15. 王国軍、反撃
戦いが終わってから、私たちはすっかり油断していた。
スタントールは弱い。
自分たちは強い。
なんという思い上がりだろうか。
あの日。「始まりの街」を手に入れて熱狂する私たちの頭に、「空」が落ちてきた。
ノルトスタントール連合王国ファーンデディア広域州最大の港湾都市・セティア。
今、この街はスタントール人の物では無かった。
自由を求めて戦う褐色肌の原住民・ダニーク人たちは、多くの犠牲を払いながらも超大国スタントールの軍・警察を叩き潰し、街を手に入れた。
街にはダニーク人たちが溢れ、本来なら「亜人立ち入り禁止区域」であるところの官庁街や中央商業地区に、武装した褐色の原住亜人たちが居座っている。
ダニーク人たちは、戦闘で瓦礫やスクラップが点在する街を片付け、市内の要所に防衛陣地を築き、街の支配を確固たるものとしていた。女子供老人も、街の片付けに動員されていたが、皆、その顔に笑顔を浮かべ、街のあちこちで爽やかな汗を流してた。
彼らダニーク人武装組織――ダニーク解放戦線――がセティアの街を掌握して、およそ10日が経過しようとしていた。
そのセティアの地下深く。
何十年も前に放棄された街の洪水対策の為に設けられた治水施設の一つ。スラム街のような「原住民指定居住区」の足元に存在する広大な調圧水槽。ここに今、ダニーク人たちの最高権力組織が本拠を構えていた。
ダニーク解放戦線人民評議会及び解放軍作戦本部。
セティアの街を制圧した褐色肌の戦士たちの頭脳である。
その頭脳の最頂点に立つ、逞しく精悍な顔つきをしたカリスマ性を感じる男が、市販品のオフィス用長机を複数並べた会議場のパイプ椅子に座る人民評議会幹部と解放軍士官たちを前に、憂いを帯びた表情を見せていた。
男の名は、ゲイル・ベルカセム。今年で37歳になる若く情熱溢れるダニーク人たちの指導者だ。
肩書は、解放戦線総書記長兼人民評議会議長兼人民軍事委員会委員長。
もっとも、ダニーク人たちは彼のことを「同志ベルカセム書記長」と呼び、その正式な肩書を完全に把握している者はごく僅かで、ゲイル自身も、特に肩書のことを気に留めたりなどしていない。
今、ゲイルがもっとも憂慮していること。
それは、女王の親政が再開されたことである。
人民評議会幹部会議室の机の上には、「敵国」スタントール王国の各新聞社が発行した新聞や解放軍部隊の展開状況等を示した市内地図等が並べられていた。
「あの女王の堪忍袋の尾が切れるのは時間の問題だと思っていたが、まさかこんなに早いとは。」
ゲイルは誰に言うでもなくつぶやいた。
それに古参幹部の一人、ベン・ベラクスが反応する。
「なぁ、ゲイル。この「しんせい」とかいうのが、そんなにまずいのか?
