A先輩と後輩ちゃんの日常。
4年生の大学を卒業し、希望していた会社に無事入社。
田舎から上京したばかりで戸惑う所も多いけれど、新生活は割と楽しい。
この調子で仕事も頑張ろう、適度に。
そ意気揚々と敷居を跨いだところで、部長から申し訳なさそうに告げられた一言。
「君の指導係は、あの人なんだ…」
どうやら怖いと評判の人らしい。
臨むところじゃないですか!!!!
かかってこいってなもんですよ!!!!
そんなこんなで、私が会社で奮闘するお話し、らしいです。
かしこ。
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
後輩ちゃんこと佐藤知佳と申します。以後お見知りおきを。
あ、『ちか』と読みます。
『ともか』ではありません。
『かずか』でもありません。
「佐藤、次こっち」
乱雑に積み上げられた段ボールとファイルと紙の山。
会社の3階の隅っこに位置する、ここは資料室(という名のごみ置き場にしか見えないけど)。
その隙間から、ひょっこりと顔を出したA先輩こと赤根 愁先輩。
『あかね しゅう』先輩です。
「はい!」
書類を抱えながら寄って行くと、その上に乗せられるファイルが2、3冊。
重たくはないけど前が見えなくなってきたぞ?
「ちょっと見ねぇ間にまた汚くなってっし…この前整理したばっかだろうがよクソが…」
赤根先輩は、怖い怖いと会社で有名だったりする。
私はあまり怖いと思ったことはないけれど、まあその理由も後々判明していくんでしょう、きっと。
私と赤根先輩は、総務部に所属する。
総務部とは、要は何でも屋さん。
雑用相談なんでもござれな部です。
何故私たちがこんな(なんて言ったら怒られるから、心の中で留めておくのだ)所にいるのかというと、企画部の人に過去の資料の収集をお願いされたから。
普段ならそんなことはしないんだけど、どうやら資料がたらい回しにされた挙句、総務部の人が資料室にしまったらしい。
でも誰も覚えがなくて、困っていた所に私と先輩が通りかかり、
『資料室の説明、佐藤さんにした?あ、してないの?そうなんだーじゃあついでに!ついでに行って資料捜してきてよよろしくー!!』
と見送られたわけです。
貧乏くじ引いたぜ、へへっ。
そんなこんなで資料を捜すけれど、これがなかなか見つからない。
かくれんぼだな、かくれんぼなんだな。
おーにさーんこーちら、てーのなーるほーおへ。
あれ、この場合鬼って私たちかな、まぁいいか。
そんな風に意識を飛ばしながら(真面目に捜してますよヤダナー)、何の気なしに見た机の上。
…あれ、これじゃない?
「先輩、もしかしてこれじゃないですか?」
「あ?お、それそれ、よくやった。誉めてつかわす」
「ありがたき幸せ!」
扉を出る時には先に出て、ドアを抑えてくれる。
そして資料はほどんど先輩の手の中。
本当に先輩が怖い人なのかどうか、まだまだ調査が必要なようです!