フェリス・ミルンの場合
フェリスミルンの場合
不安が消えるようにいつもよりもに向かって深くお祈りする。しかし、目の前の像は答えない。しかし、いつも答える事はないのだが、それが私を不安にさせる。 信者である人達も不安がって、参拝に訪れている。年配の方が特に不安がっている。私が出来ることはただ訪れた信者の不安を取り除くのみだ。
その時、教会の扉が大きな音を立て開いた。大きな音は信者を体を震わせ、驚かせていたが、開いた人は息が途切れ途切れになっており、驚かせた事はどうでもいいような様子で言った。
「はぁ……はぁ……し、しスターはいますか?」
「はい、何でしょうか?」
ただならぬ様子だったので、私も信者達もその人が喋るのを待っていた。
「東門にて、ドラゴンの襲来がありまして、怪我人が多く、回復魔法が必要です。お願いします」
それを聞いたさっきまでの不安を取り除いたのが嘘みたいに不安が爆発し、信者達はざわめいた。隣同士で
否定的な言葉を吐いていく。それを否定するように声を張り上げて言う。
「お静かに!」
その声で教会内で否定的な言葉が一気に無くなった。
「不安なのはわかりますが、不安を言うのではなく、今、不安を言えなく、苦しんでいる怪我人がいます。私は助けに行きます。荷車に物資を運んでください!」
「「・・・はい!」」
一斉に信者達は声を揃えて、包帯や薬を荷車に運び入れる為に行動を移した。さっきまでの不安そうな声が萬栄していた教会が動き回る音に変わっていた。動いた事で応援を頼んだ人は気を緩めたのか、その場に崩れこんだ。よく見てると、背中の所が服が焼けこげ、肌も爛れていた。
「ヒール」
大変だっただろうに。その人を教会にある長い椅子の上に寝かせた。その人の回復をしていると荷車に荷物が運び終わり、準備が整った。準備が整えると私はすぐ様に馬を東門に走らせた。
東門
馬を走らせてる中、風で戦場の匂いを運んできた。血のにおいだ。私は自然と手綱に力を入れていた。
早く行かなきゃという気持ちが近づくにつれ溢れてきた。
東門に着いたらまず眼に着いたのが、ほぼ崩壊していた東門だった。ある所は高熱を浴びたのか、粘土みたくになっていた。また、ある所は大きな亀裂が入っていて、下には瓦礫が積まれていた。
「ああ、なんていうことでしょう」
視線を動かしたら、布を立てている所を見つけた。あそこだ。行かなきゃ。私は荷車から降りて、向かった。
布の目の前には口を手に当てて、うずくまっている男性を見つけた。男性は黒髪で、服は破けていた。この戦いで破けたのだろうか。私はその男性に駆け寄り、
「ヒール」
「大丈夫ですか?服もそんなにぼろぼろで。先ほどのドラゴンにやられたのですか?」
「・・・ええ、大丈夫です」
その男性は何故か私は気になった。男性は体が細く、とても冒険者には見えなかったが、とても強そうな感じがした。その男性は私の顔を見て、特に首からかけていたネックレスを見ていた。そんなに珍しい物だろうか。信者ならかけている物なのに。
男性は立ち上がり、こちらに声をかけようとした。しかし、声はある男性の怒鳴り声によって妨げられた。
「ドラゴンとはいったい「おい!さっさと着いたら、そんな軽傷者はいいからこっちを診ろ」・・・」
軽傷者か。まぁ確かに・・・・見た所 服は破けているが、その体は傷1つもない。
「はい。分かりました。ただ今、行きます」
ある男性は頭が剥げていて、ひげを蓄えているギルドマスターだった。ギルドマスターは回復した男性を睨み付けながらこちらに来て右手を胸に当て、お辞儀した。
「ユスラン教会の方が来てくれて助かりました。重傷者が大勢います。そんな軽傷者を無視して俺の仲間を観てください」
「はい。分かりました」
そんな言い方はないだろうに・・・・だが、言い分にも一理ある。少ししかめ面したけどまぁいいだろう。私は男性に謝罪した後、すぐ様に怪我人の元へと行った。
布をめくるとそこには血の匂い、脂肪が焼けこげた鼻にへばりつく匂い、そして、人が死んだ後の匂いが充満していた。急がないと。
重症者から先にヒールかける。青白い光は血を止め、焼けた肌を治していく。ヒールをかけた人は段々と顔色が良くなり、呼吸が安定していく。ここまでで良いだろう。回復を見届けた後、すぐ様に他の人に移り回復していく。動ける人達も物資を使い、治療していく。しかし、物資が少ないのか、動ける人やいつの間にかいたギルドマスターも焦りの表情を浮かべていた。私は回復を続けながら
