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旅する先生と、世界の教室  作者: 最後に残った形


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第68章 第4話:真斗が『丸二つでも聞ききれない』を本部記録へ残す朝市後――ふた裏へ足さず例を育てる日


 朝市が終わったあとの広場には、野菜の葉の青い匂いと、湿った段ボールの匂いが残っていた。


 店のテントはほとんど片づけられ、白いテープだけが石畳の上に細く残っている。


 本部テントの下では、貸し出し箱が机の上に置かれていた。


 ふた裏には、いつもの短い言葉が貼られている。


『青の時刻は巡回が見る』


『黄色は巡回が回収』


『本部は記録で確認』


 そこにはまだ、数字の条件は増えていない。


『青札二枚なら補助』


 とも、


『丸三つなら補助』


 とも書かれていない。


 でも、真斗の手には、新しい付箋が一枚あった。


『丸二つでも補助を見る』


 それは、第67章で次回本部担当から返ってきた声だった。


 丸は二つだけだった。


 時刻に丸。


 巡回に丸。


 黄色は少なく、店も大きく混んでいなかった。


 それでも、蓮は一人で声を聞ききれなかった。


 だから、補助を短く置いた。


 その声は、大切だった。


 忘れてはいけない。


 次の本部担当が同じ場面で困らないようにしたい。


 だから真斗は、貸し出し箱のふた裏へ貼ろうとしていた。


 次回本部担当は、本部記録を抱えて机の前に立っている。


 奈々は、ふた裏と本部記録を見比べていた。


 蓮は巡回カードを外し、机の端に置いている。


 静子は黄色札の回収箱を片づけながら、耳を向けていた。


 直人は店混雑メモを重ねている。


 宮田さんは、本部テントの柱のそばで全体を見ていた。


 白瀬灯理は、テントの脇に立っている。


 黒い上着に、使い込まれた革の鞄。


 灯理は、真斗の手の中の付箋と、貸し出し箱のふた裏を静かに見ていた。


 真斗は、ふた裏を開いた。


「第67章で、丸二つでも補助が必要な場面がありました。忘れないように、ここへ足そうと思います」


 そう言って、付箋をふた裏の空いた場所へ近づける。


『丸二つでも補助を見る』


 次回本部担当が、それを読んだ。


 少しだけ眉を寄せる。


「真斗さん」


「はい」


「これ、丸二つなら補助、に見えます」


 真斗の手が止まった。


 奈々が静かに頷いた。


「それでは、丸の数に戻ります」


 広場の片づけの音が、少し遠くなったように感じられた。


 真斗は、付箋を見た。


『丸二つでも補助を見る』


 自分では、丸二つでも補助が必要なことがある、という例を残したかった。


 でも、ふた裏に貼ると、次の本部は最初にそれを見る。


 すると、


『丸二つなら補助』


 と読まれるかもしれない。


 第66章で避けようとした、数字の条件へ戻ってしまう。


 丸は、数ではなく重なりの合図。


 最後に見るのは、


『一人で声を聞ききれる?』


 だったはずだ。


 ふた裏に『丸二つ』と出すと、その問いより先に、数字が立ってしまう。


 蓮が巡回カードを指で押さえながら言った。


「あの時、補助が必要だったのは、丸が二つだったからではありません」


 静子が黄色札の箱を軽く持ち上げる。


「黄色は少なかったです」


 直人が店混雑メモを見た。


「店も大きく混んでいませんでした」


 次回本部担当が続ける。


「でも、巡回一人が青札確認と問い合わせを聞ききれませんでした」


 奈々が言った。


「ふた裏に『丸二つでも補助』と書くと、聞ききれなさではなく、丸二つが先に見えます」


 真斗は、付箋をふた裏へ貼らず、机の上に置いた。


 大切な声を忘れたくなかった。


 でも、大切だからこそ、置き場所を間違えると、意味が変わる。


 真斗は、白瀬灯理を見た。


「先生、丸二つでも補助が必要だった声を忘れないように、ふた裏へ足そうとしました。でも、ふた裏に『丸二つでも補助』と書くと、また丸の数で決める形に戻りそうでした。返ってきた声は、ふた裏へ出すものと本部記録で例として育てるものに分けたいです」


