第十話 お食事会
執筆していた時、お菓子を食べてた記憶が。
俺はパラチが居る五階に、イザベラさんとナーヤは、料理の手伝いに厨房へ向かった。
今現在、改装を終えた五階の部屋に、俺は王族が座るような豪華なイスに座って料理が来るのをパラチ、ルルス、エミリア姫の四人で八角形の大きなテーブルを前に待っている。
天井には複雑な細工を施された見事なシャンデリアがあり、パラチが魔法で明かりを灯していた。
俺は、この世界で初めて魔法を見たので、三人に聞こえる様に魔法の事を聞くと、魔法に付いて詳しく教えてくれた。
明かりを灯す魔法の事を『ライト』と言い、野球のボール二個分の大きさで、様々な色の光球を作り出すことができ、魔力の強弱で光源を調節出来る。
平たく言えば、イルミネーションを作り出せる魔法と解釈してもいいかもしれない。
国の祝祭事などに、壮大に使用され生活必需の魔法であるんだそうだ。
他にも、火、水、氷と、生活に必要な魔法があり、誰でも使える様に魔法を習得する施設があるらしい。
魔法の事を聞いていると、ドアに「コンコン」とノック音が響き、メイドさん達が料理を運んで来る。
テーブルの上に様々な料理が置かれていき、ナーヤ以外のメイド達は部屋からそそくさと退出し、その場を後にした。
部屋の中に、料理のいい匂いが充満する。実に、食欲をそそる匂いだ。
野菜料理3対お肉料理1の割合で、別の正方形のテーブルに置かれて、バイキング形式で好きな物を取っていく形式になっている。
一通り摘まみ終り、席について食事をする。
「ナーヤ、この料理の鶏肉は何て言うのかな?」
「は、はい、この『鳥肉』は、北に位置するメルフィル公国産の、王室御用達の厳選された鳥で、名を『ポルポル』と呼びます」
表面は、こんがりキツネ色に焼きあがって、見た目はローストビーフ風、肉の横に切り口が入っており、中には肉と触感が合わさるような野菜が、てんこ盛りにコレでもかと言わんばかりに敷き詰められていて、凝縮された甘みや旨みを引き出している。
肉を噛めば、肉汁が留まる事無く溢れ出し、濃厚味のフルコースが俺を襲う。
「これ、美味しすぎるんですが!? 何ですかこれは! 君達、いつもこのレベルの料理食べてるの!?」
ナーヤがテレテレしながら説明した、この『ポルポル』めっちゃ柔らかくて美味しい。
俺のお肉ランキングベスト一位の座に、夜空の星のごとく、光り輝くだろう。
今まで食べていたのは、果たして肉なのか? まさか! おわげなのか!? そんな疑問を思わせる美味しさだった。
「美味いだろう? メイドの一人が宮廷料理をマスターしててな。余の食事は、毎日こんな感じだ! 余は肉より野菜が好きなのでな、野菜を多めにして貰っている」
パラチは自分自身が作ったかの様に、鼻高々しながら俺に自慢していて気分を良くしている。
まさかパラチの奴が、ベジタリアンだとは意外だった。
だって魔王だよ? お肉大好き! いただきます! 脇目もくれず、肉に飛びつきそうじゃん。ゾンビの様に。
見た目も西洋人っぽいしさぁ、肉好きと完全に思ってたよ。
俺自身も、どっちかと言うと野菜派だから好みが合うな。
「確かにこれは美味しいです。流石、メルフィル産の『ポルポル』ですね」
エミリア姫も『ポルポル』を大変満足しており、至福の表情をして食事を満喫している。
それにしてもマジかよ、毎日こんなレベルの料理が出て来るのか!? 食べ過ぎて運動しないと太りそうだな、注意しよう。
それに今、気がついたが、パラチとエミリア姫が仲良くなっている!? 誘拐された身とはいえ、こんなに早く打ち解けられる物なのか? それに目と目が合って会話していて、いい雰囲気になっている。
俺が応接室でナーヤに告白してた時に、何かあったんだろうか? 二人から視線を逸らし、今度はルルスの方を見てみる。
何だ? ルルスの奴、泣きながら食事してるぞ?
「ルルス、どうしたんだ? 辛い事があったのか? 愚痴なら俺が聞いてやるぞ?」
「いいえエリク様、嬉しくて泣いておるのです。以前の年老いた私では、歯の噛む力も弱く胃も弱っていた為、肉を食べる意欲は無くなっていました。
ですが、エリク様の力で若返らせて貰う事によって、食欲が増して肉類が食べれる様になった事に、私は、むせび泣いているのでございます」
通りで人一倍、銀製のお皿に肉料理を載せて、凄いスピードで食べてるなと思ったら、若返ったお陰で食欲が戻ったからか。
けど、どうして子供の年齢を選んだんだ?
「ルルス、一つ聞いていいか?」
「何でございましょう、エリク様」
「どうして七歳に年齢指定したんだ? 子供の見た目だと、舐められるだろ? ルルスの事だから打算的な何かがあるのか?」
突然、ルルスの雰囲気が一変した。
嬉し泣きしてた顔が、子供が悪戯を行うかの様な顔つきになってる。
俺はルルスの地雷でも、踏んでしまったのか?
