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 ピンポーン。「夜分遅く済ま……ああ、失念していた」  


 つい先程確認したばかりだろうに。どうやら魂は、未だ彼の地より戻り切れていないらしい。

 その後も何度か呼び鈴を鳴らすも、住民は一向に現れない。若しや留守かと思いコテージの周囲を回ると、道中頼りとした光源に到着。覗き込むもカーテンが引かれ、室内の様子は窺えなかった。

「眠っているのか………っ!!?」

 仮令幾度死そうと、この声だけは聞き違える道理が無い。

 急ぎ玄関先へ回り、ドアノブへ手を掛ける。が、内側に鎖が掛けられ、指一本分しか開かない。そうしている間にも増す苦鳴、最早一刻の猶予も無い。


「止むを得ぬか――――はっ!!」バギィッッ!!!


 裂帛の気合で放った蹴撃が、木製の扉を上下に叩き割る。バラッ、バラ……周辺に木屑と鎖の残骸が撒き散らされる中、私は掲げた右脚を下ろした。

「やれやれ、予想以上にひ弱だな」

 衝撃で半分麻痺した脚を引き摺り、足早に屋内へ。防御に劣る布製とは言え、靴を着用していたのはせめてもの僥倖か。この新たな肉体では、足裏に木片が突き刺さっただけでも化膿しかねない。

 漏れ出る光を頼りに廊下を進み、半開きのドアに手を掛ける。侵入者の登場に、居間のソファに横たわっていた住人が朦朧とした眼を向ける。果たして数秒後、信じられないと大きく見開いた。


「青龍」「あぁ……無事だったのか、黒姐………」


 倍以上膨らんだ腹を抱え、荒い息を吐きながらも再会を喜ぶ末妹。力無いその手を取り、苦しげに上下する胸を擦ってやる。

「もう大丈夫だぞ。やり方は知っている」

 異父妹の出産の際、何れはお前も為す事と、母より手伝いを命じられた。問題無い。彼等の声は、私の耳にしかと届いている。

(さあ、私が導く。だから案ずる事無く出て来るがいい、二人共……)




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