美の日常
美は、今日も空を見上げた。
暖かい風が美の背中を包み込む。
あれから10年。
当時7歳だった美は17歳の誕生日を迎えようとしていた。
空を見上げる。
今日も、そして明日も、明後日も。
そうして10年を過ごしてきた。
辛い時も苦しい時も。
美の側にはいつも月が居たように、美の側にはいつも空があった。
空に浮かぶ月を見るたびに思い出す、月との思い出。
どんなに頑張っても取り戻すことのできない友達。
かけがえのない友達。
人は、大切な人を失った時2パターンに行動が分かれるんだと思う。
一つは、大泣きして、すぐに吹っ切るタイプ。
そしてもう一つは…………………。
私の様に、立ち直れずにいるタイプ。
この10年間、美はずっと月のことを考えていた。
月に会えるならば、なんでもしようと思っていた。
いっそのこと、自殺しようかと思ったぐらいに。
本当に月に会いたかった。
それでも無理だった。
でも諦めきれなかった。
月がいないことを。死んでしまったことを、認めたくなかった。
どんなに月のことを想っていても、もう一度会うことは不可能だとわかっていても、美は立ち直れなかった。
この10年間、美は部屋を一歩も出ていない。
誰にも会いたくない。
だから、出る気になれないのだ。
親戚にも見放され。両親にも見放され。
10年が過ぎた。