すまないが、よくわからないんだ。要は、スタトリアの王様が自分勝手を始めたってことだろ?」
「そうだ。問題は、その自分勝手を邪魔する者が誰もいないということだ。
俺たちが武装蜂起からこれまで、勝利を積み重ねてこれたのは、スタトリアの政府連中が戦争で混乱していたからだ。言うなれば、俺たちは連中の政府の無能ぶりに助けられたんだ。」
ゲイルは幹部を見渡す。
今この場で、ことの重大さに気付いているのは、やはりゲイルだけのようだった。
表情がさらに暗くなる。
「な、なぁ。ゲイル。そんなに深刻になるなよ。俺たちには人民共和国がバックについてる。昨日だって、追加の戦車と装甲車、それに新型のミサイルも潜水艦で届けられた。明日も別の潜水艦が物資を届けてくれる。俺たちがコンテナターミナルを手に入れてから、ほぼ毎日武器が届いてるぜ。それに加えて、解放軍に入隊を希望する連中で、市内の受付所はどこも長蛇の列だ。俺たちは「強く」なってる。そうだろう?」
そう発言したのは、同じく古参幹部にしてゲイルの親友である大柄な中年男のラルビだ。
自身も逞しい筋肉に覆われた屈強な戦士であり、このセティアの戦いでは、側近部隊を率いて市警本部を占領するという大戦果をあげていた。
ゲイルは、ラルビと目を合わせる。
「確かに、人民共和国からの支援は膨大だし、今回の戦闘で失われた同胞の数以上の志願者たちが集まり、軍組織も充実してきている。しかし、スタントールを絶対に見縊ってはいけない。
第一に、我らダニーク民族の人口は8000万なのに対し、奴らのそれは3億。しかも、我々は必ずしも8000万全ての同胞の支持を受けてるわけではない。未だに日和見を決め込んだ「中間層」、そもそも我々と敵対している「親スタントール派」等が存在するが、スタトリアは女王が「親政」を開始した今、3億全てが一つに纏まった。これは我らにとって最悪と言っていい状況だ。
第二に、決定的な差であるのが、奴らには強大な空軍が存在することだ。
如何に人民共和国から対空兵器を提供されようとも、この差だけは絶対に埋まらない。
奴らの戦闘機1機を撃墜したところで、翌日には10機が襲い掛かってくる。
今のうちに、解放地域各地での地下への拠点建設を急ぐべきだ。」
これに幹部たちは難色を示す。
先日、華々しくこの港湾都市を占領したばかりだと言うのに、指導者ベルカセムは何故逃げ腰になっているのか?スタントールの空軍とやらが、そんなに恐ろしいものなのか?何故、またしても蜂起前のように地下に潜らなければならないのだろう?
そもそも、連中は北で共和国陣営相手の戦争に忙しく、こちらに貴重な空軍を回す余裕は無い「はず」だ。
そのような空気が、ゲイル以外の幹部たちの間では支配的だった。
今回の港湾都市を巡る戦いの大勝利と、武装蜂起からこれまでの連勝が、彼らを弛緩させていた。
しかし、ゲイルは頑として譲らなかった。
「本来なら同志諸君の総意を持って行動指針を決定したいが、これだけは指導者として譲れない。
セティア市内に居住の同胞非戦闘員らの地下鉄網への避難準備と、市内防衛拠点の対空偽装及び地下連絡通路と地下拠点建設を急がせろ。最優先だ。敵がいつ反撃してくるかわからないが、ともかく準備せねば。」
「……わかりました。同志ベルカセム書記長……」
幹部たちはどこか不服そうに指導者の指示に従い、各戦闘部隊や労働者たちに指導者からの新たな命令を伝達する。
主だった幹部たちがそれぞれの仕事の為、会議室を後にする。
部屋にはゲイルとラルビ、ベン、それに地元セティアの港湾労働者のまとめ役である逞しき妙齢の褐色美女のモルディアナが残った。しばしの気まずい沈黙が会議室を支配する。
「……なぁ、ゲイル。率直に聞くが……マズイのか?」
沈黙を破ったのはラルビだった。
机に並べられた新聞とセティア市の部隊配備状況及び防衛拠点の場所を示す地図に目を落とすゲイルは、顔を上げることなく親友の大男の危惧に答えた。
「街を制圧した次の日から準備すべきだったのかもしれない……女王の親政再開がこんなにも早いとは、思ってなかったからな……油断した。」
親友の声はどこか弱々しく感じられた。
今まで自分たちの国を手に入れる為、理想に燃え、激しく戦い自信に溢れていた男から、灯が消えていくような気がした。
ラルビは、先程の自分の発言が軽率だったのかと思い、反省する。
「で、でも、まだ北部の戦争は終わってない。新聞でも共和国が優勢だって言ってる。スタトリアの奴らがそんな直ぐにやってはこないさ!大丈夫だよ、ゲイル。心配し過ぎだ。」
同じく親友の小男のベンが、彼なりの言葉でゲイルを慰めようとする。
