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俺は寄生体(エリクシール)である  作者: おひるねずみ
第一章 国名宣言編
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第十四話 空を漂う宝箱 前編

 パラチ城から飛びたった直後


「「きゃぁぁぁ――――――!!」」

「パラチィィィ―――――! 何がすべて任せろだぁぁぁぁ―――――! 早すぎだ、もっとスピードお・と・せ!」

「むぅ、す、すまん」


 耳元でナーヤとエミリア姫に叫ばれた為、耳が「キンキン」する。

 パラチの奴、ジェットコースターみたいに、空に向けて飛び上がりやがって。

 三人共、宝箱の天井に頭をぶつけて、凄い痛がってるので、俺は液体を霧状にして、俺を含む三人の痛がってる部分に染み込むように体から噴射させる。

 たった、二、三秒で痛みが引いたので効果の程は、素晴らしい。

 痛がる痛み位なら霧状でも効果があるな、なら俺がどうやって治療してるかも分からないはず。


「ッッ!? あれ、痛みが無くなった……?」

「私も痛みがスッと消えました。これは、エリクが治したんですか?」


 二人共、俺がどうやって痛みを取り除いたのか分かってない。よし、これなら俺を知らない者には絶対バレない。問題点、一つクリアだ。


「そうだよ、この力を使って治療する予定だから、城の人達には教えない限り、治療した方法が判らないんじゃないかな。真実を知る人間は少ない方がいいし」


 二人は、俺が使用した方法を考えて話し合っている。

 そこに、パラチが横から介入して来た。


「スピードを落としてみたが、これ位でいいか」

「いいんじゃない? このスピードを維持して進行してくれ」

「分かった。では、ゆっくりと空の景色を楽しむがいい」


 パラチに言われて景色を眺めて見る事にする。

 宝箱の穴から下の景色を見てみると、道と言う道が何も無い! なんぞこれ! どこの秘境だ。

 木々が永遠と生い茂っていて、まるで樹海みたいに森が広がっている。

 途中で川が流れているのが見えるが、山脈の方から水が流れ落ちて川が出来てる様だ。

 これを、整備したり耕したりすると時間が掛かりそうだな、木材は苦労しなくて済みそうだけど、一筋縄では行きそうにないな。


「ナーヤ、この辺の事を詳しく教えてって!? どうしたのナーヤ!?」


 俺がナーヤを良く観察して見ると、いつの間にかうずくまっていた。

 さっきまで、元気だったのに何が起きたんだ! 俺の治療に不手際があったのか!? 


「すいません、私、高いとこ……苦手みたいです……気分が……」


 良かった、俺の所為せいじゃ無かった。

 いやいや、良くないな、ナーヤの症状を治してあげないと。

 ナーヤが顔を青白くさせて気持ち悪そうに横になって倒れる。

 エミリア姫はナーヤの背中をさすっているが、一向に症状が改善しない。


 気持ちによる症状は、どう治療したらいいんだ? 痛みなら治療可能だけど、気持ちの改善の仕方は知らないぞ。

 まあ、何もしないよりはマシかな? そう判断しナーヤに回復霧ヒールミストを飛ばして様子を見てみる事にした。

 しばらくすると血行が良くなり顔色がいつものナーヤに戻っていった。


「二人共ありがとうございます。もう大丈夫です。だいぶ楽になりました」

「無理しないで、気分が悪くなったら遠慮しなくていいから」

「いえ、外の景色さえ見なければ恐らく平気ですので、先程の質問に私で良ければ答えますね」

「大丈夫そうなら、お願いします」


 俺も興味津々だが、エミリア姫は外の世界が初めてだからか、ナーヤの方を真剣な眼差しで聞き入ろうとしていた。

 

「まず、今のいる場所は大陸の中央に位置しており、五十年前に起きた謎の魔力による爆発によって、更地になってしまったようです。

 その魔力の欠片を生えて来た木々が吸いとり、異常成長し今現在『イグラスの樹海』と呼ばれていれ、危険な魔物が多数生息する危険地帯となっています」

 