「荷車に物資があるので、とってきます」
ここまでで大丈夫だろう。今診ていた人の治療が終わると急ぐように荷車へと向かい布をめくり、先ほどの男性はまだいた。男性は動くのを拒絶するかのように体を震わせていた。怖いのだろうか。
しかし、動けるのはこの人しかいない。
「あの、すみません。荷車にある回復薬、沈静剤、包帯を持ってきてくれませんか?」
「・・・・あ、はい」
男性は言う通りに荷車の中に入り、先ほどの様子から脱したのか、荷物を運んでいた。しかし、布の外側に運ぶことしか出来なかった。その行動にギルドマスターはため息し、他の人達とギルドマスターは荷物を布の向こう側に運び、治療に当たっていた。
しかし、私のMPが切れたのか、魔法が発動しなかった。MP切れだ。ヴェールの下の額には汗をかいていた。すこし、休むべきでしょうか。
そういや、先ほどの男性は何をしてるのでしょうか。布をめくり、男性を確認する。男性はまた立ち尽くしている。今までこういう場面に出くわしていないという感じみたいですね。それでもこの場からは逃げていない。どうするべきか迷ってるのでしょうか。私は男性を後押しするように話しかけた。
「目の前にある死が怖いですか?」
返ってきたのは沈黙の答だけだった。しかし、続けて話しかける。
「そうですよね。確かに怖いです。しかし、救える命があるのならば、私は救います。貴方も救ったはずです。荷物を運びました。それも救いとなりました。だから、貴方はこの人達を救ったのです。死から救ったのです。・・・・では戻ります」
MPも少し回復しました。これなら1.2人回復出来るでしょう。運んだ物質は速く着くためにそんなには積んでなかった。周りを見るとまだまだ治療する人がいる。ああ、神よ。
その時、布を捲る音が聞こえた。あの男性でしょうか。しかし男性ではなかった。いたのは服が破けている黒髪の女性だった。その女性は
「俺は回復魔法が使えます」
女性は空に手を上げて呪文を唱えた。
「エクストラヒール」
全体回復魔法…………私は使えないのに。その女性は青白い光が手から発する。その光は瞬く間に怪我人を治していく。すごい。たった一つの呪文で全員が救われた。まるで神の使いのようだ。怪我人の脈や顔色を確認する。安定している。それも全員だ。
あの女性は何所からいらしたの?あの回復魔法はどこで覚えたの?私はまるで神の使いと会ったのでしょうか。私は女性の手をとり、興奮しているのを気づかずに手を上下に振った。
「助かりました。何所からいらっしゃったのですか?しかし、すごい回復魔法ですね!その魔法はどこで覚えたのですか!?」
ギルドマスターは私の事を諫めた。
あ、そういや服破けてますね・・・黒髪の女性、服破けてますね。破けて、見事なスタイルが丸見えですね。けど、今MPがないですね。
「は!?確かに破けてますね。ええっと、MPがなくて、申し訳ないですけど再生魔法出来ません。・・・でも荷車にシスター服の予備があります。それを代わりに着てください」
私は黒初の女性の手を取り、荷車の所へと行った。布を捲ると先ほどまでいた男性はいなかった。首を動かし、探すがいない。
「あれ、ここに男性が1人いらっしゃいましたのに。何処かへ行かれましたのでしょうか。何かご存知ですか?」
「い いいえ、し、らないな」
「そうですか。まぁおそらく町へ行かれたのでしょう。また機会があれば会えましょう」
女性も知らないんですね。全員が助かったの知って、町へと行ったのでしょうか。
私は荷車から袋を取り出して、袋からシスター服を取り出し女性の方に渡した。女性は破けた服の上から着ようとしていた。
「ああ、破けた服は脱いでください。あとで魔法で再生させて頂きます」
「え!?ええっと、このままで大丈夫!」
「いいえ、駄目です。その服、見た事もないですが、生地は高級そうですね。もったいないです。お礼にその服を直させてください」
「・・・はい」
上はお腹の所が破けてさらには袖の部分もなくなり、下はスカートでしたが、太もも部分が露出していて、スタイルが協調していたが、服を脱ぎ下着姿になるとさらにスタイルが協調される。見事なくびれと大きな胸ですね・・・・自分のと大違いですね・・・・