ゲイルは、そんな友人2人に顔を向け、笑みを零す。
「……すまないな、2人とも。ちょっと弱気が過ぎたようだ。ただ、用心し過ぎていけないことはない。お前たちも、準備を進めてくれ。」
「まかせとけ、ゲイル!スタトリアの馬鹿共が来やがったら、盛大に歓迎してやろうぜ!!」
「そ、そうだよ!俺たちは「強い」んだ!必ずこの街を守れるさ!!」
そう言うと、親友2人は部屋を出て各々の仕事に取り掛かった。
ゲイルとモルディアナが部屋に残される。
「……ねぇ、ゲイル。ちょっと疲れてるんじゃない?戦いが始まってから、ロクに寝てないんでしょ?」
褐色の筋肉美女が、その逞しい右手で指導者の頬を愛おしそうに撫でる。
「大丈夫さ。モルディアナ。大丈夫……」
しかし、今モルディアナが言ったことは事実だった。
ゲイルは、自分が大勢の同胞を戦いに巻き込み、結果死なせたことに自責の念を感じていた。
まだ、革命の指導者としての覚悟が足りていなかった。
時々、弱くなってしまう自分を大いに恥じていた。
だが、決して諦めたりはしない。必ず、スタントールを打ち倒し、自分たちの国を築く。
その意志だけは、何があろうとも決して揺るがなかった。
そして、そんなゲイルの意志に、同胞たちは気付いていた。
故に彼らは、自らの命を投げ出してでも戦いに赴くのだ。
今目の前にいるモルディアナは、誰よりもゲイルのそんな志を知っていると自負していた。
「ゲイル。あんたがいるから、私たちは戦えるんだ。お願いだから、自分をもっと労わって。」
モルディアナは両手をゲイルの顔に添えると、唇を重ねてきた。
戦いの最中で浴びた硝煙と、ほのかに香る彼女の香水の匂いが入り交じり、ゲイルに何とも形容しがたい一瞬の安らぎをもたらした。
「……ありがとう。モルディアナ。」
「ふふっ。さぁ、仕事に戻るわ。またね、ゲイル。」
モルディアナは軽快な足取りで会議室を出て行った。
ゲイルは一人部屋に残り、今後の行動計画を練る。
会議室の外、うず高く積まれた人民共和国からの軍事物資が詰まった木箱の陰から、そんなゲイルとモルディアナの様子を見つめる二つの緋色の瞳があった。
その目には嫉妬と憎しみがうっすらと宿っている。
瞳の持ち主の名は、アスリ・ベルカセム。
ダニーク解放戦線指導者ゲイルの妻である。指導者の妻という立場ではあるが、彼女はそれを鼻にかけることもなく、多くの力の弱いダニーク人女性たちと共に、負傷者の看病や糧食の準備、服飾品の手直し等の裏方作業を手伝い、今では後方支援要員のリーダー的存在になっていた。
だが、彼女の心境は非常に複雑である。
愛する夫であるゲイルは「革命戦争」の指揮に忙しく、自分に構ってくれない。
また、愛娘のサーラは最前線に身を投じ、今も大勢の戦士たちと共に市内の残敵掃討とスタントール人を街から排除する追放任務を遂行中だ。
もう、家族とは長いこと満足に話をしていない。
夫はダニーク人民革命の中核で、娘はダニーク人戦闘部隊の前線指揮官だと言うのに、自分は陽の当たらない後方で安全に過ごしている。
そして今、戦闘部隊の幹部である筋肉女と夫が唇を重ねていた。
それは私の唇だ。筋肉ダルマが勝手に触れていいものではない。
仄暗い灰色のオーラがアスリの身体を包み始める。
世の組織や国家が纏まりを欠き分裂する時、それは往々にしてその組織に属する人間同士の些細な行き違いがキッカケとなる。
ましてや、男女が共に肩を並べて戦うダニーク解放戦線のような組織だと、醜い愛憎の感情がその引き金を引くことになりやすい。
解放戦線の分裂の種は、斯くして当事者たちが意図せずに蒔かれ始めていた。
「母さん。どうしたの?」
アスリの背後から声がした。
美しき褐色の母親は、背後を振り返る。
愛する娘、サーラ・ベルカセムがそこにいた。
手には人民共和国製の自動小銃が握られ、強い硝煙の臭いを放っていた。
どうやら自分の娘は、またしてもこの銃で大勢を殺してきたようだ。
「サ、サーラ。いつ戻ったの?」
アスリは努めて平静を装い、娘と相対した。
「たった今よ。母さんこそ、何かあったの?」
この聡い娘は、自分の母親の異変に気付いていた。
纏う雰囲気が、いつもと違ったからだ。
「私は何も……お父さん……同志書記長が、なにやら深刻な顔をしてたからちょっと不安になっちゃって……」
あえて無理にごまかすのは逆効果だ。
ここは真実を織り交ぜつつ、相手がより関心を持つ者の話題を出して逸らした方が良い。
アスリの思惑は、見事的中した。
「同志が?何があったの?母さん。」
娘が険しい顔をして詰め寄ってくる。
正直に言って、アスリはこのサーラのことが、最近恐ろしくなってきていた。