「エリク様の仰る通り、これには理由がございます。この姿を見て舐めてくれる方が都合が良いのです。誰も六十過ぎの老人とは思いますまい、足元を見て舐めてくれて大いに結構! その分、こちらの交渉が有利に運びます。
この見た目に騙される方が悪いのです。相手が見下した分、それ相応のやり取りをさせて頂きます。クックックッ」
ルルス君が悪い子になってる。
俺は、そんな風にルルス君を育てた覚えはないよ? だから優しく接して上げて、心を解して行かないとね。
今まで、ほんのすこ~しばかり、苛めちゃったのを何事も無い様に許して貰えるかな~。
服装がまだ、例の服装だし、絶対! 根に持ってらっしゃる!! あちゃー、これじゃ捻くれても仕方ないか。
さりげなく、詫びておこう……後で!
ルルスに謝る事を頭に入れ、そのまま食事を続けようとしたが、横にいるナーヤが、ずっと俺の顔を覗いて来るので、気になってしょうがない。
「ナーヤも食べたら? まだ沢山あるから一緒にどう? このままだと料理が余っちゃうし、勿体ないよ?」
「い、いえ、私の分は食堂の方に有りますので。それに、主様(パラチ様)とエリク様と一緒に食事する光景が、私には想像できません」
「それって、執事だから遠慮しているって事?」
「は、はい。そうなります」
フムフム、良し、決めたぞ!
「パ~ラチくぅ~ん。ちょっといい雰囲気の所悪いんだけど、聞いてくれるかな?」
「何だエリクよ? 言って見るがいい」
パラチの奴、エミリア姫といいムードになっている状態に、水を差された為か少し機嫌が悪いな、当然と言えば当然だけど。
俺もイチャイチャしてる場面を邪魔されたら「ムッ」とするから、人の事は言えない。
俺は何事も無い様にサラッと、その言葉を口にした。
「ナーヤを執事の任から解いていいかな?」
「お前がやりたい様にすればいい。そう言う約束だからな。エリク、お前は新しい国を築き、王になるのだろう? 何も遠慮はいらん。余は、それを支えるのみよ」
パラチの許可も得た事だし、大丈夫そうだな! 後は……「うぉ!」ナーヤさんが悲しそうな顔になって、今にも泣きそうになってる。
「わた……し…………クビ…………です……か?…………ううっ」
ナーヤさんは、大粒の涙を零しながらその場にぺたん座りして、座り込んでしまった。
しまった! 俺とした事が何て失態だ! 言い方を間違えた。
男は、稀に泣く女性の涙に弱いからな、それに女性の涙はいつ見ても、いい気分はしないな……罪悪感しかない。それが自分の手によって引き起こされたのなら、尚更だ。
「ナーヤさん、違うんです! 貴方は勘違いしてます! 確かに執事の任を解くと言いましたが、それは……クッ」
いざ、双方の目を見つめながら意識して答えるとなると、動揺してしまう。
ナーヤさんが下から、上目使いプラス本気の涙&つぶらな瞳で、俺を見つめて来るからだ。
これに抗える男はいないだろう。俺、ご愁傷さま。
「それは、ナーヤさんと一緒に料理が食べたいと言う一心で、意地悪く言ってしまいました。本当にすみませんでした。この通りです。許して下さい」
俺は素直にナーヤさんに謝罪し土下座した。それはもう、生前の和をお手本とする様な土下座だった。
ナーヤさんは何も答えない。
頭を上げて、ナーヤさんの表情を見ると、泣きやんだ顔で頬を少し膨らませている。
「ナーヤ、さん?」
「ナーヤと言ってくれたら、許してあげます」
「分かりました。フゥー。ナーヤ許してくれてありがとう。それと、俺の事をエリクって呼んでね?」
「フフッ、許します。エリク」
ナーヤに反撃する為に、ちょっかいを出したが、泣き止みからの満面の笑顔を魅せつけられ、見事に俺は、カウンターの『君の瞳に百万ボルト』を食らってしまった。
元が液体だから効果は、ばつくんだ! 細胞に電気が響き渡り、危うく感電死するとこだったぜ。戦艦で例えるなら、轟沈一歩手前だ。
その様子を一部始終、横に回り込んで観察している人達がいる。
「エリク、いい見せ物であった! 余は大変満足である! 続きがあるなら続けるのだ、遠慮はいらぬ」
「ナーヤさんも、あの様な乙女の表情をするのね。応接室で初めて会った時とは、偉い違いね。冷静沈着の執事だと思っていたのに」
「左様でございますな。私も今日、初めて確認しました。」
俺とナーヤの顔が、更に赤く茹で上がっていく。
パラチめぇ~、この続き何てねぇよ! あってもやらねぇよ! この部屋ではな!
「君達、見世物じゃないから、今の。恥ずかしいから、これ以上は公演しません。はい! 解散!」
「実に惜しいな」
「残念ね」
「さて、冷める前に食事を」
俺は手を「パンパン」叩き、散る様促すと、各々(おのおの)自分の席に戻っていった。
初の10話達成! 次は50話目指してコソコソ更新していきます。
10話だったので10時に投稿して見ました。
次の話も関連性良く11時に投稿しようと思います。
その次は12、13、それを24まで続ける予定です。