あの夕日に向かって
「いやいやいや!あの夕日に向かって、って言われても、あれただのオレンジだから!ね!?そんクサいタイトルはやめとこうよ!」
「くさい・・・かな?腋、やっぱり臭うかな・・・。ワキガどめもちゃんと塗ってきたのに」
桃色ほっぺの女の子は腋のあたりに鼻を近づけ、クンクンしたところ、うげぇと舌を出した。確かにさっきから鉛筆の芯のような、はたまたログハウスのような臭いは漂っていて我慢はしていたが、なんでその臭いは発している張本人が気絶しかかってるんだよ、お願いだから胃液はいた挙句に私の方へぶっ飛ばすなんて暴挙にでないでよ・・・ってあーあなんか服にかかりまくってるじゃんか・・・というかあんたどんだけ胃液ぶっ放してるんだよこのやろう。
さらに由々しきことになんか論点がずれちゃってきているので、頑張って修正することにした、というか胃液服にかけたこと謝れよこの野郎。なにまた腋をクンクンして気絶しそうになってんだよこら。
「いや、だからさタイトルが青臭いというか、なんか恥ずかしいんだよ!!あれだからね!?あんたの腋が臭いわけじゃないからね」うーそだっぴょーんめっちゃ臭いっぴょーん
「私の考えたタイトル、そんなに緑黄色野菜気味なのかな・・・?もしかして、まーちゃん、夕日とトマト、間違えてるんじゃないかな・・?トマトってね・・・これのことだよ」
女の子はポケットからビックサイズのトマトを取り出した揚句、それをかじってみせた。かんだ瞬間に弾ける果汁は食欲をそそります。
「おいしいけど・・・たしかに青臭いね」
と齧った面を私に見せつけながら、にっこり笑いかけてきた。その口端からは赤透明の汁が滴り落ちてて、なんだかちょっとセクシーなわけねえだろうがよ!!!なんだよ緑黄色野菜気味って一体全体どういうことだよ。わけわかんねーよ、もはや理解の範疇超えちゃってるし、夕日とトマト間違えるってどんだけトマト好きなのよ私は、ふざけんなよコラ。ていううかなんで今ポケットからトマト出てくんの?昼飯?夕飯?それとも朝飯?もしやブランチ?三時のおやつ?なんだか意味わかんない!!!なんか切断面に変な長さの縮れ毛ついてるしこれ絶対陰毛じゃねーか誰のナニをぺロロンしてきたんだよってかずっと口の中に入っててお前は何とも思わないのかよ!あれですか?あれですか?あなたをずっと感じていたいから口の中に陰毛入れとくねみたいな!!残念でした!!お前の陰毛はトマトと合体したよざまあ見やがれこんちくしょう!!!!どうせこっちにはぺろろんする相手なんかいねーんだよ泣いていい?
・・・さて。
「んーっとね!そういう意味じゃなくってさ!なんていえばいいかわかんないけど、とりあえずこのタイトルはやめといた方がいいと思うんだ」
よし。COOLだ。そうだ。家に帰ったらKOOLを吸おう。
「そっか・・・まーちゃん、喜んでくれると思ったのに・・・」
そう言うと女の子は目からしょっぱい汁的なものをダラダラと流し始めたので、さすがに罪悪感を覚え「ごめんね」とか言いながら慰めにかかる。
・・・って、めっちゃ涙黒いやん!!!アイメイクバリバリやん!!ってことは女の子にありがち・・・というかものっそいホッペタ、ブッツブツですね!!!あの桃色ほっぺはチークだったんですね!?あんたと一緒にやってきて3年になるけど驚愕の事実だよ!!!いやーいやーいやー汚いーいやーなんてことまでは言わないけれどもさすがに、私の服で顔拭くのはやめていただけませんか!?いやー・・・私の8350円で買ったCUNEのパーカーが汚れてくよ!!!やめろよ!!!なかなか洗濯機で落ちんやないか!!!さっき胃液かかった時点でクリーニング出すの決定なのにさもうやな感じというか死ねよ。
タイトル『あの夕日に向かって』
鏡の世界では2秒毎にスローモーションの私たちが映されていてちょうど289172番目みたいだね。
ミドリ『エゾシカ・ダンス』を聞きながら、適当に。
なんというか、ツッコンでみてストレス解消したかったのですが、結局得たものは背中の痛みでした。