表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/101

ep.84 ミアのえすえぬえす

 朝、楓が教室の席に着くと、突然ミアが接近してきた。右手にはなにやら黒く輝くものが握られている。


 「おお!ついにスマホ買ったんだな!」


 「ああ。昨日グレアと選んだのだ。すまほとはなんとも美しいものだな」


 普段通りの無表情で淡々と話すミアだが、

 心なしか目が輝いているようにも見える。


 楓がミアのスマホを受け取ると、余程熱心に触っていたのか、綺麗好きな彼女の物とは思えぬほど、画面は指紋でベタベタになっていた。


 「とりあえず連絡先だな。アプリは何入れてんの?」


 「あぷり?それは何のことだ?」


 「そりゃ当然知らないか…」


 楓は悩んだ末、とりあえず必須なものは入れてあげたほうがいいだろうと、ミアに許可をとりスマホの画面を開いた。


 「まずはとっととトークだな。これはクラスのグループもあるから必須だろ?あとは…」


 とっととトークとは、無料で通話やチャットが出来るソーシャルネットワーキングサービスだ。個人のやりとりは勿論の事、グループチャットは学生や社会人の情報共有でも使われ、若者達からはトークと呼ばれている。


 「カエデ、えすえぬえすは駄目だとグレアから言われているのだが、何の事だろうか?」


 「え!?SNS駄目ならスマホの意味が無いぞ…」


 「そうなのか?よくわからないが…」


 ここに来ても、グレアの過保護が発揮され、楓は頭を抱えた。勿論、メールでのやり取りも可能ではあるのだが、それだと不便すぎる。


 「ミアちゃん。スマホ買ったの?友達追加していい?」


 「え、ずるい!私も」


 なにやら女子達がわらわらと集まってきた。これまでミアを遠巻きに見るばかりで、声すらかけられなかったのに。やはり、人間関係を構築するにあたって、スマホという機械は素晴らしいものだ。


 男子達はというと、未だ勇気が出ないのか、羨ましそうに眺めているだけだった。それでも話しかけられたことの無いクラスメイト達に囲まれ、珍しくうろたえるミアを楓は微笑ましく眺めていた。


※※※※


 「グレア。クラスの者達 いわく、やはりえすえぬえすが無いと、スマホは厳しいそうだ。どうにかならないだろうか?」


 「ですが…SNSは便利である故に、危険も伴います」


 「クラスの皆はやっているそうだぞ?」


 グレアの恐れていた事態が発生する。元々、担任の教師からもミアだけクラスのグループトークにいない為、連絡事項がある際に不便であることは言及されていた。それでも主への悪影響が懸念されるので抑えていたのだ。


 「はぁ、仕方ありませんね。とっととトークだけは許可しましょう」 


 とっととトークは近い間柄でのやりとりをするだけなので、そこまで危険性はないだろう。グレアも流石にそれを制限するのはやり過ぎたと反省した。


 「本当か?ありがとうグレア」


※※※※


 「というわけで、とっととトークだけはグレアの許可を得られた」


 「よかったじゃん。じゃあ友達追加しとくな」


 楓は使い方を教えながら自分の友達登録を済ませると、再び女子達が集まってきたので距離を取りつつ、クラスメイトに囲まれるミアの姿を見守った。


※※※※


 「グレア。クラスの者達 いわく、フォトスタというものも始めた方が良いそうだ」


 フォトスタというSNSは若者達が愛用し、親しい相手とのやりとりで利用されるとっととトークとはまた違い、趣味や思い出を共有する為に使われるアプリだ。


 「それはいけませんね。とっととトークはまだしも、フォトスタは悪い物も目立つツールです」


 フォトスタはとっととトークと違い、不特定多数の人間と繋がれてしまう、グレアから言わせれば不健全なもの。流石に許可することは…


 「だがクラスの皆は使っているぞ?」


 「…仕方ありませんね」


※※※※


 「というわけで、フォトスタも許可を貰った」


 「よかったな。だけど俺はあんまり使ってないかな」


 「なに?そうなのか…皆使ってるとばかり…」


 「いや、俺が異端なだけで、大体の学生は使ってるから」


 「ミアちゃんフォトスタ始めたの?」


 昨日同様、クラスの女子達が集まってきたので、楓は距離を取り、友達に囲まれるミアの姿を温かい眼差しで見守った。


※※※※


 「グレア。この店に行きたいのだが、連れて行ってはくれないだろうか?」


 「ええ、構いませんよ。なにか召されたいものでもございましたか?」


 「スマホでここのパフェの写真を撮りたいのだ」


 「…フォトスタですか?」


 「ああ。甘味の写真を載せるのが皆の流行りだそうだ」


 「…」


※※※※


 「グレア。グミグミというアプリを入れてくれないか?」


 「それは…ゲームですね?ゲームはいけません。やりすぎると脳を萎縮させてしまう恐れがありますので」


 「ゲーム?よくわからないが、クラス間で流行っているらしくてな。皆やっているぞ?」


 「…仕方ありませんね」


※※※※


 夜、楓は風呂を出るとスマホに通知が来ていることに気がついた。開くとミアからのトークが届いている。彼女はこの数日でスマホを使いこなしていた。運動神経はからっきしだが、どうやら機械には強いようだ。


 中身を見ると、フォトスタの女性の写真とコメント欄のスクリーンショットが貼られていた。


—この人可愛いけど、髪型が古くさいよね


 『髪型が古くさいとは、どうゆう意味だろうか?』


 『その時の流行ってもんがあるんだよ』


 『ほう。髪型に流行が…』


 『なにも髪型だけじゃないけどな。服とかも。まぁ検索したら今の流行りは分かるだろ。俺は女子じゃないから知らんけど』


※※※※


 朝、登校した楓が廊下を歩いていると、教室の前には人だかりが出来ていた。人込みをかき分け中に入ると、女子達に囲まれるミアの姿があった。

 

 「カエデ。おはよう」


 「ミア…お前それは…」


 楓は驚愕した。理由はミアの髪型だ。

 前髪は目の上で真っ直ぐに切られており、腰まで伸ばされていた後ろと横の髪は、肩に少し掛かる程度にバッサリと切り揃えられている。


 「…イメチェン?」


 「これが流行りだと聞いてな…おかしいだろうか?」


 「いや、似合ってるけど…」


 確かに、女子達の殆どがあの髪形をしている。

 しかし、昨日の今日だったので楓もさすがに驚いた。


 「いや、うん…似合ってるよ」


※※※※


 「カエデさん!助けてください!」


 グレアは両膝と両手を地面につけ、

 目に涙を溜めながら楓に嘆願していた。


 「最近、いえ、SNSを始められてからミア様の暴走が止まらず…最近はメイクまで学ばれてます!」


 「いや、女子高生なんてそんなもんだと思いますよ…」


 「何度も止めようとしたのですが、何かあるたび、クラスの皆がやっているのだと…」


 (それは小学生のやり口だな…)


 「どうか…ミア様を止めてください!カエデさんしかいないのです!」


 「…そんな大袈裟な」


 現に流行りに乗ることで、ミアはクラスメイトとの交流が盛んになった。これは良いことでは無いだろうか。しかし、グレアが泣き止まないので、楓は渋々ミアを止めることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