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名も無き子犬
「よし、仕事だ」
見た事の無い人、嗅いだ事の無い匂いでぼーっとしている私の頭に何かが触れた感触がありました。
いきなり触られた事でびっくりして顔を上げると、ニコニコと笑う彼の顔があります。
彼の手は私の頭の上に置かれています。
「仕事だ、仕事」
仕事…?
びっくりした事とニコニコ笑う彼に頭がついていきません。
「ほら、早くしろー」
そんな私を半ば強引に車に乗せると、彼は色々なところへ私を連れて回りました。
時々、車を運転している彼が私に話しかけてきます。
私はそれに答えるのですが、彼は人間、私は犬です。
上手く伝わらない事に少し苛立ちを覚えながらも最後のお仕事を終えてまたお店へと帰ってきました。
「わん!」
ただいまー!
と、疲れている体にムチを与えて元気に中へ入っていった私は、そこで初めてご主人様と出会うのです。