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魔物襲来後

 氷像はどれも自分が氷に包まれる事予想できていない格好だった。ある魔物は拳を振り落とす姿、飛びかかろうとする姿だっだ。どれも今にも動きそうだが、もう動く事はない。動けるのは冒険者だけだった。しかし、誰も動いていない。


 今の冒険者達の気持ちを言うならば、状況が信じられないという気持ちだろう。その思いが全員の足を止めている。冷気が包まれている平原に声が通る。誰も動いていない状況でその声は誰もが聞き取れた。


「終わったのか?」


 それに答える者もいない。しかし、行動で答えるかのように冒険者達は、剣を杖のようにし疲れを無くすように白い息を吐き、立てない者は冷たい草原へと尻をつけていた。

 そんな中、草原の氷を踏み潰しながら壁の方へと歩いていく2つの音が鳴り響く。その音はどちらも壁へと向かっていく。目的はどうやら同じのようだ。

 1つの音は氷をさらに砕くように飛ぶ。飛んだ衝撃でひび割れ、氷の粒が舞う。飛んだ本人は壁の上へと着陸する。

 もう一方の音は何も無い空から大地を踏み潰すかのように飛び、こちらも壁の上へと着陸する。

 どちらも1人の女性、沢谷光の方へと行き、同時に声をかける。


「凄いですね。綺麗な上にお強い」

「流石だ!」


 ディンはアッシュと同時に声をかけたのが気にくわないのか、沢谷を挟んで睨んでいる。

アッシュはディンが居ないかのように無視をし、沢谷光の顔を顔をじっと見ている。

 沢谷光はアッシュの行動が気になったのか、アッシュに言う。


「何か、お…れ、私の顔についてます?」


 沢谷光はアッシュの顔をじっと見る。アッシュは目が合うのが気まずいのか、横を向いて言う。


「いや、何もついていません。何も変わらず綺麗……いえ、何でもないです。唯これだけの魔法使ったので、体調は大丈夫かなと。お変わりなさそうで良かった」

「おい、アッシュ、無視するな!!」


 ディンはアッシュに怒鳴るように声を荒げた。しかし、アッシュはそれも無視する。ディンはアッシュの行動に対して、眉を潜めたが、襟を正すように沢谷光の顔を見て、真剣な顔で言う。


「さて、光。漸く事が終わったし、そろそろ返事してくれ。俺と付き合ってくれ」


 その言葉は凍った空気を一変にさせた。誰もが壁の上、沢谷光とディンに注目する。男性の冒険者は周りの冷たい空気が自分の体に纏わりついているかの如く、冷たい目で見ている。ある冒険者は聞こえない様に小声で「失敗しろ失敗しろ」と何度も呟いてる。女性の冒険者はこの状況に対し、静かに見ている。

 そんな中、アッシュは光の前に立ち、ディンに詰めかかる。


「どういう事ですか?ディン」

「どういう事も何も、俺は会った時に告白している。アッシュお前には関係ない話だ。邪魔だ」


 ディンは虫を追い払うように手を振るう。その事にアッシュは更にディンの方へと詰める。


「一様私もギルドメンバーの一員です。同様に光さんもギルドメンバーの一員です。貴方はユスラン教国の人、それも重要な位置にいる人。また所属している国が違う。付き合うにはいろいろ障害がある。だから関係ありますよ」

「個人の事までギルドは干渉するのか?はぁ何が自由で中立な国だよ」


 ディンはアッシュの言い分に鼻で笑う。アッシュはその事にムカついたのか、呆れたように息を吐き、言う。


「どうせ、貴方の事だから光さんの事を無視して、勝手に付き合う事を約束したんでしょ」

「俺は何もしてない!!何だ、やるのか!今日決着つけるか!?」

「良いでしょう。やりましょう」


 アッシュとディンは距離を離れて、互いに剣を抜く。見ていた冒険者は手を高々に上げて、2人の戦いを煽る。

 一方、当事者だった沢谷光はアッシュとディンが言い争いし始めた際、2人から離れて、壁の下へと降りていった。誰にも気付かれる事もなく。

 降りた時、ちょうど2人の剣がぶつかり、火花を飛ばしていた。火花は凍った平原を溶かすことはなさそうだが下にいる冒険者達とディンとアッシュの雰囲気は氷が溶けそうな熱気に包まれていた。

