躊躇いを見せつつ、サーラに自動拳銃を手渡した。

 9mm弾を使用するいぶし銀の小型拳銃。食堂の照明に照らされ、スライドが鈍く光る。

 そこには「イェルレイム国営兵器廠製造」と書かれた共和国文字の刻印が打たれている。

 ゲイルはさらに、8発装填の弾倉2つを渡すと、愛する娘に銃の扱い方を簡単に教えた。

 賢いサーラはすぐさま扱い方を理解した。

 スライドを後ろに引き、安全装置を解除する。

 覚悟は決まった。

 動揺は一切無い。

 サーラが抱く思いはただ一つ。


 奴らを、殺す。


 激しい憎悪が、自分の身を赤黒いオーラとなって纏うような感覚を覚えた。

 緋色の瞳は輝かんばかりの紅となり、手にした銃の重みさえ感じない。


 銃は食堂に集まっていたダニーク人全員に行き渡り、さらに余剰分もある。

 時は来た。

 ゲイルは自身が手にした短機関銃を宙に掲げ、雄々しく叫んだ。


「さぁ、同志諸君!こう!

 廃却されし神々の祝福を背に、我らの国へ!!」


 武器を掲げた虐げられし者たちの咆哮が、葡萄農園を、否、ファーンデディアを包む。


 時に、新暦1924年9月2日。

 彼らダニーク人の暦で、マガン王の14年草刈の月2日。

 史上最大の大戦勃発の翌日。ダニーク人による独立戦争…通称:ファーンデディア戦争は始まった。

※この後書きは本編とほとんど関係ありません※

※本編の時期に、異世界のメディアが報じた記事・放送の抜粋という体の作者の妄想です※


【新暦1924年9月1日付 スタトリアン王国通信社(中道右派メディア)

                         号外記事より抜粋】

●戦争勃発か? 全土に非常事態宣言発令●

 本日正午、王国政府はエルエナル民主統合共和国、ディメンジア国家社会主義国及びイェルレイム民主共和国、アーガン人民共和国他18ヶ国からなる「共和国陣営」構成諸国から宣戦布告を受けたことを発表。

 既に、ディメンジア国境に近いフェターナ州北部工業都市・オランドゥールやイェルレイム国境付近のファーンデディア州北部地域一帯で大規模な戦闘が発生していると見られるが、現地の詳細な被害状況等は不明。

 これを受け、政府は王国5大広域州全土に非常事態宣言を発令。

 ジョシュ・ダミヤン首相(69)は緊急記者会見を開き、「現在正確な情勢を確認中」としながらも「宣戦布告は共和国各国の大使館からの正式な通達であり、既に多数の爆撃機が各地に飛来しているという報告も受けている。誠に遺憾ながら、全てのスタントール国民は戦争が始まったという事実を受け入れなければならない」と述べた。

 一方、最大野党であるスタントール人民主義者党の党首ジャック・ラヴァル書記長(54)も緊急声明を発表。「支持率低迷に喘ぐ現政権によるデマの可能性があり、善良なスタントール市民は騙されてはいけない」と戦争の事実そのものを否定。今国会での内閣不信任案提出を目指すとした。

 また、ダミヤン首相の対立派閥の領袖であるアベール・ルペン内相(71)は「融和ムードが強かった共和国陣営が戦争を始める理由が見つからず、本当に戦争が起きてるのかわからない。首相の声明には疑念がある」として首相による内務省管轄の武装警官動員令に反対する等、対応を巡って国政は大きく混乱している。


(後略)

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