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無題シリーズ  作者: 自由帳
2/3

無題、星の綺麗な屋上にて

「今日は星が綺麗だね」

 そうやってありきたりな言葉を並べて、彼女は俺の方に微笑んだ。

「……別に、実家にいた時の方が綺麗だったし」

「あ、そう言えばK君は山育ちなんだっけ」

「今どき山育ちって言い方も、違う気がするけどな。中二までド田舎だったよ」

 今日は何で、こんな廃れたビルの屋上に来ているのか。それは簡単な事、帰ってもつまらないからだ。

 俺もこいつも、帰ってもつまらないから、つまらない者同士集まっているだけ。

 なんてことの無い、模範的なボッチの夜だ。

「Yは今日、何時に帰るんだ?」

「分からない。本当は帰りたくないしね」

「……それじゃ警察のお世話になるぞ」

 俺みたく一人暮らしならばいいが、Yの場合は実家暮らしだ。

 まだ高校生の娘が家出なんて、全然笑えない。況してや見つかった時に男の俺と一緒となると、中々悲惨な結果を産みそうだ。

「心配無いよ、あの人たちは私が居なくなっても気づかない」

「自分の子供居なくなって、気づかないわけないだろ」

「気づかないよ、実際私、二週間家出したことあるし」

「ふーん……で、その時は?」

 Yは星の綺麗な空を見上げて、「無反応だった」と、無機質に答えた。

「そうか……」

「うん、だから私が家に帰らなくても、学校にさえ行ってれば問題ないの」

 中々、悲しい話だ。悲しすぎて、同情で泣きそうになってしまいそうだ。

 と、そんな事を白々しく口にした。

 実際適当に返答したので、なんて答えていたかは分からないが、Yはその言葉に対して、「もう慣れたけどね」と苦笑した。

「でも、そろそろ冷えてきたし帰るぞ」

「……うん」

 ベンチから立ち上がり、微妙な高さの屋上からこの都会を見渡す。

 見渡すと言っても、ビルだらけで何も見えていないのだが、雑音の中に混じって電車の通過音が聞こえた。

「こっから飛び降りたら、楽になれっかな」

「無理だよ、K君ビビリだし、まずこの高さじゃ怪我して苦しいだけだよ」

「……使えないな、ここ」

「だからテナント募集が終わらないんだよ」

「俺たちが簡単に入れるくらいだし、管理もろくにしてないからな」

「そのおかげで、私たちは居場所作れるんだけどさ」

「いや、別にここ以外にも色々あるけどな?」

 と、こんなふうに話していると中々幸せなカップルに見えませんか。

 場所こそ殺風景だが、都会にしては、星はそこそこ綺麗に見える。見方によってはロマンチックなデート風景じゃないだろうか。

「じゃ、また明日」

「うん、じゃあねK君」

 ……という、オチの無い家出少女と俺の話。

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