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褐色少女の独立戦争  作者: mashinovel
第三章  王国の反撃
19/63

18. ターニングポイント その2※フェリス門前の戦い※

※この第18話も、サーラたち主人公サイドは出て来ません。

 大戦の分岐点の一つ、スタントール王国サイドの物語となります(サーラたち主人公サイドは次々回の予定)

 空は晴れ渡り、太陽は遥か天空の頂点に到達しようとしていた。

 しかし、その天空の様子は穏やかではなかった。無数の戦闘機が敵味方入り乱れ、航空優勢を確保するべく激しい空中戦を繰り広げている。何本もの飛行機雲が、青き大空に前衛芸術が如き模様を生み出していた。


 その真下の地上では、黒髪に黒い瞳の若く美しい女性が新型の長砲身120mm滑腔砲を搭載する王国軍最新戦車の砲塔で仁王立ちしていた。

 流線形のようなスマートな砲塔に、シャープな長方形の車体。最高時速90キロを叩き出す最新のV型8気筒ディーゼルエンジンを積み、自慢の新型滑腔砲には自動装填装置が備わっており、乗員は全部で3名。

 敵対国家諸国軍の主力戦車全てを、2000メートル以上の距離から撃破可能な極めて強力な「第3世代」戦車である。

 そんな新型戦車の上で仁王立ちする女性は、防弾性の高いカーボン繊維を裏地に仕込んだ特注品の戦闘服に身を包み、右手には最新型の短機関銃を持っている。左手を腰に添え、威風堂々とした佇まいを見せていた。

 時折強く吹く風は、遥か上空から遠く響き渡るジェットエンジンの爆音を乗せながら、女性の良く手入れされた上質な芸術品の如き黒髪を大きく靡かせる。

 その黒いダイヤのような輝く瞳は、地平の先を睨んでいた。

 視線の先には、土煙を上げながら彼女のみやこを蹂躙せんと迫りくる緑色の肌をした連中の軍勢がいた。

 ノルトスタントール連合王国北部に存在する「千年敵対国家」ディメンジア国家社会主義国の侵略軍。

 その軍勢の最先鋒を、緑色の野蛮な亜獣人が駆る重装甲戦車軍団がフェターナ広域州の肥沃な大地が生み出した広大な小麦畑を踏みにじり突き進んでくる。


……※世界観設定文章です。読み飛ばし可※……

 ディメンジアは、オークによる強大な軍事独裁国家である。

 この異世界における国家分類で言えば「亜獣人文明国家」となる。

 その構成国民は、人間の倍の体躯と強靭な肉体を誇る獣人・オークと、「文明化シヴィライズドオーク」の異名を持つ緑色の肌をした端整な顔立ちの亜人・デニア人の男女。

 デニア人はオークの突然変異のような存在だ。オークロードとハイエルフの女性との間に生まれた男、「大帝」ラカラールと呼ばれる「ヒト種の悪夢」が、彼ら彼女らデニア人共通の先祖である。

 ラカラールはオークの屈強な力とエルフの高い知性を兼ね備え、オークたちを率いて瞬く間にスタントール地方北部に存在した無数の諸王国を蹂躙。赤道の獣人たちをも屈服させ、空前の大帝国・シャハーンを築き上げた。

 そんな彼の偉業は、南のスタントール地方へ親征を始めた時に潰える。

 当時、荒くれ者の傭兵たちを率いていた傭兵団頭領にして後のスタントール建国王、カズキ・シノーデルとの一騎討ちに敗れ、その波乱の生涯を閉じたからだ。

 しかし、彼の第一王妃である亡国の女騎士ディテクティアとその子供たち……後のデニア人……は、偉大なる大帝が残した大帝国の崩壊を、多くの領土を失いながらも何とか防ぎ、オークとデニア人による「理想郷」を歴史に繋ぎとめた。その後、シャハーン大帝国は、オークたちからは「祝福の母神」と崇められ、スタントール人からは「人類を裏切った女」と蔑まれるディテクティアの名前を元に、国号を「ディメンジア」と改めて現在に至る。

