第七話 応接室内の出来事 その2
書き貯めが55000文字程あるので、十一話まで一日一話ずつ投稿してみようと思います。
俺はルルスを若返らせた手順で、ナーヤさんを若返らせることにした。
全ての細胞を掌握した所で、俺は驚愕の情報を得ることになる!
バ……バカな……スリーサイズの情報が細胞から伝わって来るだとぅ……まさかの出来事に狼狽える俺。
ナーヤさん、本当にスイマセン。故意じゃないんです。断じて違うと宣言します! DA・KA・RA許してください。何でもしますから。
けど内心は、(ヒャァァホゥゥゥイィィィィ――――――――――――――――!!!)と猛り狂ってますが。 ムフフ。
俺の猛りが収まると同時に、ナーヤさんの若返りが止まった。
「ナーヤさん。この辺りで、いかがでしょうか? 十八歳位で止めて見ましたが、まだ若くなりたいなら望み通りにしますけど?」
「い、いえいえいえ、十分です! どうもありがとうございます。エリク様」
「まさか本当に若返るなんて……どうやら本当のようですね……信じられないけど、信じるしかないわね……」
ナーヤさんは、自分の顔や素肌を触りながら肌質を確かめて、うっとりした表情をしている。
背丈は、ほんの少しだけ縮んだだけで余り変化が見て取れないけど、顔立ちが童顔の為、子供っぽさが残っている。
スタイルは変わらない様に調整したおかげで、大人の空気を醸すクールビューティーな美女からクールな美少女にクラスチェンジした形だ。
一方、エミリア姫は、自分を貶める為の嘘と思っていたが、ナーヤの若返る瞬間に立ち会い、俺やルルスが話した事が偽りない事実と信じてくれたようだ。
周りのメイドさん達は、ナーヤさんに祝福の言葉を掛けており、感動したナーヤさんは、涙を流して喜んでいる。
グッジョブ! 俺! いやぁ、いい事すると気持ちいいよね。
清々しい気分に浸っているとイザベラさんが、耳を疑うかのような発言をした。
「ナーヤ、貴方エリク様と結婚を前提に付き合ってみたら? どうせここのお城、誰も近寄らないし」
またもやメイドさんから爆弾発言が! 何? ここのメイドさん達、爆弾沢山持ち歩いてるの? 爆弾落とすタイミングが急すぎやしませんかねぇ。
それに、この体はパラチなんだからさ…………ほら、言わんこっちゃない、ナーヤさん困った表情してるじゃん! 犬耳も垂れ下がって、めっちゃ可愛いけど。
けど、いつかは、パラチの体から出て行かないとな……俺自身の肉体が欲しいよ~。助けてルルス博士~。
「所でルルスさん、質問があるんですが」
「エリク様、何ですか? 改まって、気味が悪いですよ?」
ルルスは俺の何かを察知したのか顔を顰めている。
「自分の肉体が欲しいんだけど……無理かな?」
「ん~、エリク様に出来ない事は、無機物質を作る事が出来ないだけです。後は、全て可能と考えていいです。中には例外もありますが、生命を創造する事は可能です」
はぁっ!? 何言ってんの、この人!? ちょっとルルス君の言ってる事が突拍子過ぎて理解が追い付かない。
待って、ちょっと待って、さも当たり前かの様に、「生命の創造が可能です」って何ですか? 俺、神にでもなった訳? マジかよ……信じられないけどルルスの言ってる事は全部、実現できている。
「エリク様、そこらの生物と一緒にしては行けません。自然を超越した者、理から外れた者と認識するのがいいかと」
「それさぁ、俺が化け物って言う事と同じなのでは?」
「確かに化け物でしょう。ですが、用は力の使い方ですエリク様。パラチ様は力の制御が出来ず魔王と呼ばれ化け物扱いされていますが、エリク様は、魔力制御が出来ており何も問題ありません。寧ろ、その生命の神秘に特化した力を利用し、皆を助ければ神として崇められるに違いありません」
神として崇められるとか、俺はどこかの怪しい宗教の教祖か! 迷走するぞ! 冥想するぞ! メイソウスルゾ! そんなものに、俺はなりたくないぞ! 俺は、何も考えず「ボゥー」として怠惰に、もとい平和に暮らして行きたいんだ。
面倒ごとは、ノー、サンキュー。全力で拒否します。
ルルスに俺がやりたい事を話すと、二つの注意事項と一つだけリスクがある事を警告してくれた。
第一に、生命を創造し、その肉体に移る場合、俺の元になってる『エリクシール原液』の七十%以上を移さないと、俺の自我が保てない事。
その為、二体目の生命の肉体を作る事が出来ても難しい命令は出来ない。
第二に、残りの『エリクシール原液』をパラチに残しておけば、俺の意志で魔力制御が出来ると言う事。
理想は、一割残して置けば間違いないので、俺とパラチで、九対一がいいとの事。
最後にリスクについて、ルルスがまだ解き明かしていない『異質物の核』の力で、突然変異的に俺が意志を持った様に、俺の意志に反する者が生まれるかもしれないとの事。
その力を使い、我々に牙を向く可能性も考慮して、なるべく生命創造はやらない方がいいと釘を刺された。
「よし、だいだい理解できた。ルルス君、ありがとう」
「エリク様、できたら成功してからお礼を……まだ解明できていない所もありますので……」
ルルスは凄いな、有能通り越して天才だな! 俺がやろうとしてる事を聞いて、問題点を次々と指摘してくれる。
(フッフッフッ、当然だ! 余が見込んだ人物だぞ)
(流石パラチ! で、九対一のルルスプランで行こうと思うけど問題ないよな?)
