表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/100

ep.79 勇者の器


 『戦争か…』


 『ミア様?どうかされましたか?』


 『酷い光景だ。人が人を斬らねばならぬなど…あってはならないだろう』


 『…』


 『…』


 『…ミア様。もう前線に立たたれなくともよいではありませんか。我々にも立場がありますし…』


 『私は人類の守護者だ。ならば先頭に立ち、君達を守るのは当然だろう』


 『しかし—』


 『ファブリソ。ミア様は何処に立とうがミア様よ』


 『グレアお前は少し黙ってろ!』


 『うふふ。まぁまぁ、二人とも落ち着いて。ミア様、もうすぐアンディも来ますから、お茶でも用意いたしましょう』


 『ああ。イリア、ありがとう』


 『はい。アーノルド、ついてきなさい』


 『いや、私は…細かいことは苦手で…』


 『ミア様。ここにお掛けください』


 『ありがとう。グレア』


 『あまり考えすぎてはいけませんよ。大体、世界が平和になってしまったら、ファブリソのような脳筋は酒を飲み歩くだけになってしまいます』


 『グレア!お前にだけは言われたくないぞ!』


 『なんですってー!


※※※※


 ミアは空を見上げた。剣撃の余波により雲は消し飛ばされ、遮るもののない太陽に辺りは照らされている。


 「ミア様!お身体は…」


 「すまないグレア。少し休憩が必要のようだ」


 ミアは駆け寄ったグレアに力無く身体を預けると、両の腕に抱かれながら目を閉じた。


 「ゆっくり休まれてください…すぐに私が」


 駆け寄る直前、グレアは主の悲しげな表情を目撃した。気づいていない訳ではない。普段、態度や言葉には出さずとも、彼女が背負っている業の深さは。




 「うふふ。まさか本当に振るわれるとは」


 刹那、ねっとりと纏わりつくような声が背後から聞こえた。振り向くとそこにいたのは—


 「イリア!?どうして生きて…」


 「ヒハハ!あぶねぇあぶねぇ。俺がいなかったら死んでたぜ?」


 ハーベルの身に着ける衣服はボロボロだが、身体には傷一つなく意気揚々とした様子で肩を回しながら、こちらへ近づいてくる。


 イリアはというと先ほど、ミアの攻撃を受けたとは思えぬほど綺麗な身なりのままだった。


 「ハーベルは私達によって改造された強化人間なの。命も二つあるし、一度死んだら強力なバリアを展開する身体になってるわ。ファブリソとアーノルドは助からなかったみたいだけど」


 「そんな…」


 「グレア、先に帰っていろ」


 ミアはグレアの手をほどこうと抱える腕を押すが、込められた力は弱々しく、立つのもやっとな状態で目も虚ろだ。


 「駄目です!あの二人程度であれば私が殺れます」


 「グレア。私の毒蝶を受けながら散々動き回ったでしょ?今のあなたに何が出来るっていうの?ハーベル。二人にトドメを」


 「ヒハハ!破壊王と世界最強を俺が同時にやれるなんてな!」


 ハーベルは二人に向かい走り出す。その速度は常人のそれを遥かに超え、目視すらままならない異常なもの。


 「魔力は尽きちゃったけど、ハーベルは実験の成功体。肉弾戦だって馬鹿にならないわ」


 グレアはミアを片手で抱え、迎撃する体勢をとるものの、毒の影響か視界は霞み上手く魔法を発動できない。


 「ヒハハ!…あ?」



 「ぐぐぐ、痛ってぇ!」



 しかし、一人の少年が二人とハーベルとの間に滑り込み、振るわれる拳を灰色の物体で受け止めた。



 「…カエデ?」


 ハーベルは突然の乱入者に驚き距離を取った。いくら魔力を使ってないとはいえ、自慢の一撃を止めるほどの相手を警戒しての事だ。



 「アドレナリンで忘れてたけど、あちこち骨にヒビが入ってるんだった。めちゃくちゃ痛ぇよこれ…」


 楓は涙目で左腕を擦る。足元のコンクリートが粉砕されている様子を見るに、ハーベルから振るわれた拳の凄まじさを物語っている。


 「大丈夫か!?ミア!…と…グレアさん」


 グレアの顔を見て楓の脳裏にはあの時のトラウマが過った。しかし、次に視界に捉えたのは血まみれのミア。


 「ミア!!大丈夫か!?」


 「ああ」


 返事をするミアにほっと一息つくと、楓は向き直しハーベルを見据えた。相手は人間だが、状況を見るに誰が二人を傷つけたかは一目瞭然だった。


 「よくわかんねぇけど…お前達が敵だな?」


 「あら?あなたはさっき出会った坊やね。どうしてここにいるのかしら?」



 「…イリア?」


 楓は遠目の場所にいる青髪の女性に既視感を覚える。夢で幾度となく見た仲間だった存在だ。その声も顔も忘れるわけがない。 


 「あら?私のことを知ってるということは、ミア様の関係者かしら?ハーベル。あの子も殺しちゃって構わないわ」


 「ヒハハ。人遣いの荒いこった」


 「カエデさん、逃げてください!あなたには呪言が…」


 グレアは叫ぶ。恨んでいるとはいえ、主の友人であり、彼は本来一般人なのだ。この因縁の戦いに巻き込むわけにはいかない。だが—


 「嫌です」


 楓は即答する。その横顔は何処か晴れ晴れしく、これまでの苦悩が嘘のように澄んだ瞳をしている。


 「どうして…」


 「俺は決めてるんです。自分の手の届く範囲の人達の役には立ちたい。どんな小さな事でもって」


 ハーベルは追撃を開始する。脚に力を込めると音を置き去りに前進し、楓の顔面目掛けて拳を振り上げた。


 「だめ!」



—困ってる人は放っておけないんだ



 「親友なら尚更だろ!」


 刹那、楓の右手の甲から赤い光が溢れ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