……※設定文章、終了※……


「女王陛下、誠に恐れながら危険にございます。車内へお戻りください。」


 砲塔のハッチが開き、中から若い戦車兵の男が現れ自らの「主君」に心配そうな顔をして告げる。

 だが、女王……カリーシア・シノーデルⅡ世は、その申し出を拒否する。


「まだだ。あのディメンジアの蛮族めが、わらわの姿をその腐った目で見るまで待つ。」

「恐れながら我らが女王陛下。どうやって敵が陛下のお姿を発見したとご判断なさるおつもりでしょうか?」

「奴らのことだ。妾を認めるや否や、餓鬼のように喜び勇んで砲弾を雨あられと見舞ってくるだろうよ。」


 女王はさも当然のことのように言った。

 若い戦車兵が恐縮しながら主君に尋ねる。


「……敵弾飛来まで仁王立ちなさるおつもりですか?」

「そうだ。」


 即答する「偉大なる」女王陛下。

 戦車兵は苦悩した。

 このお方は本気だ。恐らく、本当に敵が砲撃を開始するまで戦車の上で立っているつもりのようだ。

 それは余りにも危険だ。

 彼は若干の逡巡の末、「譲歩」を出すことにした。


「……かしこまりました、陛下。ですが、敵の発砲を確認したら直ぐに車内へお戻りください。直ちに回避行動を取ります故。」

「しょうがない。わかった、その時は合図せよ。」

「承知しました、我らが女王陛下。」


 戦車兵はハッチを閉じ車内へと戻った。

 彼も地平に目を凝らす。高度ズーム機能と暗視装置を標準装備した照準器を瞬き一つせず覗き込み、自分たちの王都目指して進んでくるオークの軍勢をつぶさに確認する。



……


 その頃、オークの軍勢にも動きがあった。


 宿敵ノルトスタントールの王都「枯れること無き花の都」の異名を持つフェリスに、もう手の届くところまで来ている。残り僅か30キロ。オークたちの士気は否が応でも激昂していた。

 1500年前、ディメンジアの開祖「大帝」ラカラールでさえ成しえなかった大偉業を、今、子孫の自分たちが達成しようとしていたのだ。オークの勇敢なる戦士たちの誰もが、死すら恐れていなかった。

 ディメンジア国家社会主義国国防軍スタントール戦線中央軍集団第1親衛装甲軍第999戦車兵団を任されたのは、まだ30代前半の若き「文明化オーク」ことデニア人の大佐、アヴァフ・ガッドーゾである。

 額左右の両脇に短い角が生え、犬歯もヒトの2倍はあるが、とても端整でがっしりした顔立ちをした士官学校出のエリート。緑色の肌に覆われた身体は鍛え上げられ、黄色の瞳は自信に満ち溢れていた。

 敵王国との戦端が開かれてからは常に最前線に身を置き、部下のオーク戦士たちからの信頼は既に最高である。

 彼の恐れを知らない勇猛な戦車兵団は、誇り高きオークの軍勢の最先鋒にあり、今や同胞たちの期待と羨望を一身に受けていた。上空では彼ら戦車兵団の頭上を守るべく、友軍の戦闘機部隊が奮戦。王国側を圧倒しつつあった。

 

 兵団の先頭を進む指揮戦車の砲塔、戦車長ハッチから身を乗り出して戦場の様子を双眼鏡で確認するアヴァフ大佐の元に、装甲軍前線司令部で情報収集に当たっている国家情報局所属のデニア人女性将校から通信が入る。双眼鏡を下ろし、右耳の通信受信機に手を当てる。


『大佐!喜べ!貴様の軍は今、最高の獲物を前にしているぞ!

 奴らの女王だ!

 我らが最高執政官様も貴様に期待している。

 何としてもあの女を捕らえよ!捕らえるのが困難な場合は確実に仕留めよ!』


 アヴァフの目は、驚愕に見開かれる。



 なんと!大帝を弑逆した「殺戮者」カズキの唾棄すべき末裔が、今、この戦場にいるというのか!?

 なんたる僥倖!なんたる幸福!