革命が始まる前は賢く素直な良い子だった。小さな妹の面倒もよく見てくれる出来た娘だった。
しかし、その妹がスタントール人によって惨殺され、革命の戦いが始まった後、この子は何もかも変わった。
今、サーラの頭の中にあるのは、どうやって確実にスタントール人を殺せるか、これだけだった。
「……そこに同志がいるわ。顔を見せてらっしゃい、サーラ。」
何とか笑顔を見せるアスリ。自分でもその笑顔が少し引き攣ってるのがわかった。
恐るべき歴戦の戦士である褐色の美少女は、険しい顔のままだった。
「わかった。ありがとう、母さん。」
サーラは母の傍を離れ、扉が開け放たれた会議室に一人背を向けて考え事をする父の元に向かう。
「失礼します。同志書記長。」
サーラは父の背に声をかける。
ゲイルは背後を振り返った。信頼を置く戦士にして愛する娘の姿を見た指導者の顔に、笑みが浮かぶ。
「おお、サーラか。戻ったんだね。さぁ、入って。」
「失礼します。」
会議室に入り、扉を閉めるサーラ。
それを見届けたアスリは、自分の仕事に戻った。
華も何もない裏方の仕事に。
会議室で父と2人きりで向き合うサーラ。
早速、先程の母の件を切り出した。
「父さん。さっき、母さんが外にいて父さんが深刻な顔をしてたって話してくれたけど……なにがあったの?」
ゲイルは小さく驚いた。妻のアスリが近くにいたのか。
先程のモルディアナとのやり取りを見られたかもしれない。後で確認する必要がある。
それよりも、今は心配そうな顔をした愛娘に事の次第を伝える必要があるだろう。
ゲイルは、包み隠さず自分の懸念をサーラに教えることにした。
「この新聞を見てくれ。奴らの新聞だ。連中の女王が「親政」を再開したんだ。」
サーラは「敵国」の新聞……スタトリアン王国通信社発行の昨日付けの新聞を手に取る。
そこには、スタントールの女王が国内全ての裁判所を閉鎖して、司法・行政・立法の三権を完全に掌握したことを伝える記事が載っていた。
「父さん。これって……スタトリアが一つに纏まったってこと?」
賢い少女はすぐに状況を理解した。
それまで、敵は酷く混乱しており、各治安機関や自治体はまともに連携できず指揮系統に大きな隙が生じ、それがそのまま現場部隊の弱体化に繋がっていた。
常に最前線で戦っていたサーラには良く分かっていた。
自分たちがこれまで勝利できたのは、敵が混乱していたからだ。
一度、混乱から立ち直れば、それは強大な存在として立ちはだかる。
サーラはそれを前線で何度も体験した。対面したのはいずれも少人数の戦闘部隊だったが、それでも統制がしっかり取れた王国軍の兵士たちは、実戦経験の浅い元労働者を中心としたダニーク人部隊に大損害を与え得る恐るべき敵だった。
それが、今度は師団クラスあるいは軍団クラスの大軍勢となって襲い掛かってくる。
さらに、連中にはダニーク人がどう足掻いても持つことが出来ない極めて強力な空軍も有してる。
サーラは、空恐ろしさを感じ、顔はさらに険しくなる。
「そうだ、サーラ。事態の深刻さがわかったかい?」
「ええ、父さん。今すぐに防衛拠点を地下に移さなきゃ。」
優秀な娘の模範解答に革命指導者は笑みを見せる。
他の幹部たちも、彼女の十分の一程度でいいから賢くなってもらいたいものだが、初等教育すら満足に行き届いていない同胞たちに、それを期待するのも酷というものだ。
「大丈夫。先程、評議会で指示した。早速、地下に重要拠点構築を始めたよ。」
「なら、私も前線に戻ります。部隊の再編と物資の移動を急がせます。」
「頼んだ。同志ベルカセム。」
「はっ!同志書記長閣下!」
サーラは背筋を伸ばし、尊敬する指導者に敬礼して部屋を辞した。
地下の本部から地上に出る長いコンクリート階段を登り、鉄製の頑丈な扉を開ける。
優しい太陽の光が彼女を照らす筈だった。
しかし、その光は無数の「何か」によって細かく遮られた。
少女は緋色の瞳を見開いた。
上空に注がれる目線。
そこには、巨大な爆撃機の大軍が存在していた。
四発のジェットエンジンを搭載した黒翼の大型爆撃機は、やがて街の中心部上空に到達すると、その腸の爆弾槽のハッチを開いた。
「空」がセティアの街に落ちてきた。
ノルトスタントール連合王国空軍による大規模全面絨毯爆撃をもって、セティア攻防戦の第二幕は上がった。
※この後書きは本編とほとんど関係ありません※
【新暦1925年1月22日付 ファーンデディアセンチネル新聞社(極右メディア)
戦時特別報道新聞 一面記事より抜粋】
●古き王国は永遠なり!!王国軍の精鋭「ネタリア機械化騎士団」出陣せり!●
スタントール王国よ、永遠なれ!!
