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後衛無双 前編

 ガロン、アッシュ、ディンの顔はそれぞれ違っていた。ガロンは切羽詰まった顔、アッシュは俺を見て嬉しそうな顔、ディンはアッシュと俺との顔を交互に見ていた。ガロンはその事に気づかずに俺に近づき、


「緊急依頼だ。内容はアッシュかディンに聞いてくれ。俺は他の仲間達に伝える」


 ガロンは言い残すとさっさと部屋から出て、ドアを閉めずに階段を下りていった。アッシュとディンは俺に近づき、それぞれの言葉を述べた。


「良かった。無事に辿り着いたんですね。コンパスは返さなくていいですよ。君が無事なら・・・」

「また再会出来たな。これも運命だな。まだ返事は了承だと思うが、今は遠慮する。なんせ緊急依頼があるしな」

「緊急依頼?」

「コンパス?」


 俺とディンの2人の声が同時に重なった。初日から緊急依頼とか何なんだ?

 ディンはアッシュに怪しげな視線をディンを見ていた。アッシュはそれを気にせずに緊急依頼の事を話した。


「緊急依頼は魔物の襲来が確認されました。魔物はディナン山に住んでいた魔物、その魔物に追われてここまで来た平原の魔物だ。ディナン山が爆発されて、どうやら魔物が住処を求めて移動して、この町へと来ています。それ故に東門にて緊急依頼として東門の防衛だ。どうやら、ギルドマスターは貴方に防衛で怪我をした人の治療を頼みたいという事らしい」

「別に女性である光が危ない戦場に来なくてもいい。勇者である俺が全部倒してやるからな」

「貴女は光さんと言うんですね。それにしても、どうしてお前がこの人の名前を知っているんですか?」


 アッシュはディンが俺が名前を知っていることを気が付いて、ディンに顔を向けて問い詰めようとした。

 ディンはアッシュが名前を知っていない事に気づいたのか、自慢げな表情を浮かべ、アッシュを見ていた。その事にアッシュはイラついたのか。さらに睨んでいた。

 どういう状況なんだ?これ……

 そんな中、ガロンはいつの間にか2人の後ろにて2人の頭上めがけて拳骨を振り落とした。


「早く仕度しろ!あんたも東門の近くに待機してもらう。お前らもさっさと防衛の準備しろ」

「「「はい」」」


 アッシュとディンはガロンの一声で喧嘩を止めて、部屋を出て支度し始めた。ガロンは俺の方に向いて話しかけた。


「あんたも突然だが手伝ってもらう。さっさと東門へ行くぞ。馬車は今準備している」


 ガロンは言い終わるとさっさと部屋から出ていき、急いでいる事が丸わかりな音を立てていた。

 また、俺のせいかよ・・・・・さっさと行かないとな。


 俺は馬車へ行く為に部屋から出て1階へと降りて行った。

 1階はもう大混乱だった。槍、槌、斧、剣やらの武器を馬車の中に入れる為に急ぎ足の冒険者、馬車の支度をしているギルド職員。

 そして、ガロン、アッシュ、ディンが冒険者と一塊となって地図を広げて何やら相談している。

 そんな中、馬車の中に入れていた職員がガロンに近づき、何かを伝えた。ガロンはそれを聞いて、満足げに頷いて、全員に聞こえるように声を張り上げた。


「さぁ準備が整った!行くぞ!」

「おおーーー!!!」


 その一声で防衛で行くであろう人達は馬車へと乗り込んでいた。既に乗り込んでいたアッシュは馬車の上から俺の方に手を差し出し


「どうぞ」

 

 しかし、俺はそれを無視して馬車へと乗り込んだ。何で、男と手を握らなくてはいけないんだよ・・・・

 アッシュは少し固まったがすぐ復活し、差し出した手を戻し俺の隣へと座り、正面にはディンが座っていた。

 移動中、アッシュは俺に向かって話しかけたり、ディンはアッシュと俺の会話に挟むように話しかけた。


「光さんと言うんですね?」

「はい」

「改めて俺はアッシュです。ギルドランクは1です。光さんは今回初めての依頼だそうですね。ご心配なく。私が守ります」

「はい」

「いや、お前より強い俺が守る」

 

 うざいな・・・・

 そんな会話をしていたら、門へとたどり着いた。門は最初見た時の崩壊と大差はなかった。防衛に来ていた人達は門の状況を見て、不安そうな顔をしていた。はたして、守りきれるだろうかと……