 喧嘩の元となった沢谷光を置いてきりにして戦う。

 沢谷光は誰にも聞かれることもなく呟く。


「はぁー、面倒」


 そんな中、沢谷光に近づく男性が1人。その男性はギルドマスターだった。ギルドマスターは沢谷光の心中を察するように額のシワを深く刻みながら話す。


「面倒な奴等に好かれたな」


 沢谷光はギルドマスターの様子を見て、ため息を交えながら二人の方を指で指しながら言う。


「止めなくていいのか?あれ?」

「何時もの事だしな。いちいち突っ込むのも面倒だ」


 ギルドマスターは先ほどの沢谷光のため息よりも深く長く吐く。沢谷光はそのため息を見て、ギルドマスターには何も言わずにディンとアッシュの戦いをじっと見ていた。

 その様子を見たギルドマスターはボソッと沢谷光に言う。


「ちなみにどちらが好みだ?」

「え!?」


 沢谷光は思わず、大きな声を出した。しかし、聞こえていたのはギルドマスターだけで、観戦している冒険者、アッシュとディンには聞こえていないのか、まだ熱気は収まらない。

 大きな声を聞いたギルドマスターは体を一瞬だが、震わせた。


「まぁ、知り合って時間短いから驚くのも無理ないか……」


 ギルドマスターの言葉が聞こえていないのか、沢谷光は視線を下へと向いて手を口に添えて、何やら呟いている。

 それを見たギルドマスターはゆっくりとディンとアッシュの戦いの方へと視線を移す。

 ギルドマスターは観戦者、ディンとアッシュを見ながら、独り言をこぼす。


「そろそろか」


 ギルドマスターは戦いを止めようと重い足をアッシュとディンの戦いの所へと歩み寄る。

 ギルドマスターが梯子へと手を伸ばし、登ろうとしたが、それは叶わなかった。


 アッシュとディンの戦いで盛り上がった熱気、凍った平原により冷たくなった空気を一瞬で消し飛ばした者はいた。

 その者はドラゴンだ。壁のはるか上空を飛んでいた。凍った平原にいた冒険者達は上空にいるドラゴンを豆程度くらいの姿しか確認する事が出来なかった。

 ドラゴンはまた咆哮を飛ばす。先程の咆哮で場が一変したが、今度はこちらが身も凍る程の震えが冒険者に走る。動けるのはただ3人。アッシュ、ディン、ギルドマスターのみだった。

 ドラゴンは豆程度の大きさからどんどんと大きくなる。

 アッシュとディンはドラゴンがこちらに来ると気づいたのか、ディンはアッシュからドラゴンの方へと剣を構え、アッシュも同様に構えた。

 ドラゴンはその2人に向かいながら突進する。距離が鼻と口くらいの距離に迫る頃合いに炎を吐いた。ディンは咄嗟に半透明の壁を作り防ぐ。アッシュは自分の周りに風を纏い防ぐ。

 ドラゴンは炎を吐きながら二人へと近づく。しかし、ドラゴンは二人を無視し、さらに速くし、壁を抜いた。ドラゴンの視線の先は沢谷光の方だった。


「「しまった!!」」」


 二人の声が重なる。沢谷光は未だにドラゴンが来ている事に気づいていないのか、視線を下へと向き、手を口へと添えていた。

 ドラゴンは手を開き、沢谷光を掴むと急上昇する。アッシュとディンはただ見ている事しか出来なかった。

 ドラゴンははるか上空にて、咆哮する。アッシュとディンはその咆哮は獲物が取ったという勝利の合図なのかと言いたげな顔でドラゴンを睨んでいる。

 ドラゴンはその二人を見ているかのようにその場を止まっていたが飽きたのか、山の方へと飛んで行く。

 それをただアッシュとディンは見ていた。









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