プロローグ:女神様は神殿なくても降臨する
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燦燦と降り注ぐ太陽の光、萌ゆる草の香り。
初めまして、レイです。
麗しいと書いてレイと読みます。自分で言うなと言われますが、自分でつけたんじゃありません。
参考までに、名字はカミイです。神の衣と書きます。自分で言うなと言われますが、自分でつけたんじゃありません。どうして自分で言っちゃあいけないのかというと、それがボケだそうで。
「よく寝たなぁ…」
今日も今日とて五月晴れ。真っ青な空が高いです。いえ、今は五月でした。空が高いのは秋ですね。
そんなこんなで起き上がったわけですが、困ったことが。
ここ、どこ?
世の中は広いですから、悩みが一つだけというのはとても素晴らしいことなのでしょう。
しかし今は正直対岸の火事と言いますか、割とどうでもいいです。至らない人間でお恥ずかしいのですが、誰か助けて下さい。
割と本気でヘルプです。
どこですかここは。どうして草っ原に寝てるんですか。
「…と、叫んでるわけにもいかないし。」
うん、冷静になりましょう。
冷静にです。クールビューティに行きましょう。
ノーホットイエスクール!
…全然冷静になれません。
「やあやあ。どうやらやらお困りさんのようだネ。」
「ファッ!?」
「ヘブシッ!」
突如背後からかけられた声に吃驚し、返す刀で蹴りを放ってしまいました。
「あーっ、ごめんなさい!」
もの凄くアイムソーリーです。ペコペコ謝りつつの土下座です。我ながら虫けらのようなプライドです。
「いやいや、そこまで言わなくてもいいんじゃあないカナ!?」
「あれ、口に出しましたか?」
であれば羽のような口の軽さです。いえ、なんとなく意味が違うとは分かってますが。
「えっへーん、実はワタシ、カミサマなんだナっ!」
「はい?」
「カミサマなんだなー!うん。」
「こんな草っ原に御降臨なさってよろしいんですか。」
「…いや、そこ!?突っ込むとこ、そこだけ!?」
「神殿とかなくても?」
「いいよ!?お気遣いありがとう!?」
言われてよくよく拝見してみれば、なんとな〜く後光というかそういうものが射してるような気がします。
西洋風の女神様です。ギリシア神話とかに出てきそうな。
「うんまあ、納得してくれたならいいや。あ、自己紹介遅れちゃったね、ワタシはヘス。この世界の死霊神の娘だよ。
死霊神っていうのは死神の親分みたいなもので、魂の流れ?みたいなのを操作してるんだ。ワタシは補佐なんだけどね。
レイを呼んだのも仕事の一環。全部説明するわけにはいかないんだけど、簡単に言えば、ワタシのお手伝いみたいなことをして欲しいんだ。」
「お手伝い?」
「うん。ワタシたち神族は長い間地上には降りられないんだよね。だから代わりを立てるんだ。
ある程度知能がないと困るってことで…レイに白羽の矢が立ったっていうこと。正確には、異世界人に、ってコトなんだけどね。」
ヘス女神の話を要約すると、こういうことだそうです。
①なんらかの原因で魔素という魔法の源みたいな何かが大量発生。
②このままではまずいので対策を考えた結果、“ダンジョン”という魔素を吸収して成長する機能(?)を活用することに。
③運営者としてキミを選んだんだー。
ふむふむ。
「分かった?」
「分かりましたけど、運営とかってどうやるんですか?」
「某SLG的な感じで。」
「リアルタイムなのは苦手だったのでちょっと…」
「大丈夫!頼れるナビを付けるから!」
「おお?」
ワクワク、ワクワク。
我ながらノリが良すぎます。
突っ込みどころがたくさんです。
「…っと、もう時間切れだネ。じゃあね、頑張って!」
「はーい、頑張りまーす。」
金髪の女神様はキラキラ輝くお星様になりました。
なんとなく、その星のカケラ的なものを回収してみました。綺麗だから後で部屋に飾ろう。
「さてと…」
ナビって何ですか?