しかし、シスター服を着るとそのスタイルは隠れてしまった。けど似合ってますね。せっかくですし、ヴェールはどうしましょう。
女性はヴェールも着た。太陽に反射され黒曜石の光みたいに反射していた髪が隠された。しかし、時折見える黒髪も映えている。
「ふふふ、似合いますよ」
「っ!?ありがとう」
「では、ギルドマスターの方が待っていますし、行きましょうか」
手を引っ張り、布をめくり、ハゲの男性、ギルドマスターの所へと行った。ギルドマスターは布をめくった音が聞こえたのか、こちらを観ていた。治療にあたっていた男性達もこちらを観ていた。なぜか、ギルドマスターはその男達を睨み付けていた。男達はその睨みを反応するように散り、せっせと治療にあった。
女性は治療が間に合わず亡くなった人達を見ていて、落ち込んでいた。慈悲深いですね。
ギルドマスターは女性のせいじゃないと励まそうとするが、女性はギルドマスターの台詞にさらに落ち込んでいた。落ち込んだ女性を見て、周りの女性冒険者達の視線がギルドマスターに刺さる。
俺は背中に汗をかいていたのが感じられ、地面に手を付けてしまった。ギルドマスターはその様子から、俺何か悪い事言ったか?と言いながら焦っていて、周りにいた女性達に鋭い目線を浴びていた。
私は焦るギルドマスターに助けを出し、ギルドマスターは監視へと行ってしまった。私は黒髪の女性に近づき、周りの女性達も励まそうとした。
「大丈夫ですよ。マスターは貴方に情けの言葉をかけただけですから」
「そうだよ。まぁ最後は余計だったけどね」
「だな。あのハゲヒゲ達磨」
女性は決心し地面から手と膝を離し、立ち上がった。良かった。立ち直ったのか。
「あ、元気になったのね。よかったー」
「良かった。良かった」
「そうですよ。貴方の原因ではありませんよ。そういえば、貴方の名前は何ですか?聞いていませんでしたね。私の名前はフェリス・ミルンです」
「ああ、俺の名前は光。沢谷光だ」
周りの女性達は声を揃えて
「「光。助けてくれてありがとう」」
「しかし、俺とかまるで男みたいだね。女性らしい体してるのに」
確かに。女性らしい体をしてるのに。随分と男らしい言い方ですね。
周りの女性達は黒髪の女性の体、特に胸を揉む。女性達の雰囲気におされ、後ろへと下がった。女性は揉まれたせいなのか、変な声をだしていた。
「ひゃん・・」
「柔らかい。しかもでかい」
「ご利益あるかな」
「ありそう」
確かにご利益ありでそうですね。私の胸はあの女性と比べて断然小さい。揉むと大きくなるでしょうか。と思っていると突如、ギルドマスターの怒鳴り声が聞こえた。
「何やってるんだ!?恩人に失礼だろうが!」
「ったく。目を離すとこれだ。ったく、名前は先ほどなんとなく聞こえたが、なんとか光と言ったか。仲間が失礼した」
ギルドマスターのハゲの男性は頭を下げた。
「話は変わるが、まだ町の警護はしなくてはいけないので、お礼はまた後日改めてさせてもらいます。その時に詳しい話をさせて頂きます。あとそうだな、町の入口付近にある宿屋、黒猫の家に俺の名前、ガロン・エドガーと言えば無料で泊められるから、使ってください」
「ありがとうございます。ではお、私はそこに泊めさせてもらいます。ではまた会いましょう」
女性はさっさとその場から立ち去ろうとした。あそういえば、破けた服直してなかったですね。
「沢谷光さん。待ってください。mpが回復したので、今服を直します」
―ソウイン―
直した服を見ると見た事もない服だった。そういや、この服何となくさっきまでいた男性の服と似てますね。私は服を黒髪の女性に渡した。
「そのシスター服は差し上げます。まだ沢山ありますので。ではまた改めて、手伝ってくれて有難うございます」
黒髪の女性が去った後、亡くなった人達の列の前に行き、膝をつき、瞑目し手を合わせて、お祈りを捧げた。無事に天国へいけますように・・・・・
途中でギルドマスターが近寄ってきて、同様にお祈りをし、ギルドマスターと共にお祈りを捧げた。
「有難うございます。これで仲間達はゾンビ、ゴーストにならないで済む」
「いえいえ。・・・・・私はこれで失礼します」
私はお祈りをした後、その場を立ち去った。