 興奮冷めやらぬアヴァフは改めて情報局の女将校に確認する。


「それは間違いないのか?間違いなく奴らの女王か?」

『間違いない!傍受した奴らの通信を解読した!

 貴様の目の前にいる筈だ!絶対に逃がすな!

 損害に構わず突き進め!これは執政官様よりの至上命令である!』

 

 女将校も大いに興奮していた。

 これにアヴァフは天を仰ぎ見てディメンジア建国の祖霊に感謝すると共に、妻である女将校に決意を告げる。


「おお!大帝よ!大母よ!あなた方に感謝致します!

 ……我が手で、必ずや女王の首級を上げてみせると最高執政官様……「始まりのデニア」に伝えてくれ、ジーラ。」


 妻ジーラは、夫アヴァフの健闘を祈った。


『わかった、アヴァフ。我が夫よ。大帝の栄光と共に進め。通信終了。』


 アヴァフは全身が震える感覚を覚えた。武者震いだ。

 あの憎きスタントールの首領を仕留められると聞いて奮い立たないディメンジアの戦士はいない。

 そんなアヴァフの様子を、砲塔の後ろにある取手を掴み戦車跨乗タンクデサントする屈強なオークの重装突撃兵たちが頼もし気に見つめる。

 間近にいたオーク突撃兵の一人が笑顔で指揮官に声を掛ける。


「大佐殿!何やら楽し気なご様子!いかがされた!?」

「ウラゴ少尉!聞いて喜べ!奴らの女王が我らの眼前にいるぞ!!」


 たちまちオークの戦士たちは色めきだす。

 歓喜と驚きが入り交じった様々な叫びが砲塔後方で木霊する。


「なんと!!それは誠か!!我らに大帝様のお導きがあるということか!」

「そうだ!ここで奴らの女王を仕留めるぞ!!大帝と共に進め!!」

「ウオオォォーー!!」


 アヴァフの檄に、巨躯の緑肌の戦士たちは咆哮する。

 非常に強力なオーク重装突撃歩兵専用の12.7mm突撃機関銃を片手で天に掲げ、此度のいくさの必勝を誓った。


「大佐殿!敵影視認!!敵の新型戦車の上に、人影らしきものが立っております!」


 戦車の中から若いデニア人砲手が告げる。

 アヴァフは直ぐに砲塔内へと戻り、戦車長の椅子に座る。


「距離は?」

「およそ1500!攻撃しますか?」

「もちろんだ。一発で仕留めて見せろ!あるいは、あれが女王やもしれん!!」

「了解!」


 アヴァフは喉に取り付けた咽喉式のマイクに手を添え、配下部隊に命令を飛ばす。


「緑騎士01より騎士各位へ。

 戦争の時間だ。

 相手はスタトリアの女王だ!奴らの女王が、我らが眼前にいるぞ!

 交戦開始!大帝の栄光と共に進め!!」

『了解!!大帝と共に!!』


 直後、ディメンジア軍第999戦車兵団は一斉に100mm戦車砲による砲撃を開始した。

 後の世に言う大戦分岐点の一つ、フェリス門前の戦いの始まりである。


……


「陛下!!直ちに乗車を!!」

 

 王国軍戦車兵の男が尚も砲塔で仁王立ちする女王に警告する。

 すると女王は、軽やかに開け放たれた戦車長ハッチから戦車の中へと飛び込んだ。


「各車、全速後退!緑虫共を引き付けろ!各自の判断で射撃開始!」


 女王は素早く部隊通信用ヘッドホンを頭に被ると、直属部隊に指示を出す。

 王国軍新型戦車の一団が、勢いよく後退する。

 ディメンジア軍戦車の砲撃が次々と襲い掛かるが、そのほとんどは至近弾に留まり、稀に数発が王国軍戦車に命中するも、新型戦車の強靭な複合装甲はその全てを弾き返した。

 お返しとばかりに王国軍戦車がその長砲身120mm滑腔砲を放つ。

 たちまち被弾したオークの戦車は、砲塔を吹き飛ばして擱座した。

 しかし、連中は損害を一顧だにせず、迷うことなく突き進んでくる。

 見事に餌にかかったようだ。


 女王は右手首に嵌めた軍用腕時計を見る。

 予定通りならばあと数分だ。

 あと数分で、空軍の新兵器が到着する。

 