 五十年前の謎の魔力爆発ってアレだよね。

 きっとアレだね、十中八九、パラチさんの仕業だよね……


「次に、今向かっているエルキア王国は東に位置しており、麦の生産が盛んに行われ、博愛をモットーにした王国で知られています。

 向かう途中にそびえる山脈の名前を『フィブロス山脈』と呼び、険しい山脈地帯が行く手を阻むので、通常はフィブロス山脈を南から東にまわり込むように迂回してエルキア王国に向かうのですが、パラチ様には関係が無いですね。空を飛べますので……」


 自分の力だけで空を飛べるって卑怯だな、ある意味、戦術兵器じゃね? 絶対、敵に回したくないわ~。

 気分次第で国を粉々に出来るパラチさんに、周辺各国が怖がって税を納めるのも頷ける。

 まぁ、パラチはそんな事しないけど。してたら、もう世界が滅んでるだろう。


「ナーヤ、他の隣国はどうなってます?」

「はい、北に畜産が盛んな『メルフィル公国』南東に冒険者ギルドの本拠点が点在する『ユウナサ公国』南西にエルフの女王を頂点とした『グリン王国』西に、お米を生産していて国力が一番低い『アヌセヤ公国』があります。

ちなみに私は、アヌセヤ生まれです」


 ナーヤの生まれは、お米を生産している地方か、これならナーヤと一緒におもむき交渉をすれば、お米の種籾たねもみが貰えそうだ。

 次に例の『ポルポル』だな! めっちゃくちゃ美味かったから、元がどんな鶏なのか非常に興味がある。メルフィル公国を治めている、お偉い様に頼んでみよう。

 後、冒険者ギルドってあるのか、魔物もいるようだし当然か? そういえばパラチは魔族だったよな? 

「ナーヤの説明で、隣国の事は良く分かったよ。ありがとう。ところで、魔物と魔族の違いって何かあるの?」

「それはですね、魔物は知能が無く、なりふり構わず襲ってきますが、魔族は知能が高く会話が成立します。要は、会話が出来るか出来ないかの違いではないでしょうか?」

 

 ふむふむ、理解した。

 その危険な魔物が、わんさかいる訳だな、俺が造ろうとしている国に。

 これは丁重に滅して差し上げないと、安全に人間が住めそうにない。

 この後、俺とエミリア姫は交互に質問を繰り返した。


 質問をしていて、いい時間が経った時、俺達が乗る宝箱が急に勢いをつけて一回転半した。


「「キャァァ―――――!」」

「ちょっと、パラチさん。お願いだから空から落とさないで下さいよ! マジで!」


 宝箱は動きが止まり、一時停止している。

 パラチがその場でストップしたようだ。


「パラチ、どうした?」

「エリク、お客さんが来たようだぞ」


 エッ、空中で客が来た? 何か嫌な予感がしまくるんだが! ナーヤとエミリア姫も不安がって二人で抱き合っている。百合ですか? いいぞ、もっとやれ。

 少しすると、目の前に口から小さい牙が二本出して、黒い服をまとった吸血鬼見たいな奴が数人こちらに向かって飛んでくるのがパラチ視点で見えた。

 その者達はパラチの眼前に停止する。


「久しぶりだな? 一年振りか? パラチ」

「フン、俺が事件を起こしたからエルキアを視察して来たのか? ベルトラン」


 どうやら、話を聞く限り知り合いらしい。

 だが、ナーヤとエミリア姫はガタガタと震えだしている。

 やっぱり、パラチと親しげに話してるからヤバイ奴だよね? こんな空中で戦闘にならないよね?


(パラチィ、そこの人どちら様?)

(ん? 余と同じ魔王だぞ?)


 ちょっと待て! この世界に生を受けて一日経っていないのに、二人目の魔王に会うってどんな確立だ? 俺のリアルラックは、最底辺なのか!


(パラチ! この世界には魔王は何人いるんだ!? 答えろ!)

