End roll
静まり返った星空の下。
血だまりの中に横たわっていた男が、ごほ、と噎せる。
「あー……痛ってえ……」
「今回もまた派手にやられたようだな」
その声に男が首を動かすと、のそりのそりと近づいてくる獅子の姿が見えた。その背から、ぴょこりと蟹が飛び降りて、
「うわあ……いたそう」
と、男の傷口をさすりながら星のような涙を浮かべた。
「まあ、ぼちぼちな。俺もそうだけど、お前は大丈夫か？今日は踏まれなかった？」
「ううう、踏まれた……今日で通算連続踏まれ記録更新だよ」
「そうかそうか。それは大変だったな」
男は蟹の頭を撫でながら、優しく言った。
「ううん。そっちの方こそ、毎回毎回お疲れ様」
「はは、ありがとうな」
「いいのよ、そんな奴の心配なんてしなくても。ぼうやと違って、こいつは好きでやってるんだから」
ぬるりとどこからか現れた海蛇の辛辣な物言いに、男は苦笑する。
「こりゃあ手厳しい」
「事実じゃないの」
海蛇は、ふん、と不満げにしつつも、痛みを和らげる麻酔を舌で蟹と男に施している。
「それにしても」
輝く尾の先で男の傷を癒しながら、獅子が嘆息した。
「あの『少年』は、何度来ても懲りぬな。その為に生み出された俺たちが言うのもなんだが、心配になる」
獅子の言葉に男は少し考えた後、へらりと笑った。
「まあ、何も知らないままでいられるんなら、ハッピーなんじゃねえのかな」
登場星座紹介
蟹/かに座
黄道12星座の一つ。
夢の中では、主人公の”悲しみ”の具現化。
最近は、夢の中で主人公に踏まれる確率が8割超で凹んでいる。
背中の甲羅の真珠は、M44・プレセぺ星団。
獅子/しし座
黄道12星座の一つ。
夢の中では、主人公の”怒り”の具現化。
基本的に怠惰で、一日のほとんどを寝て過ごしている。
胸元の心臓に当たる宝石は、一等星レグルス。尻尾には、春の大三角の一つ・デネボラがある。
海蛇/うみへび座
全天で最も大きな星座。
夢の中では、主人公の”憎しみ”の具現化。
主人公のことを『愚かでかわいい』と気に入っている。
首元の橙の宝石は二等星アルファルドで、意味は『孤独なもの』。
男/ヘルクレス座
ギリシャ神話に登場する12の冒険で有名な勇者・ヘラクレスにちなんだ星座。
夢の中では、主人公の”敵”に対するイメージの集合体。
主人公に殺されることが存在意義のため、殺意を煽りすぎてよく海蛇に怒られている。
頭に当たる星の名前は、ラス・アルゲティ（ひざまづく者の頭）。
僕
主人公。
現役教師。正義感が強いことで有名で、生徒からの信頼も厚い。
学生時代から不眠症で通院している。