(ああ、そのプランで構わん。余も自由に体を動かしたい)
パラチの同意も得たので、俺は第四回エリクシール実験を開始する事にした。
お題は、生命創造。
まず俺は、自分の肉体を形を創造し、あるイメージからその原型を思い浮かべる。
次に、ルルスの体から俺『エリクシール原液』の約九割を外に移動させる。
床に流れ落ちて、赤いじゅうたんに染み込む俺。そこから一か所に集まる様にじゅうたんのシミが移動していく。
皆の視線が俺に釘付けになっている! そんなに見つめられると、ちょっと照れる。
そこから、上を見上げながら一か所に集まっていたら、偶然にもメイドさん達のスカートの中が見えてしまった。
偶然だから仕方ないよね? 俺は素晴らしい光景を眺めながら一か所に集まり、ゼリー状になって形を整える。
まるで、某映画の液体人間の様に俺は、人の肉体を形成した。その液体人間との違いは、服まで生成できなかった点にある。
生まれたばかりの恰好、つまり裸だ…………
「「「キャァァァァ――――――――!!! 」」」
ですよね~、女性陣の叫び声が凄い! 瞳は下半身に釘付けで、中には顔を両手で隠してるけど隙間から「チラッチラッ」と見てるのが分かる。
俺は下半身を手で隠し、ダッシュで分厚い赤いカーテンに隠れた。そこから顔だけ出し、服を持って来るようメイドさんにお願いをした。
(ああああ~~~~~、生き恥だぁ~! これは黒歴史になる!! 穴があったら入りたい。そして俺を埋めてくれ! 美女、美少女軍団の御前で裸とか変態じゃねぇーか!)
(エリクよ……余は、掛ける言葉が見当たらぬ……許せ)
分かってる、分かってるよ! 俺も逆の立場だったら掛ける言葉が無いし! もしも、「為せば成る!」って言ったら「ならねーよ!!」って言いたい。こればっかりは無理だ! 間違いない。
(そう言えば、パラチと脳内で喋れてる? まだ寄生出来ているのか?)