 灯理は、真斗の言葉を静かに受け止めた。


 そして、問いを返した。


「うん。では、返ってきた役割の声を次の往復へ残すことは、忘れないようにふた裏へ短く足すことなのでしょうか」


 忘れないように、ふた裏へ短く足すことなのか。


 真斗は、貸し出し箱のふた裏を見た。


 ふた裏は、朝市の中で最初に見る場所だった。


 貸し出しや回収の手を止めずに見る場所。


 そこには、短く、広く、誤解されにくい言葉が必要だった。


 でも、本部記録は違う。


 場面の詳しさを残せる場所。


 丸がいくつだったかだけではなく、黄色がどうだったか、店がどうだったか、巡回が何を聞ききれなかったかを残せる場所。


 そして、まだ見る欄には、今すぐ決まりにしない問いを置ける。


 返ってきた声は、全部ふた裏へ貼るものではない。


 ふた裏に出す声。


 本部記録に残す声。


 まだ見る声。


 広げすぎない声。


 そう分けなければ、数字に戻ってしまう。


 宮田さんが、本部記録の新しいページを開いた。


『役割の返ってきた声を次の往復へ残す』


 真斗がペンを持つ。


 灯理は静かに言った。


「では、次回本部担当さんから返ってきた声の置き場所を、一つずつ見てみましょう」


 まず、返ってきた声。


 次回本部担当が、第67章の記録を開いた。


「丸の数で決めずに済んだ」


 奈々が続ける。


「『一人で声を聞ききれる?』へ戻れた」


 蓮が言った。


「丸二つでも補助が必要な場面があった」


 静子が続ける。


「黄色と店が軽い時に補助を置いてよいか迷った」


 直人が言った。


「青札三枚の詳しい記録は今回は読まなかった」


 次回本部担当が続ける。


「ふた裏へはまだ足さず、本部記録で見る」


 真斗が最後を読んだ。


「『丸の数』ではなく『聞ききれなさ』の例を増やしたい」


 真斗が書く。


『返ってきた声:丸の数で決めずに済んだ。『一人で声を聞ききれる?』へ戻れた。丸二つでも補助が必要な場面があった。黄色と店が軽い時に補助を置いてよいか迷った。青札三枚の詳しい記録は今回は読まなかった。ふた裏へはまだ足さず、本部記録で見る。『丸の数』ではなく『聞ききれなさ』の例を増やしたい』


