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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第五章

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ep.92 体力測定


 楓は現在ハンドボール投げの男子の列に並び、

 自分の番が周ってくるまで待機している。


 その間退屈なので、体操着に身を包む親友の姿を見守っていた。今は体育の体力測定が行われており、男子達は既に100mを走り終え、次は女子の番だった。


 (ミアって走れるのか…?)


 これまでミアが急いだり慌てる姿を見せたことは一度も無い。そんな彼女の走る姿など、楓には想像することが出来なかった。しかし、ミアは戦いになると強いということは知っている。


 実際に自分の目の前で三人の邪徒を葬ったのだ。そんな彼女が本気で身体を動かせば、とてつもない現象が巻き起こされる可能性だってある。


 ミアはいつも通りの無表情でスタートラインに立つと、隣の女子の体勢を真似てクラウチングスタートの姿勢をとった。


 (本当に大丈夫か?もしかすると…)


 刹那―楓の脳裏に浮かんだのは、地面を蹴り砕き、周囲の生徒達を吹き飛ばしながら、ゴールまで駆け抜けるミアのイメージ。


―パン!


 スタートの合図が鳴り響き、その音で我に返った楓は思考を止め、視線をミアの方へと戻した。


 「遅ぇ…」


 腕の振りから脚の上げ方まで、信じられない程下手くそなフォーム。前に進んでいるのかすら怪しい。


 (女の子走り?いや、あれはそんなレベルじゃないな…)


 走るミアは無表情のままだが、ゴールを真っ直ぐ見据え、より多くの酸素を取り込む為か、口を大きく開いている様子を見るに本気であれなのだろう。


 それはそうだと楓は納得する。運動音痴でなければ、一年近く練習していまだ自転車に乗れないなんて事にはなっていないだろう。


 「次、楓だぞ」


 「ほーい」


 楓はハンドボールを受け取り、円へと向かう。

 すると、突然周囲の生徒達がざわめき出した。


 「ミアちゃんが…」


 「ん?」


 青ざめる男子の視線を追うと、楓の目に映ったのは地面に倒れ込むミアの姿だった。起き上がる素振りすら無いところをみるに、ただ転んだといった訳でもないだろう。


 ミアはそのまま先生に抱えられ、

 保健室へと連れて行かれた。



 放課後、楓は真っ先にミアの家へと自転車を走らせた。様々な思考が頭を巡り、胸中は嫌な予感で埋め尽くされる。全力でペダルを回し、5分とかからず目的地に到着した。


 玄関の呼び鈴を鳴らすと、グレアが姿を現した。淡々と応対する彼女の様子を見て、楓はひとまず安心する。ミアにもしもの事があれば、グレアはこんな風に落ち着いては居られないだろう。


 だが、楓がここまでやってきたのはお見舞いの為だけでは無い。どうしても確認しなければならないと思う事があった。


 グレアに案内されリビングに入ると、いつもの窓際の席をミアの姿は無かった。どうやら寝室で休んでいるらしく、今この場はグレアと楓は二人きり。


 部屋の中央に置かれているテーブルに向かい合う形で腰を下ろすと、楓は自身の考えをグレアへと話し始めた。


 「以前、俺の力―使い続ければ命を削ることになるって言いましたよね?」


 「…はい」


 「実はグレアさんに指摘されるより前に、ミアにも同じ事を言われたんです」


 「そうですか…」


 「グレアさん。もしかして―ミアも同じなんじゃないですか?」


 ミアが戦えない理由。楓がこれから戦う理由。彼女の姿を今まで見てきて薄々気づいてはいた。そして今日、確信してしまった。


 下を向いたグレアから即座の返答は無く、室内は無音だけが鳴り響いた。しかし、ここまで来て何を隠す事があるのかと、楓は苛立ちを抑えきれず机を右手で叩きつけた。


 「グレアさん、答えてくださいよ…」


 「それは…申し訳ありませんが、ミア様がそう判断されたのであれば、私が言えることはありません」


 「そうですか…」


 言いたくなければ言わなくていい。以前、楓の方からミアに伝えた言葉だ。それにグレアの反応を見れば聞くまでもない。ミアの命は―


 「俺…頑張ります。これまで以上に、もっと強くなってアンデロ・イ・ハンクスに認めて貰います!ミアは戦わせない!」


 いくら人類守護の為、そして人に害するヴィクトリア打倒の為とはいえ、あんな状態のミアを利用しようだなんて許せない。怒りと使命感で現在の楓のモチベーションはかつて無いほど高められていた。


 「カエデさん…ありがとうございます。ですが―」


 「なんですか!?」


 バツの悪そうにこちらを伺うグレアの態度を見て、再び嫌な予感がやってくる。ここから予想されるのはいい知らせでは無いだろうからだ。


 「ここ数日、なにやら私の周辺を嗅ぎ回っている連中がいます」


 「え!?大丈夫なんですか?」


 「今のところ問題はありません。しかし、目立つ行動は出来ないので、カエデさんの付き添いは難しいかと」


 「あっ!そ、そうか…じゃあどうしたら」


 「現時点では私よりカエデさんとカリサさんの方に目を向けられてるようです」


 「そんな…全然気づきませんでした…」


 「もう少し調べる必要がありそうなので、少々お待ち下さい。カリサさんは既に気付いてるでしょうけど、カエデさんも気をつけて下さいね。それとなにが彼らを刺激してしまうかわからないので、修行も控えるようにお願いします」

 

 「わかりました…」

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