(そうでなければ、余の魔力制御など出来まい)
俺は新しい肉体に乗り移ったら、脳内会話出来なくなると思っていたが、勘違いしていたようだ。
と言う事は、俺が一割でも寄生して入れば、魔力、身体操作ができると言う事になる。
もしかしたら、ほんの少し量で寄生できるのかも知れない。今後、確認する実験をしないとな。
しばらくして、メイドさんが服を持って来てナーヤさんと内緒話をした後、持ってきた服をナーヤさんに手渡して、カーテンに包まってる俺に、ほのかに顔を染めながら渡してくれた。
カーテンの裏側で、渡されたタキシード風の服に着替え、俺は再び元の立ち位置に戻っていき、女性陣の前で土下座した。
「大変、失礼しました。まさか、あんな落ちがあるとは露知らず、本当に申し訳ありません」
「だ、大丈夫です。皆も気にしてません。エリク様、頭をお上げください」
ナーヤさんの言葉に強く頷く女性陣達、俺の謝罪を聞き入れてくれる。現世ならドンビキされるか、フルボッコだろう。ここにいる女性達、マジ天使だ。
数人さっきの俺の姿を想像してか、顏の赤みが消えていない。
ナーヤさんもその一人で、その可愛い顔を赤く染めているが、理由はもう一つある。
それは、このイメージした俺の姿にある。
見た目は十八歳辺り。背は、百六十前後。髪は、サラサラのモテ髪ショート。瞳は髪と同じくブラックで、顏は幼さが残るイケメン。
肉付きは、程良く引き締まっており生前と全く変わりなく動きやすい。
なぜ、この様な見た目を選んだのか、理由はナーヤさんを若返らせる時に、理想の男性像が細胞の情報から伝わって来たからだ。
俺は、この世界の人の事を全く知らない為、ナーヤさんの好みを参考にした。
なので、ナーヤさんはドキドキが止まらない状態になっている。
「ナーヤさん、どうかしましたか?」
俺はナーヤさんの事情を知っているので、煽ってみる事にした。
「なななな、なんですか? 別に、どうもしてい、いませんよ!?」
ナーヤさんが、明らかに挙動不審になっている。
感情を表しているのか、犬耳が忙しなくピョコピョコ動いている。クールな人がキョドると「ギャップが凄くて萌える」って聞いたけど、確かに「グッ」と来る物があるな。
そこに、感づいたメイドさんが居た! イザベラさんである。この人、俺の見た目がナーヤさんの好みって速攻、気が付いてた気がする。なぜだろう?
「ナーヤ、エリク様の見た目が以前貴方から聞いた、理想の男性像にピッタリ一致してるのだけれど……」
「アァァ――――――――アァァ――――――――!!!」
なるほどね、イザベラさんはナーヤさんから直接、好きな男性像を聞いていたのか。
それにしても、ナーヤさんがこれ以上ない声を上げて、必死に抵抗してる姿が痛ましく見える。
これ以上苛めたら、ナーヤさんが壊れてしまいそうだ。
何とか落ち着かせてやりたいのだが、原因が俺なので施しようがない。
「エリク様、ナーヤの姿を見てどう思います?」
「えっ、素直に可愛いと思いますけど?」
俺の言葉を聞き、ナーヤさんの顔はリンゴの様な色付きになっており、湯気が立ち上ってる様に見える。
あと一言で「ボン」と音が出てノックダウンしそうな雰囲気だ。
イザベラさんは、悪そうな笑顔を浮かべながら「うん、うん」と頷き、策の大詰めに掛かろうとナーヤさんに近づきボソボソと耳打ちした。
何を話したのか分からないけど、ナーヤさんはイザベラさんの言葉攻めにより意識を失い、体から力が抜けて崩れ落ちようとした所で、イザベラさんがナーヤさんの体を支えた。
ナーヤさんは、ピクリとも動かない。
「イザベラさん……ナーヤさんに何を話したんですか……」
「う~ん、ちょっとナーヤには刺激が強すぎたみたいね。押すより引けば良かったのから?」
「知りませんよ、そんな事……」
「エリク様、申し訳ないのですがナーヤを引き取って下さい」
俺はイザベラさんからナーヤさんを引き取り、お姫様抱っこで、すぐ傍のソファに寝かせようとしたら、イザベラさんから声を掛けらた為、そのまま振り返る。
「エリク様、ナーヤの事、よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
イザベラさんに追随するかの様に、メイド達が一斉に声を揃え、俺に対してお辞儀をした。
一糸乱れぬメイドさん達の連携を目の当たりにし、素直に見入ってしまった。
今のやり取りは計算つくされていたのか! メイドさん達有能すぎる。
思わず口で「すげぇ」と言ってしまい少し動揺してしまったが、気を取り直しナーヤさんを五人は座れるであろうソファに寝かせ、俺はパラチが引き起こした『エルキア王国お姫様誘拐事件』の話を進める事にした。
前話ではルルス君を、今回はナーヤさんを弄ってみました。
修正する場所が無いか最後に点検するのですが、読み返すと笑ってしまうw
自分では笑ってしまっても、読者の皆さんがどう感じているのかが分かりません。
分かる能力があれば是が非でも欲しい!
以前にも告知した通り、シリアスな場面が無くギャグっぽく進んでいく予定です。
ちょうど今、シリアスな回を書いてるのですが……どうやら自分はシリアスは得意でないらしく中々手ごわい……