 次に、次に開く人。


 宮田さんが言った。


「次の本部担当」


 蓮が続ける。


「巡回係」


 奈々が言った。


「補助係」


 真斗が書く。


『次に開く人:次の本部担当。巡回係。補助係』


 次に、ふた裏に出す声。


 真斗は、手元の付箋を見た。


『丸二つでも補助を見る』


 これを貼ると、数字に戻りそうだった。


 奈々が、ふた裏を指差した。


「今回は、出さない方がいいと思います」


 次回本部担当も頷いた。


「本部記録なら、場面ごと読めます」


 真斗は、少し間を置いてから書いた。


『ふた裏に出す声:今回は足さない』


 付箋は、ふた裏へ貼らなかった。


 次に、本部記録に残す声。


 蓮が、朝市の場面を思い出しながら言った。


「聞ききれなさの例」


 真斗は、見出しを書く。


『聞ききれなさの例』


 次回本部担当が続ける。


「丸二つ。時刻○・巡回○」


 静子が言った。


「黄色なし」


 直人が続ける。


「店混雑なし」


 蓮が言った。


「巡回一人が青札確認と問い合わせを聞ききれなかった」


 奈々が最後に言った。


「補助を短く置いた」


 真斗が書く。


『本部記録に残す声:聞ききれなさの例。丸二つ:時刻○・巡回○。黄色なし・店混雑なし。巡回一人が青札確認と問い合わせを聞ききれなかった。補助を短く置いた』


 次に、まだ見る声。


 宮田さんが尋ねた。


「この声から、次に見たいことは何でしょう」


 次回本部担当が言った。


「丸一つでも聞ききれない時があるか」


 奈々が続ける。


「丸三つでも補助なしでよい時があるか」


 静子が言った。


「黄色や店が軽い時の巡回の重さ」


 真斗がふた裏を見た。


「ふた裏へ短く足す必要が本当にあるか」


 真斗が書く。


『まだ見る声:丸一つでも聞ききれない時があるか。丸三つでも補助なしでよい時があるか。黄色や店が軽い時の巡回の重さ。ふた裏へ短く足す必要が本当にあるか』


 次に、広げすぎない声。


 奈々がすぐに言った。


「丸二つなら補助とは書かない」


 真斗が続ける。


「ふた裏に数字を増やさない」


 静子が言った。


「黄色なし・店なしなら補助なしとも書かない」


 宮田さんが穏やかに言った。


「一回の例を決まりにしない」


 真斗が書く。


『広げすぎない声:丸二つなら補助とは書かない。ふた裏に数字を増やさない。黄色なし・店なしなら補助なしとも書かない。一回の例を決まりにしない』


 次に、次に開く場面。


 蓮が巡回カードを持ち上げた。


「次の朝市で丸が少ないが巡回が重い時」


 次回本部担当が続ける。


「本部が補助を迷う時」


 真斗がふた裏を見た。


「ふた裏へ足すか迷う時」


 真斗が書く。


『次に開く場面:次の朝市で丸が少ないが巡回が重い時。本部が補助を迷う時。ふた裏へ足すか迷う時』


 最後に、次の往復へ残す形。


 奈々が言った。


「ふた裏には足さない」


 真斗が続ける。


「本部記録に『聞ききれなさの例』として残す」


 次回本部担当が、先に読む欄を指差した。


「先に読む欄はそのまま」


 蓮が言った。


「次回も丸の数ではなく最後の問いへ戻る」


 真斗が書く。


『次の往復へ残す形:ふた裏には足さない。本部記録に『聞ききれなさの例』として残す。先に読む欄はそのまま。次回も丸の数ではなく最後の問いへ戻る』


 宮田さんは、新しいカードの形を整えた。


### 役割の返ってきた声を次の往復へ残すカード


#### 残す時


* 次の本部から声が返ってきた

* 助かったところがある

* 迷ったところがある

* 読まなかった記録がある

* ふた裏へ足したくなる

* 数字に戻らない形で残したい


#### 一緒に見ること


* 返ってきた声

* 次に開く人

* ふた裏に出す声

* 本部記録に残す声

* まだ見る声

* 広げすぎない声

* 次に開く場面

* 次の往復へ残す形


#### 役割の次の往復へ残す欄


* 返ってきた声:

* 次に開く人:

* ふた裏に出す声:

* 本部記録に残す声:

* まだ見る声:

* 広げすぎない声:

* 次に開く場面:

* 次の往復へ残す形:


 真斗は、今日の欄を清書した。


### 役割の次の往復へ残す欄


* 返ってきた声:丸の数で決めずに済んだ。『一人で声を聞ききれる?』へ戻れた。丸二つでも補助が必要な場面があった。黄色と店が軽い時に補助を置いてよいか迷った。青札三枚の詳しい記録は今回は読まなかった。ふた裏へはまだ足さず、本部記録で見る。『丸の数』ではなく『聞ききれなさ』の例を増やしたい