(力がある奴が余を含め五人、後は適当に魔王を名乗っている奴もいるが余には関係ない。逆らうならば消すだけよ。まあ、魔族は力こそが正義だから逆らう奴はいないがな)


 ぶっ。パラチさんの考えが物騒すぎる。

 それに、魔王ってそんなに存在してるの!? もう人間側ムリゲーじゃん。パラチクラスが五人もいたら、滅びを待つしかない。

 俺が脳内会話してる間にも、ベルトランと名乗る魔王はエルキア王国で起こした出来事をパラチに尋ねていた。


「パラチ、何故エルキアに再び行くのだ? それにそんな宝箱を持って。中から心なしか女性の匂いがするぞ」

「チッ、お前の鼻は誤魔化せんか、エルキアに姫を返しに行くのだ。邪魔をするなよ?」

「ハァッ!? パラチ! お前、気は確かか!? 何故、奪った者を返しに行くのだ!? 理解できんぞ! お前はそんな殊勝な事をする奴では無かったはずだ!」

「……いずれ解る時が来る。それまでは秘密にしておきたい」


 ベルトランは宝箱をじっと見つめている。

 あれ? 魔王さん、俺の事を見つめてるの? 宝箱の穴をほんの少し塞ごうか? ちょっとぉ~、そんなガン見しないで、魔王さん達さ、皆ホモなの!? ねぇ、ホモなんでしょう!? 白状しろぉぉ~~!」


「おいパラチ、この箱に入ってる奴から妙な気配がするんだが? 何者なんだ? 本能が警告してるんだが?」

(エリクよ、どうする? コイツは、こうなったらしつこいぞ)

(俺が出てかないと駄目か?)

(下手すると戦闘になる! 断言しよう)

(分かった。何とかする)


 ここで戦闘になったりでもしたら、箱の中にいる俺達は、洗濯機の中で「ゴロゴロ」させられた状態になり、非常に危険なのでベルトランに能力以外の事を少しばかり、ばらす事にした。


「パラチ、このエリクと言う奴の喋った事は本当なのか!? お前がコイツの下に付くって……マジか?」

「付く……ではない。もう既に余はエリクの軍門に下っている。もしエリクに敵対するのであれば、容赦なく潰すつもりだ。他の魔王にも言伝を頼むぞ?」


 ベルトランは驚愕の表情をして、引き付けを起こしている。

 当然だよな、自分と同格の魔王が知りもしない赤の他人の下に付くって言うんだから、信じられないのも無理はない。

 問題は、このあと俺の実力を知りたいと言って、ベルトランが戦闘行為を仕掛けてくるかも知れない事だよな。

 パラチの両手は鎖で塞がっているから、そうなったら俺がベルトランと配下達に寄生して自由を奪うしかない。

 まあ、もう既に入り込んでいる訳だが、戦闘ならない事を祈ろう。


「おおよその状況は分かった。だが、偉い事になるぞ、これは。パラチ、お前が他人の下に付くなど、誰もが予期出来なかった事のはずだ」

「だろうな、余自身も驚いている。今は急ぎなので、これで失礼する」

「ああ、届け物を早く届けに行く事だな。騒ぎは収まってはいるが、昨日は石化が解けてなく、王がたたずむ玉座の間で、重鎮達が嘆き叫んでいたぞ」

 

 ベルトランの話を聞き終り、無事何事も無くやり過ごし、俺達は安堵あんどした。

 危なかった、非常に危なかった。もし、戦闘になったら宝箱の中は、虹の液体で溢れるとこだったぜ。 ギリ、セーフだな。

 ナーヤとエミリア姫は安心したのか、抱き合っているの止めてしまった。百合と言う名の光が急速に失われていく~。


「エリク? 何を残念がっているんですか?」


 ヤベェ、顏に出ていたか? ナーヤとエミリア姫の顏は笑っていても、目が笑ってない。

 目は口ほど物を言うし、今後気を付けよう。


「別に残念がっていないよ? パラチ、さっさとエルキアに行こう」


 ナーヤとエミリア姫にジト目で睨まれるプレイを受けながら、エルキア王国に向けて進んでいく。

 速く到着してくれ~、正直辛い。このままでは俺の精神がエルキアまで持たない。

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