17日、我らが親愛なるカリーシア・シノーデルⅡ世女王陛下(古き王国よ偉大なれ)は、遂に「御親政」再開を英断なされたことは既にご存知の通り。そして、報道各社に公表された国家憲兵隊の調査報告に、我が王国臣民は大いなる怒りを覚えたことだろう。あの最高裁判所の売国奴共は、本当に正真正銘の売国奴だったのである!人民主義者の賊徒の手先に成り下がったあのクズ共は、今頃ゴブリンの餌となっている。未だに王国に巣食う売国奴に本紙からも告げる。これが、貴様らの末路だ!古き王国を転覆せんとする貴様らの目論見は、全て水泡に帰したのだ。
さて、我らが敬愛する偉大なる女王陛下(古き王国よ偉大なれ)は、本日、遂に我が王国軍最精鋭部隊を王都フェリスに迫りくるオークの戦車軍団に向けて解き放った。
その部隊の名は「ネタリア機械化騎士団」。
スタントール王国成立以前、まだ我が国が「フェターナ王国」と「ネクタス王国」の二つに分裂していた時、そのネクタス王国の王女騎士ネタリアの直属騎士団として勇名と轟かせていた「ネタリア騎士団」は、1500年経った現在、王室直属の戦闘部隊として王国軍の頂点に君臨。常に最新鋭の兵器が最優先で配備されている。
その最精鋭部隊が、いよいよ全軍出陣と相成った訳である!
なんと!女王陛下自ら戦車に搭乗し、フェリス門前にまで迫った醜悪な緑色の化け物……オーク……の唾棄すべき戦車軍団を粉砕せんと、果敢にもご出陣なされたのである!
おお、我らが勇ましき王よ!神に祝福されし麗しの女王陛下よ!
(中略)
そしてこのファーンデディアでも、いよいよ蛆虫ダニークに対する全面総反撃が開始される。ダリル・マッコイ准将は、気さくにも本紙取材にこう話してくれた。
「まぁ、なんとかなるさ。共和国もダニークも、まとめて今までのツケを支払ってもらおうかな。」
そう、支払いの時だ!
震えて眠れ!イェルレイムの蛮族と、蛆虫ダニークよ!!
女王陛下の大いなる「御親政」の元、一致団結した我ら王国の恐ろしさをその心胆に刻め!!
※カリーシア・シノーデルⅡ世女王陛下(古き王国よ偉大なれ)より全ての国民への勧告
(戦争終結まで、全ての王国新聞社は必ずこの勧告を一面記事に掲載すること)※
「王国臣民よ。今は、祖国存亡の秋と自覚せよ。斯様な情勢にあって、流言飛語を飛ばし、共和国の謀略に加担するような真似をする全ての者を、妾は決して許さない。以後、我が親政下にあって、王国に対する根も葉もない流言誹謗、特定の思想を植え付けんとする偏向報道、敵に加担する為に情報の捏造を行い臣民を惑わす者は、容赦なく処刑する。これは、王の命令である。」