そういや、あの女性は黒猫の宿に泊まってるんですね。先ほどの黒髪の男性といい、黒髪の沢谷光さんといい、そして、似たような服、同じ黒髪を持った人。珍しい黒髪が今日2回も、何か気になりますね。
食事誘って、聞きましょうか。宿屋に行き、女将さんに尋ねた。
「女将さん。黒髪の女性はどこにいるんでしょうか?」
「ああ、フェリスか。何か御用か?」
「食事に誘いに来ました」
「ああ、シスター服も着てたし、フェリスの同僚か。3階の部屋にいるよ」
「有難うございます」
3階へと行き、ドアを叩いたが返事はなかった。旅の疲れで寝てるんでしょうかね。さらに叩いてみると絹が擦れる音がかすかに聞こえた。
「は・・・い・・・、誰・?」
「ん?その声は・・・光さんですか?随分と低い声ですね?ここにいると聞いたのですが、あれ?」
たしか女将さん3階と言ってましたわね・・・・けど3階はここの部屋しかないのに、先ほどまで聞いた光さんの声ではないですね。
ドアが開くとそこには確かに光さんがいた。光さんはそのままシスター服のまま寝てたんでしょうか。
シスター服に皺が少しできている。それに先ほどの声、先ほどの黒髪の男性がいるんでしょうか。部屋を見ると、誰もいない。光さん1人だけだ。
「ええっと、さっきの声はお、俺なんだ。突然と起きたから変な声を出たんだ。それより用事は?」
何か隠してる様子ですね。まぁ今は食事に誘いましょう。
「そうですか。用事はですね、まだ食事を召し上がってないとお聞きしましたので、一緒にどうですか?」
言うと光さんのお腹から空腹の音がなった。随分と腹減っていたのですね・・・
「ふふ、光のお腹が待ってくれないみたいですね。行きましょう」
私は光さんの手を引っ張り、食堂へと連れてった。光さんは聞かれたのが恥ずかしいのか、頬を染め、抵抗せずにいた。食堂の前にいくとさらに光さんの腹が音を鳴らした。
「ふふ、大丈夫ですよ。食事は逃げませんから。この店は女将さんの夫が経営されてて、とても美味なんですよ。お腹の音もなるのも当然ですね」
「顔真っ赤ですよ」
耳元で囁いて、また更に顔が真っ赤になっていた。ふふ、最初見たときは瞬く間に来て助けてくれて凛々しい方だと思っていましたが随分と可愛らしいですね。扉を開くと食堂の旦那さんはいつも通りな元気そうだった。いつも通りの注文をとる。
「旦那さん。お邪魔させて頂きます。いつもの2つでお願いします」
「おお、フェリスか。そいつが噂の美人さんか。綺麗だな。今日はいつもよりテーブルが空いてるぜ。あとでもっていくぜ」
もう噂になってるんですね。確かに女性の私からみても綺麗な方ですね。
光さんの手を引っ張り、テーブルへと座った。食堂の皆はこちらを見てますね。今皆さんも食事してますし、邪魔してはダメでしょう
テーブルに座ると旦那さんはすぐ様に料理を持ってきてくれた。旦那は光さんの方を見ると、洒落を交えた感謝を述べていた。しかし、洒落を聞かれたのか、食事の皆さんは旦那に食い下がった。旦那は皆さんの方へと行ってしまった。私は手を合わせてお祈りを瞑目し言った。光さんも同様に手を合わせて瞑目していた。
「主よ。恵みを感謝します」
「・・・感謝します」
いつも通りの美味しさですね。光さんも料理の美味しさを感じたのか。
「うまい」
「満足されて何よりです。それより、言い方と食事も随分と男らしい仕草するんですね。」
「え・・そ、そうだね。ええっと、なにせ、男の兄弟がいてね、女はお、れ。じゃなくて、わたしだけだったんだ」
「ふふ、そうですか」
なるほど。あの黒髪の男性も兄弟で、宿屋に一緒に泊まったのでしょう。兄弟で旅をしてるしれませんね。
「では、旦那さん、失礼します。今日は有難うございました」
「おう、代金は2人とも、アイツから取るからいいぞ。また来いよ」
私と俺は食堂から出ていった。出た後、食堂から一段と声が騒ぎだして、さらには旦那の怒鳴り声が聞こえてきた。光さんはそれに対して首を傾げていたが、私はいつもの事ですと伝えた。兄弟もまた会いたいですし、明日も食事に誘いましょう。
「光さんも今日はお疲れでしょう。また明日も食事どうですか?」
「用事とかないし構わないが、明日はこの町を見て回りたいな」
「なら、食事の後、案内させて頂きます。では今日はこの辺で失礼します」
私はその場を後にした。明日光さんとまた黒髪の男性とまた会えますね。
次話はデート?編書きます。