 女王は笑みを零す。

 自分の国の圧倒的工業力と科学技術の驚異を、あの緑色の化け物共の身体に刻んでやれる。

 王都門前まで迫ってすっかり逆上のぼせ上がった蛮族集団を抹殺する愉悦に心が躍る。


 女王の戦車部隊は後退を続け、それをオークの戦車兵団がエンジンを燃え上がらせんばかりの勢いで全速力をもって追撃する。


 しかし、その上空で異変は起こっていた。


……


 突然、ディメンジア空軍の戦闘機がレーダーに映らない正体不明の敵の攻撃で、次々と一方的に撃墜され始めたのだ。


 ディメンジアとスタントール。両国の空軍は陸軍部隊が戦端を開く前から、互いの祖国興亡を賭けて命を惜しまず激しい空中戦を展開していた。

 ディメンジア空軍には北方の共和国陣営の盟主・エルエナル民主統合共和国から供与された可変翼の大型双発ジェット戦闘機が多数存在し、スタントール空軍の主力戦闘機であるデルタ翼の小型戦闘機を総合性能で圧倒していた。オークたちはここフェリス門前を決戦地と見做し、保有する可変翼大型戦闘機の全機を投入。王国空軍のデルタ翼小型戦闘機を次々と撃墜し、航空優勢確保はもう間もなくと思われていた。

 戦闘機を駆るディメンジア空軍のデニア人パイロットたちは、誰もが勝利を確信していた。


 だが、陸軍の戦車兵団と敵女王の部隊が戦端を開いてからしばらく経過した後、事態は突然一変する。


『バトルアックス4!被弾した!敵は何処だ?』

『こちらオルシウム7!直撃した!脱出する!脱出……』

『グレートソード66!!誰が俺を撃った!?……クソッ!制御不能!!落ちる!!』


 異変を察知した国防空軍前線司令部が戦闘中の部隊に状況報告を求める。


『こちら前線司令。作戦中の各機へ。何があった?』


 しかし部隊は状況報告する間もなく次々と撃ち落されていく。


『バトルアックス3!被弾!助け……』

『オルシウム4!!主翼が吹き飛んだ!墜落する!!うわっ……』

 

 前線司令は苛立ちを隠せず、怒気を孕んだ声で改めて報告を促す。


『誰か応答しろ!何があった!!レーダーには元から居た敵影以外何も映ってないぞ!』


 ディメンジア空軍は大混乱に陥った。

 突如として、レーダーに映らない謎の敵による一方的な猛攻撃を受けたのだ。

 部隊指揮官のデニア人パイロットの顔に、著しい焦燥が浮かぶ。

 気が付けば、100機以上いた味方戦闘機は一機残らず撃墜されていた。

 最後の生き残りである部隊指揮官が、前線司令に「最悪の」戦況を伝えた。


「クソッ!!こちら、バトルアックスリーダー!前線司令!損害甚大!繰り返す、損害甚大!敵は一体何処に……」


 直後、バトルアックスリーダーの可変翼大型戦闘機は短距離空対空ミサイルの直撃を受け、爆発四散した。


 その爆炎の傍を、音速を超えて通り過ぎる機影。

 その機体は全体を異様なまでに黒い塗料で覆い、形状も今までの航空機とは明らかに違う特異なものだった。全体的に流線形のラインが異常に強く、若干丸みを帯びた左右合わせて菱形の翼に、尾翼は大きく下へ傾いている。

