ep.82 勇者の器④
楓はテーブルの上に広げられた世界地図を眺めている。そこにグレアが赤い石と青い石を置き始めた。何故か赤い石は無数に散りばめられているのに、青い石は二つのみなのが気にかかる。
「ここが悪魔の川がある大陸です。本部の場所はここ。つまりオーフィス騎士団の主力部隊が揃う場所。そこへ私が奇襲をかけ、戦力を一気に引き受けます」
「ほうほう」
「その隙にカエデさんは手薄になった本部へ行き、アンディと一騎打ちをお願いします」
「…いや、おかしいでしょ!」
グレアが提示した作戦はあまりにも雑なもので、流石の楓も黙っていられなかった。赤い石は一つ一つがオーフィス騎士団の部隊なのに対し、青い石二つはグレアと楓を示しているのだ。
「そもそもアンデロ・イ・ハンクスが 本部に一人でいるわけ無いじゃないですか…」
「私もナメられたものです。生半可な戦力でこのグレアが抑えられるとでも?」
「いやいや、そうじゃなくて!ボスを一人残す組織なんてないでしょ…それに万が一グレアさんの方にボスが駆けつけたらどうするんです?」
「アンディは護衛など必要としないし、私が本気じゃない事にも気づくはずです。私が彼を知ってるように、彼も私を知っていますので」
「うーん…仮に上手く行ったとして、俺があの人に勝てるとは思えないんですが…」
「勿論、これから私が徹底的にカエデさんを鍛えます。ですがカエデさんが勝つ必要はありません」
「え?それはいったい…」
「あくまでこの作戦のゴールは、カエデさんがミア様の後継者であるとアンディに認めてもらうことなのです」
「ミアの後継者…」
〜
—数分前
「何故、オーフィス騎士団と戦うのがミアを救うことになるんですか!?彼らは人類の味方ですよね?」
「…一から説明すると、複雑かつ長くなってしまうので、簡単にでもよろしいでしょうか?」
「構いません」
「オーフィス騎士団のボスであるアンディは、私とミア様の古い知人でして…特にミア様に対しては、彼も私と同じように忠誠を誓っております」
「ロイヤルのボスがミアにですか!?」
ミアは本当に何者なのだろうか。楓は気になりはしたものの、とりあえず話を遮るのは遠慮し、グレアの話に相槌をうつ。
「ええ。そして彼は…ヴィクトリア打倒の為、ミア様のお力を頼ろうとしているのです」
そこひと言で楓は何かを察した。
先日の血まみれのミアの姿が脳裏に過ったからだ。
〜
「後継者…つまり、ミアの代わりに俺が戦えるとボスに示せばいいんですね?」
「はい。ですが問題なのはカエデさんの能力…もしかすると、それは使えば使うほど命を削るものかも知れません」
(そういえば…前に、ミアにも言われたな)
「カエデさん…それでも覚悟はありますか?」
「そこは大丈夫です。もう決めてるんで」
楓はニッコっと笑って親指をグレアの方へと向けた
「例え命を削ることになろうが…皆俺が救うって!」
「カエデさん…」
—ミア様…私にも理解出来た気がします。
ミア様がカエデさんを特別に想う理由が…
この子はよく似ている。あの頃の—
第四章〜完〜