* 次に開く人:次の本部担当。巡回係。補助係


* ふた裏に出す声:今回は足さない


* 本部記録に残す声:聞ききれなさの例。丸二つ:時刻○・巡回○。黄色なし・店混雑なし。巡回一人が青札確認と問い合わせを聞ききれなかった。補助を短く置いた


* まだ見る声:丸一つでも聞ききれない時があるか。丸三つでも補助なしでよい時があるか。黄色や店が軽い時の巡回の重さ。ふた裏へ短く足す必要が本当にあるか


* 広げすぎない声:丸二つなら補助とは書かない。ふた裏に数字を増やさない。黄色なし・店なしなら補助なしとも書かない。一回の例を決まりにしない


* 次に開く場面:次の朝市で丸が少ないが巡回が重い時。本部が補助を迷う時。ふた裏へ足すか迷う時


* 次の往復へ残す形:ふた裏には足さない。本部記録に『聞ききれなさの例』として残す。先に読む欄はそのまま。次回も丸の数ではなく最後の問いへ戻る


 カードができると、真斗は本部記録を整えた。


 まず、貸し出し箱のふた裏を開く。


『青の時刻は巡回が見る』


『黄色は巡回が回収』


『本部は記録で確認』


 そこには、何も足さない。


 次に、本部記録の新しいページに見出しを書く。


『聞ききれなさの例』


 その下に、具体的な場面を残す。


『丸二つ:時刻○・巡回○』


『黄色なし』


『店混雑なし』


『巡回一人が、青札確認と問い合わせを聞ききれなかった』


『補助を短く置いた』


『丸二つだから補助、ではない』


『最後に見る:一人で声を聞ききれる?』


 奈々が、その最後の一行を見て頷いた。


「これなら、丸二つが条件になりにくいです」


 次回本部担当が読んだ。


「丸二つだから補助、ではない。最後に見る。一人で声を聞ききれる?」


 蓮が言った。


「聞ききれなさの例として読めます」


 静子が黄色札の箱を見ながら言った。


「黄色なしでも、巡回が重い時があると分かります」


 直人が続ける。


「店混雑なしでも、問い合わせが重なることがある」


 真斗は、最初に貼ろうとした付箋を手に取った。


『丸二つでも補助を見る』


 それを本部記録の後ろに貼る。


 横に書く。


『ふた裏に出すには数字に見える。本部記録の例として残す』


 宮田さんが静かに言った。


「消したのではなく、置き場所を変えたのですね」


 真斗は頷いた。


「はい。忘れないように、でも数字に戻らないように」


 灯理は、その言葉を静かに聞いていた。


 返ってきた声を忘れないことと、次の本部を重くしないこと。


 その両方の間に、置き場所がある。


 ふた裏は軽く保つ。


 本部記録は深く残す。


 まだ見る欄は、次の問いを置く。


 広げすぎない声は、一回の例を決まりにしないために置く。


 夕方近く、本部テントの片づけが終わった。


 真斗は、本部記録を開いた。


『今日の困り:第67章で次回本部担当から返ってきた「丸二つでも補助が必要だった」声を、ふた裏へ『丸二つでも補助を見る』と足そうとした。次回本部担当と奈々が、それでは丸二つなら補助に見え、丸の数に戻りそうだと気づいた』


『返ってきた声:丸の数で決めずに済んだ。『一人で声を聞ききれる?』へ戻れた。丸二つでも補助が必要な場面があった。黄色と店が軽い時に補助を置いてよいか迷った。青札三枚の詳しい記録は今回は読まなかった。ふた裏へはまだ足さず、本部記録で見る。『丸の数』ではなく『聞ききれなさ』の例を増やしたい』


『次に開く人:次の本部担当。巡回係。補助係』


『ふた裏に出す声:今回は足さない』


『本部記録に残す声:聞ききれなさの例。丸二つ:時刻○・巡回○。黄色なし・店混雑なし。巡回一人が青札確認と問い合わせを聞ききれなかった。補助を短く置いた』


『まだ見る声:丸一つでも聞ききれない時があるか。丸三つでも補助なしでよい時があるか。黄色や店が軽い時の巡回の重さ。ふた裏へ短く足す必要が本当にあるか』


『広げすぎない声:丸二つなら補助とは書かない。ふた裏に数字を増やさない。黄色なし・店なしなら補助なしとも書かない。一回の例を決まりにしない』


『次に開く場面:次の朝市で丸が少ないが巡回が重い時。本部が補助を迷う時。ふた裏へ足すか迷う時』


『次の往復へ残す形:ふた裏には足さない。本部記録に『聞ききれなさの例』として残す。先に読む欄はそのまま。次回も丸の数ではなく最後の問いへ戻る』


 そして、一文を書く。


『返ってきた役割の声を次の往復へ残すことは、丸二つでも補助が必要だった声を忘れないようにふた裏へ『丸二つでも補助』と足すことではなく、数字に戻らないようふた裏には出さず、本部記録へ聞ききれなさの例として残し、次の本部が最後の問いへ戻れる形を育てることだった』


