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名も無き子犬
「おぉ、久しぶり。なんだ、ブサイクになったなぁ。」
そう言って笑って出迎えてくれたのは昔お世話になった人でした。
いきなり現れた私の姿に驚く事もなく、昔の優しい彼のまま出迎えてくれたのです。
扉を開けた時の懐かしい匂い、懐かしい彼の笑顔、もうそれだけでさっきまでの不安は無くなり、喜びで少しだけ尻尾を振ってみました。
だけどすぐに尻尾が垂れました。
彼の周りには見た事の無い人、嗅いだ事の無い匂いがいっぱいで私をまた不安が包みます。
泣きたくなりました。
私の知っている人は彼しかいないのです。
1年半の間に景色は変わらずとも人間関係は変わっていくんだなと思った瞬間でもありました。