 ノルトスタントール連合王国の科学技術の粋を結集して作られた、この異世界において全く新しい概念の戦闘機。

 従来型の索敵レーダーでは捉えることが出来ない「見えない戦闘機」ことステルス戦闘機の初陣であった。


……


『女王陛下。戦闘中に失礼します。ルクレールにございます。』


 空軍総司令のロアン・ルクレール上級大将が、女王とその配下部隊に全体通信を入れてきた。


「妾だ。成功か?」

『大成功でございます、我らが女王陛下。当該空域における敵オークの作戦機は全滅しました。』

「よろしい。では、殺戮を始めよ。妾の国に土足で踏み入った緑色の亜獣人共を消し炭にせよ。」


 無線を聞いた他の戦車兵たちが歓喜の声を上げる中、女王は淡々と命令を下す。

 ルクレールは、主君の命令に忠実に答えた。


『ははっ!!我らが女王陛下!!王国空軍の真の恐ろしさを、奴らに刻んでやります!』


 現代戦において、特に障害物のない平野や砂漠では、航空優勢の喪失はそのまま「死」を意味する。


 我々の世界でも、独ソ戦がその典型例として挙げられよう。

 1944年6月22日に始まったソ連軍による大反攻作戦「バクラチオン」。

 連合軍のノルマンディー上陸によりドイツ空軍主力が不在となった東部戦線において、それまで精強を誇ったドイツ国防軍東部戦線中央軍集団は、ソ連空軍の圧倒的な航空攻撃を前に数日で壊滅。ドイツ第三帝国の敗北を決定的なものとした。

 それと似たような状況が、勇猛な緑色の肌をした兵士たちにも襲い掛かった。 


 王国空軍の新兵器・ステルス戦闘機部隊による航空優勢確保と時を同じくして、王都フェリス方面から空を埋め尽くすほどの航空戦力が出現した。

 対地攻撃に特化した重装甲の攻撃機、新型の大型攻撃ヘリが低空で飛来し、上空にはファーンデディアの港湾都市・セティアを灰にした大型戦略爆撃機の大軍が姿を現した。

 さらに、新型の誘導爆弾を搭載した大型ジェット戦闘爆撃機も大挙して現れ、女王の首を取らんと突き進むオークの戦車兵団に殺到した。


 女王はほくそ笑み、誰に言うでもなく呟いた。


「妾の前で、“空”に圧殺されるがよい。汚らしい緑虫共が。」


……

 

 勇猛果敢なデニア人の野戦指揮官、アヴァフ・ガッドーゾ大佐は何が起こったのかわからなかった。

 妻である情報局女将校が突如「撤退せよ」と叫ぶ通信を入れてきたかと思うと、次の瞬間、目の前の空を一面王国軍の航空機が埋め尽くしていた。

 

 圧倒的なまでの「死」がオークの戦車兵団へと投射された。


「全車停止!!直ちに全速後退!!後退だ!!」


 全くもって手遅れであった。

 王国軍の攻撃機は空対地ミサイルと無誘導ロケット弾の雨を叩き付け、大型攻撃ヘリは「地獄の業火」の異名を持つ極めて強力な対戦車ミサイルを降り注ぐ。戦闘爆撃機の誘導爆弾は、正確に敵戦車兵団の戦車を捉え、彼らの直ぐ後ろに続く数万のオーク重装突撃歩兵とデニア人機械化歩兵部隊の頭上には、戦略爆撃機の大軍が1機あたり100発を超える無誘導爆弾の集中豪雨を見舞った。


 大戦勃発からの5ヶ月間、スタントール軍相手に多大なる軍功を積んだ勇敢なるアヴァフ・ガッドーゾ大佐の華々しい軍歴は、あっけなく永遠に終わりを迎えた。

 彼の身体も、彼の搭乗していた戦車も、そして指揮していた優秀な戦車兵団の兵士や機材も、この世に存在した僅かな痕跡すら残さず徹底的に引き裂かれた。


 ディメンジアにとっての悲劇はこれだけで終わらなかった。

 スタントール女王という最高の餌に食らいついたディメンジア軍中央軍集団の精鋭・第1親衛装甲軍は、アヴァフの戦車兵団を筆頭に愚かにも全体的に左右を顧みず突出。結果、王国軍に挟撃されて陸と空からの猛攻撃を受け、壊滅した。


 ノルトスタントール連合王国の女王自らが前線に現れ、レーダーに映らない王国の新型戦闘機が空を席巻したこの日。

 ディメンジアにとって建国史上最悪となる「悪夢」の日々の始まりとなった。

 

 以後、この地における大戦は、一挙にスタントール側優位に進んでいくこととなる。

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