 ガロンはそれを見て、大声で出し、不安そうな顔をしている人に叱咤した。


「しっかりしろ!!防衛に来たんだろうが!アッシュとディンと俺は指揮を執りながら、崩壊した壁の所を守れ!」

「他の者は崩壊してない壁の上から弓、投石、魔法して、魔物の足を遅らせろ!後衛部隊は壁を突破した魔物を倒せ!そして、怪我人がいつ来てもいいように準備しとけ!」

「「はい!!」」


 その一声で不安そうな顔をしていた人達は動き、弓、石、杖を装備している人達は壁を昇り待機した。

 アッシュとディンは斧、剣、槌を装備している人達に何やら命令を出して、隊を組み、崩壊している壁の前に立って魔物を来るのを待っていた。ガロンは俺の方に近づいてきて


「偵察の情報ではまず、平原の魔物が来るらしい。その後山の魔物だ。もうそろそろだ。あんた、攻撃魔法とかは使えるのか?」

「まぁ使える」


 山を破壊したのは俺だしな。


「なら、平原の魔物は俺らでやるから今は壁の後ろにいろ、その後、山の魔物の際、防衛に回って欲しい。正直いって、この状況では魔物を食い止めるのは厳しい」


 ガロンは壁の一部を指すと、そこには防衛の為に壁に昇っていた人の足元が崩れて、穴を広げていた。苦笑いしかないな……

 その時、頭上から大声が聞こえた。


「来たぞ!!ウルフ、ゴブリン、猪共だ!」


 壁の下だから何だかわからないが獣声、平原を駆け抜ける足音が聞こえる。その音に怯えているのか、震え声も聞こえる。


「恐れるな!たかが、平原の魔物だ!!投石、魔法、弓部隊準備しとけ!前衛は打ち漏らした魔物を狩れ!」


 投石を用意していた者は網で一纏めになっている石を木製の機械のような物で投げようとし、弓を放とうとする者は弦を限界まで伸ばし魔物が来るまで狙いを定めていた。杖を装備している者は杖を体の前に出し、何やら言葉を発していた。


「投石、矢、魔法いけ!!」

 

 その言葉で石と矢、魔法が空を舞い、次第にそれらのサイズが小さくなり、次第に下へと降りていき、あちこちで鈍い音、肉を突き立てる音、そして壁の向こうから魔法を当たったのかあちこちで炎柱や空に雷が走っていた。

 

「さて行くぞ!」


 アッシュが叫ぶと 壁の穴の前に立っていた冒険者達は剣、槌、斧を上に掲げて打ち漏らした魔物に向かい、陣を組んで、魔物と向き合った。

 ウルフが冒険者の喉元に向かって食らいつこうとするが、冒険者へ大きく開いた口に剣を突き、ウルフの首元を赤く染める。

 ゴブリンが作ったであろう粗末な石の斧が冒険者の頭に向かって投降する。しかし、冒険者が持っている剣で振り払う。その隙をついて、他の冒険者がゴブリンを斧で叩き割る。猪の突進を盾で受け止め、その隙に剣で頭を突く。

 しかし、魔物がやられるだけではない。

 ウルフが冒険者の腕を噛みつく。

 ゴブリンが冒険者に飛びつき、冒険者の体をゴブリンの爪が切り裂く。石斧で頭を殴り、石を真っ赤に染める。

 アッシュ逹は魔物を退治しながら、他の冒険者逹に指示を出していく。


「怪我したものは下がってくれ!深追いするな!」


 その声で怪我した者はは壁の後ろに下がり、次々に俺の方に集まっていく。

 狼に腕や足を噛まれたのか、血が出るだけではなく肉が引き裂かれて骨が露出している者、気絶してこちらに運ばれる者、猪に突進を喰らったのか足を引きずり、他の冒険者の肩を借りて沢谷光の方に来た者がいた。

 俺はその闘いの後方にいた。運ばれた怪我人を回復魔法で癒していく。


【ヒール】


 その呪文で骨が露出していた者は筋肉、肉が再生していき回復が終わると骨が露出していた所はただ肌が見えるだけだった。気絶していた者は直ぐ様に意識が回復した。足を引きずっていた者は自分の足で立てていた。その回復力に冒険者は驚いていた。


「凄いな!たったヒールしか使ってないのにここまで回復するとは」

「素晴らしい回復だ!」

「天使だ!」

「女神だ!」

「結婚してくれ!」


 最後の言葉に思わず後ろに下がっていた。それを見ていた冒険者逹に両腕を掴まれたまま、引きずられて戦場に戻っていった。

 

 男と結婚とか勘弁だわ……今女性だけど。


 暫くして戦場から音が止み、戦場に出ていた者がこちらに戻ってきた。真っ先に来たのが自称勇者のディンだった。

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