 真斗は、その一文を読み返した。


「最後の問いへ戻れる形を育てる」


 その言葉が、本部記録の中で静かに残った。


 丸二つの声は、大切だった。


 だから、ふた裏へ足したくなった。


 忘れないように。


 次の本部が困らないように。


 返してくれた声を無駄にしないように。


 でも、ふた裏へ『丸二つでも補助』と出すと、丸二つが条件になる。


 聞ききれなさではなく、数が前に立つ。


 だから、分ける。


 ふた裏に出す声。


 本部記録に残す声。


 まだ見る声。


 広げすぎない声。


 返ってきた声は、外されたのではない。


 消えたのでもない。


 数字に戻らない置き場所を選ばれて、次の往復へ残っていく。


 夕方、白瀬灯理は朝市本部を出た。


 広場には、片づけ終わった後の静けさがあった。


 貸し出し箱のふた裏には、新しい数字は増えていない。


『青の時刻は巡回が見る』


『黄色は巡回が回収』


『本部は記録で確認』


 そのまま残っている。


 本部記録には、新しい見出しが増えていた。


『聞ききれなさの例』


『丸二つ:時刻○・巡回○』


『黄色なし』


『店混雑なし』


『巡回一人が、青札確認と問い合わせを聞ききれなかった』


『補助を短く置いた』


『丸二つだから補助、ではない』


『最後に見る:一人で声を聞ききれる?』


 真斗、次回本部担当、奈々、蓮、静子、直人、宮田さんが見送りに来た。


「白瀬先生、ありがとうございました」


 真斗が言った。


「こちらこそ、次回本部担当さんから返ってきた役割の声を、ふた裏へ全部出すのではなく、ふた裏・本部記録・まだ見る・広げないへ分けて残す時間を見せていただきました」


 灯理は静かに答えた。


 真斗は、本部記録を抱えていた。


「先生、丸二つでも補助が必要だった声を、忘れたくありませんでした」


「はい」


「でも、ふた裏へ貼ると、数字に戻りそうでした」


 次回本部担当が続ける。


「本部記録なら、聞ききれなさの場面として読めます」


 奈々が言った。


「丸二つなら補助、とは書きません」


 蓮が巡回カードを持って言った。


「巡回が聞ききれない時を見るための例です」


 静子が黄色札の箱を抱えた。


「黄色なしでも重い時があります」


 直人が続ける。


「店なしでも重なる声があります」


 宮田さんは穏やかに言った。


「ふた裏を軽く保ち、本部記録で深く残すことができましたね」


 灯理は、夕方の広場を見た。


 返ってきた役割の声を次の往復へ残すことは、忘れないようにふた裏へ短く足すことではない。


 返ってきた声は、大切である。


 丸の数で決めずに済んだ。


『一人で声を聞ききれる?』へ戻れた。


 丸二つでも補助が必要な場面があった。


 黄色と店が軽い時に、補助を置いてよいか迷った。


 青札三枚の詳しい記録は、今回は読まなかった。


 ふた裏へはまだ足さず、本部記録で見る。


『丸の数』ではなく、『聞ききれなさ』の例を増やしたい。


 それらを消してはいけない。


 けれど、ふた裏へ『丸二つでも補助』と出すと、数字が条件になる。


 だから、置き場所を選ぶ。


 ふた裏には、今回は足さない。


 本部記録には、聞ききれなさの例として残す。


 丸一つや丸三つは、まだ見るへ置く。


 丸二つなら補助とは、決めない。


 そうして、返ってきた役割の声は、数字に戻らず、次の本部が最後の問いへ戻れる形で残る。


 灯理は、本部テントを一度振り返った。


 真斗の本部記録には、一文が残っている。


 返ってきた役割の声を次の往復へ残すことは、丸二つでも補助が必要だった声を忘れないようにふた裏へ『丸二つでも補助』と足すことではなく、数字に戻らないようふた裏には出さず、本部記録へ聞ききれなさの例として残し、次の本部が最後の問いへ戻れる形を育てることだった。


 その言葉を胸に、灯理は静かな道をゆっくり歩いていった。

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